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8話 これが神か

 体の中まで、グリールの足による振動は響いてくる。

 体が恐怖で包まれて、足が怖気付く。

 ヤツはまだ威嚇しているつもりはないだろう。

 それでも、ただヤツと目が合うだけで体が震えてしまう。


 「おい。もしかしてビビってんのか?」

 「まぁ……ちょっと……」

 「はん! これだから人間は」


 こんな俺だから、ハーシュに助けられてばかりだったのだ。

 弱い自分が憎い。

 何度思ったことか。

 勇者に選ばれ、他の冒険者達より強かったとしても、こういう時に動くことが出来ない。

 問題なのは技量ではない。

 心だ。

 俺は決意が足りない。

 敵を倒すという、決意が。


 「俺はいくぜぇ!!!」

 「え、ちょ――」

 「おらぁぁぁぁぁぁ!!!」

 「ギャラララァァァァァァァァァァ!!!」


 ジューザラスはグリールに迷うことなく突撃していき、雄叫びを上げた。

 それにようやく反応して、グリールも鼓膜が破けそうな程の咆哮を放った。

 

 ジューザラスは川を難なく飛び越え、巨体に走っていく。

 それを確認したグリールは、鋭い爪を持った右前足を上げて横に切り裂くような形で腕を振った。

 通常の人間なら、あれを受け止めることはまず出来ない。

 あの腕を攻撃して破壊しようとしても無駄だ。

 ただ出来るのは、避けることだけ。

 だが、それは人間ならだ。


 神は違う。


 「ギャララッ……!」

 「この太い腕……! いい晩飯になりそうじゃねぇか!」


 あの太く凶暴な腕を、ジューザラスは何の問題もないように片手で受け止めた。

 

 ありえない……!

 いや……あり得ないことをするのが、神なのか。


 空いている右手に青炎で出来た剣を創り上げると、グリールの右前足の付け根を狙って思い切り振った。

 その剣は、一切グリールには触れていない。

 それなのに……。


 「ギャララァァァ……!!!」


 あの太く、筋肉の塊で出来た腕は難なく切り落とされた。

 グリールは絶叫に近い咆哮を上げながら、一旦後ろに下がろうと一歩だけ後ろに下がった。

 だが、ジューザラスはそれを許さない。


 「逃げようとしてんじゃねぇぞ! 筋肉だるま!」


 ジューザラスは次は縦に剣を振り上げた。

 すると、大量の血が辺りを赤く染め上げて、グリールの左前足は切り落とされた。


 両前足を切り落とされては、もう何もすることが出来ない。

 グリールはバランスを崩して前に倒れ込むと、必死に起き上がろうともがくが、それを阻止される。


 ジューザラスはグリールの背中に飛び乗り、首の部分に移動した。

 どうにかして振り落とそうとするが、バランスがうまく取れないせいで振り落とすことが出来ない。


 「お前は俺に負けたんだ。これが、神の裁きだ」


 ジューザラスの青炎の剣がグリールの首を通り、命を狩りとった。

 俺はこの時、ジューザラスが何故神なのかを不思議と納得してしまった。


 大勢の人間を殺した魔物をいとも簡単に殺し、炎を操りながらその背中に乗る姿は、神以外の何者でもなかった。

 



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