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19話 神の手は震えている

 「やっぱりまだダメ……。これじゃあ――」

 「そう決めつけるのは早いんじゃないか?」

 

 俺の言葉の意味が分からないらしく、一瞬首を傾げたが結局剣を振ろうとするのをやめようとしなかった。

 多分何かの時間稼ぎだと思ったんだろうな。

 だが違うぞ。

 

 「……!」


 俺に剣を振り下ろそうとした直後、背後から迫る()()を感じ取ったのか後ろを振り返った。

 破壊の魔法(ゾレスーラ)は魔法の中では攻撃力の高い方に入る。

 そのため、神だって少しくらいダメージを与えることができるはずだ。

 そのことくらい、ルーレルだって理解しているはず。

 しかし、それでも全く慌てる様子はなく対処しようとしている。

 目の前にいる俺を脅威だとは思っていないらしい。

 だが……俺はそれを狙っていた。


 俺は体勢を戻した後、飛びつくようにしてルーレルに接近した。

 ルーレルは突然の俺の動きに少し驚きながらも、冷静に状況を判断して行動する。


 「……そう動くよな」


 俺と目が合った瞬間、目の前から風も起こさず消えた。

 そのせいで、俺が自分で引き戻した破壊の魔法(ゾレスーラ)が迫って来ていた。

 恐らく、ルーレルはこうなることを狙ったはずだ。

 すぐに反応することの出来ない俺を、自滅させてしまおうと。


 だけど、そんなこと流石にしねぇよ!

 

 俺の顔に自然と笑顔が浮かび上がった。

 

 一直線で動く魔法は俺を避けるように曲がっていき、そして背後で爆発した。

 

 感じ取れ……小さな気配を……右か!


 俺は体の向きを右に向けて剣を振る。

 ルーレルの姿を確認したわけでもないし、何か魔法で探知したわけでもない。

 こんなの言ってしまえば賭けのようだものだ。

 気配を感じ取って、その場所に剣を振り下ろす。

 選択を間違えてしまえば、背後を取られて負けてしまう。

 だけど……。


 「どうして……」


 俺が振り下ろした剣は、ルーレルの光の剣に当たっていた。

 

 「作戦通りだな」


 あとは力押しするしかない。

 今のルーレルには心に余裕が無いはずだ。

 普通は見つけられるはずがないのに、見つけられてしまった。

 何か魔法かスキルを使っているのかと、深く考えてしまうはずだ。

 だが、もちろんそんなものはない。

 

 俺は次々に隙ができている場所に剣を振っていき、ルーレルを押していく。

 今のルーレルには俺を押し返したり力を使ったりする余裕もないらしく、少し苦しい顔をしている。

 このままいければ……!


 「勝てると思ったら……負ける……」

 「まじかよ……」


 今の剣の打ち合いは、どう考えても俺の方が優勢だった。

 それなのに――

 

 「私の勝ち……」


 俺の首には剣が当てられていた。


 何が起こったのかわからなかったが、どうやら俺は隙をつくってしまっていたらしい。

 その隙をルーレルは見逃すことなく、一瞬で体勢を立て直して俺の首に剣を当てたのだ。

 

 「勝てると思ったら攻撃が雑になる……。だから……勝てるって思っちゃダメ……」

 「はい……」


 自分で作った優勢の状況を、一瞬で劣勢にしてしまった。

 どうやら俺に足りないものは沢山あるらしい。






 ルーレルは剣を消滅させて、自分の手を見た。

 戦いで出来た傷はすぐに再生してしまい、傷のないいつもの手に戻っていた。

 だが、一つだけ違うことがある。

 ライも気付かず、ルーレルも自分で確認するまで気付いていなかった。


 「震えてる……」


 いつもと変わらない手が、まるで何かに怯えるように震えていたのだ。

 

 なんで震えてる……?

 こんなこと……なったことない……。

 

 ルーレル自身震えている理由が分からなかった。

 

 両手の震えを抑えるように手を握るが、それでも震えは治らない。

 

 「どうかしたか? もしかして怪我?」


 ライは心配そうに近づいて来る。

 

 「怪我はしてない……。だけど……震えが――」

 

 ルーレルは自分の手から視線をライに移した直後、手の震えはさらに大きくなった。


 「絶対大丈夫じゃないだろ」


 何か異常がないか、ライはルーレルの手を触ろうとするが、それを両手は拒絶する。


 ライの手を嫌いとか、汚いと思っているわけでもない。

 だけど何故か、恐怖を感じてしまった。

 

 

 

 

 


 


 


 


 

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