表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/54

49話 限界のその先に

 「少しお前は黙るといい」


 フネアスは黒い靄を出す紐のようなものを作った。

 それがフネアスの手から離れると、大蛇に如くのように動き始めた。

 

 「あれに縛られたら暫く動けなさそうだね。だからフネアス、君に返すよ」


 反射の力を使い、シーミナは大蛇を跳ね返した。

 予想外の出来事に、フネアスは反応する事が出来ず体を拘束された。


 「どうしてだ……! 全く動かない……!」

 「どれだけ力を入れても無理だよ。その蛇みたいなやつには、僕の反射の力が纏わりついているからね。力の効果が切れるまで逃げることが出来ないよ」


 運良くフネアスから一時的にでも自由を奪えた。

 でも相手が相手なだけに、僕の力は通常よりも早く切れてしまうはず。

 このままフネアスを元に戻す方法を探したいけど、他にやらなくてはいけない事もある。

 悩むけど……今は別の事を優先するべきだね。


 「リリルは気絶してる五人を、安全な場所に避難させてあげて」

 「分かった。ていうかシーミナさ、そんなに上手く力を――」

 「じゃあお願いね!」


 あ、行っちゃった。

 どうやって力の制御が出来るようにしたのか、聞こうと思ったのになぁ。



◇◆◇



 「どけクソ雑魚悪魔共! 皆殺しにしてやるよっ!」

 「ちょっとジューザラス! そんなに無理したら駄目だよ!」

 「うるせぇ! 俺は今むかついてんだよ! それに力も回復してきやがったから問題ねぇ!」

 

 ジューザラスはこう言っているが、実際はそれ程力は回復していない。

 ヘルラレンに至っては、普段の一割程しか回復していない。


 ジューザラスと同様、ヘルラレンも力を大量に消耗している。


 まったく……。

 私はついて行くだけでしんどいのに……どうしてジューザラスはこんなに元気なの……?

 意味がわからないよ……ん?

 

 ヘルラレンは呆れながらジューザラスを見ると、遠くの方から誰かが向かってきているのが見えた。

 だが明らかに雰囲気が悪魔ではない。

 どちらかといえば神に近い――。


 「ライ?」

 「あ? なんだ?」


 呼ばれるはずのない名が聞こえ、暴れていたジューザラスも動きを止める。

 二人は同じ場所を見つめ、目を見開く。


 「あいつ本当にライか?」

 「多分間違いないよ」


 距離は次第に縮まっていき、そして顔を捉えることのできる距離になった。


 「やあ、久しぶり」

 「やっぱりライじゃん」

 「てめぇ馬鹿かよ。久しぶりとか意味わからないこと言ってんのに、どうしてそこをスルーすんだよ」


 少し着眼点がおかしいヘルラレンに呆れながら、ジューザラスはシーミナとなったライに詰め寄った。

 だがそのことを知らない二人にとって、今のライは様子のおかしくなっているようにしか見えていない。


 「なんでライがここにいんだよ」

 「僕はライじゃなくて、今はシーミナだよ」

 「はぁ? 本当にどうしちまったんだよ。頭でもやられたか?」

 「まあ、確かにライは死にかけてたけど、問題ないよ」

 「変なこと急に言い出しやがって――」

 「待ってジューザラス。今のライは、本当にシーミナだよ」

 「そんな訳ねぇだろ」

 「こんなこと急に言われても混乱するよね」


 シーミナはジューザラスの肩に軽く手を乗せて、簡単に経緯を説明した。

 最初は幻覚でも見たと疑っていたジューザラスだったが、話を聞き終わる頃には納得していた。


 「それで二人に頼みがあるんだけど」

 「なんだ」

 「下級悪魔を殲滅して欲しいんだ」

 「え? それ本気で言ってる?」


 ヘルラレンは、信じられないことを聞いたかのような表情を見せた。


 下級悪魔はまだキリがない程残っている。

 勇者達は逃げ出し、さらに騎士や冒険者が苦戦していることで、悪魔側の戦力を削ることが出来ていない。

 それにも関わらず、シーミナは力を消耗しているジューザラス達に残りの悪魔の殲滅を頼んだのだ。

 ヘルラレンがあんな反応をするのも無理はない。


 「仕方ねぇな。俺達がその頼みを受けてやるよ」

 「え!? ……仕方ないかぁ。ジューザラスもやる気だし」

 「シーミナは早く戻ってフネアスを救ってやれ。今度はお前が救う番だ」

 「うん。ありがとう。じゃあ行くね」


 シーミナは二人に背を向けて走り出したが、足を止めて振り返った。 

 

 「それと……」

 「なんだ? まだなんかあんのか」

 「二人とも、今までありがとね」


 そう笑顔で言い残すと、また別の方向に向かって走っていった。

 

 「こんな時間が経って礼を言われんの、俺達ぐらいじゃねぇか?」

 「だろうね。何十年、何百年経っても感謝を伝えたり伝えられたりするのは、神の特権だね」

 

 二人は顔に笑みを浮かべると、周りで騎士達と交戦する悪魔達に目をやった。

  

 「じゃ、やるか。水の力で俺を浮かばせてくれ」

 「何やるの?」

 「残り少ない力で、このクソどもを殺すんだよ」

 「へぇ、面白そう」


 ヘルラレンは地面に手を当てると、残り少ない力を使用した。

 地面から水が溢れ始め、ジューザラスの足に纏わりついていくと、蔓のように伸びて空高く運んだ。


 「次は俺の出番だぜ」


 ジューザラスは胸の前で火球を作り出すと、それを右手で掴み空に向けて突き上げた。

 その火球は暗い空を照らし、大きさは勢いを強めながら大きくなっていく。

 

 「まだまだぁ!」


 火球はジューザラスと同じ程の大きさになっても、一向に止まる気配はない。

 それどころか、巨大化する速度を上げていっている。

 

 「おい! 悪魔ども!」

 

 どこまでも響き渡るような声で声を発すると、呼びかけに反応するかのように周囲にいた悪魔達はジューザラスに目を向けた。

 

 「今からこれをくれてやるよっ!」

 「ちょっと! そんなにぶつけたら人間も死んじゃうよ!?」

 「んなことわかってるに決まってんだろ。だからそうならねぇように、悪魔しか燃えねえ火球を作ったんだろうが」

 

 ジューザラスは神らしくない笑顔を浮かべる。

 その顔はまるで悪魔のような顔だ――。

 

 「死にやがれ。雑魚ども」


 地面に投げつけられる火球は、炎を撒き散らしながら落下していき、地面にぶつかると同時に辺り一面を赤く染め上げた。



◇◆◇



 「くぅ……!」

 「なんだ。これでもう終わりか」

 

 レレファスに首を掴まれて持ち上げられているルーレルは、血に染まる顔に苦痛の表情を浮かべた。


 「最初は中々戦いがある奴だと思っていたのだが……所詮はこんなものか。ふんっ!」

 「がぁ……!」


 地面に叩きつけられ、全身に悲鳴を上げる。

 私は……勝てない……。

 これが私の限界……。

 限界なのに勝てないなら……無理だ……。

 

 もう私に力は残っていない……。

 限界……限界……。


 限界……?

 どうして私は……悪魔に負けるのを認めている……?

 限界だからって言い訳にして……負けてもいいと思っている……?


 「そんなの……だめ……」

 「何の話だ」

  

 限界を迎えた。

 それでも勝てない。

 だから無理、ではない。


 限界を迎えた。

 それでも勝てない。

 ()()()()()()()()()()()()()


 「ついに狂ったか。まあ良い。どうせ殺すのだからな」


 レレファスは地面に倒れるルーレルの肩を掴み、持ち上げようとした。


 「……な」

 「なんだ?」

 「……触るな……」

 「貴様……何を――」

 「私に……触るな……!」


 ルーレルから出たとは思えない声で怒鳴りつけると、肩を掴む腕に噛み付いた。


 「っ!? 何をする!」


 腕に噛み付くという神とは思えぬ行動に、レレファスは反射的に投げ飛ばした。

 勢いよく投げ飛ばされたルーレルは、地面を無様に転がっていく――事はなかった。


 「貴様ぁ……!」


 力が残っていないにも関わらず、限界に達しているのにも関わらず、それでも受け身をとり()()()()()()


 「まだ力が残っていたのか。何のために隠したのだ」

 「別に隠してない……。ただ……」

 

 下を向いていた顔が上がり、黒と赤に光る瞳にレレファスは睨みつけられる。

 

 それはさっきから何度も見た瞳。

 それなのにも関わらず、レレファスは体中に寒気を怯え、震えた。

 

 「限界を……超えただけ……」


 

 


 


 

 


 

 

 


 

 


 

 

 

 


 


 

 


 

 



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ