108話 魔王城へ
翌朝。
先に起きたのはルリだった。
あの時の見張りは結局、リヒトの方が長かったからだ。
「リヒト~。朝だよ~。」
と揺すってみるが、今日は起きない。
‥‥‥珍しい。
‥‥見れば見る程綺麗な顔だよね‥‥本当に何で私なんだろ?
と思いつつもう一度揺すってみると、
「‥‥ん‥‥」
お。起きそう?
「リヒト~。」
「‥‥ん‥‥?」
‥‥ご希望に添ってみようか。
ということでリヒトにキスしてみると、
「!!!」
「‥‥ふふっ。起きた?」
「‥‥あ、ああ。」
驚いた様に目を開けたリヒトはそう返すと、すぐに体を起こしルリを見て、
「もしかして‥‥」
「うん。リヒトのご希望に添ってみました。」
「!!!‥‥嬉しすぎる‥‥これからも、ルリが先に起きた時はこれで!」
「え!?えっと‥‥毎回?」
「毎回!!」
「‥‥‥」
リヒトの希望に添ったのを後悔したルリだった。
毎回は恥ずかしすぎる‥‥と。
すると、黙ってしまったルリを見て
「駄目か‥‥?」
「えっと‥‥毎回は恥ずかしいから‥‥気が向いたらってことで‥‥」
「ああ!それでもいいぞ。」
‥‥‥負けた‥‥
でも、あんな嬉しそうな顔を見たら断り辛いよ‥‥
と思っているルリに気付いているのかいないのか‥‥
話は変わり、
「さて、今日は優人がいる筈の魔王城を目指すか?」
「うん。」
そして二人は着替えて部屋から出ると、控えていたのかメイドさんがいた。
メイドさんに案内されるがままについて行き、朝食までいただいたあと、リト君にも私の地毛を見せてみた。
「ルリお姉ちゃん、そっちの方が可愛い!」
「そう?ありがとう、リト君。」
そして再びカツラを被ったところで、
「それで、お二人はこれからどうされるのですか?」
「優人さん‥‥魔王陛下にお会いしに行こうかと。」
「そうですか。もう行ってしまわれるんですね‥‥」
と話していると、食堂の入口の扉がノックされた。
領主であるルーカスさんの許可を得て入ってきたのは部屋に案内してくれたメイドさんだった。
「ご歓談中に申し訳ございません。」
「どうした?」
「魔王陛下とご一行様がいらしております。」
「「「「え!?」」」」
「優人‥‥すごいな‥‥」
「うん‥‥入れ違いにならなくて良かったね‥‥」
「では、お招きしても?」
「「勿論です。」」
という訳でリト君を含めた私達五人は玄関口へと向かった。すると。
「リヒトさんとルリ!?」
「ふふっ。お久しぶりです、優人さん。皆さんも。」
「久しぶりだな。優人。皆さんも。」
「あ、ああ‥‥何で二人がここに‥‥?」
「陛下、それは後程城に来て頂いてから伺いましょう。よろしいでしょうか?」
「はい。そのつもりでしたから構いませんよ。ガリアさん。」
「そのつもりだった?」
「ああ。優人に会いに行くかって話してたんだよ。」
「そうなのか!あ、でも‥‥」
「街の人達が教えてくれましたが、復興のお手伝いしてるんですよね?」
「ああ。まあな。」
「なんなら俺達もできることがあるなら手伝おうか?」
『なりません!!!』
ガリアさん、優人さんの護衛のハウレスさん、バラクさん、ファクスさん、領主夫妻のルーカスさんとイルゼさんの声が見事に被った。
「「‥‥‥。」」
「‥‥もしかして、ガリアさん達も私達の立場を知ってたり‥‥?」
「します‥‥。」
「そうですか‥‥でも今の私達は旅人ですよ。ね?リヒト。」
「ああ。」
『駄目なものは駄目です!!!』
「‥‥‥イリス並に反対された‥‥」
「だな‥‥気にしなくていいのに‥‥。」
『お二人共‥‥?』
「はぁ‥‥分かりました。大人しくしてます。」
と答えると、一様にホッとしていた。
そして全員で応接室に移動すると、早速ガリアさんとルーカスさんが話し始めた。
私達はというと、勝手にその話を聞いていた。
話の中身は街の復興状況の確認なので問題ないと言われていたからだ。
それが終わると。
「さて、では城に戻りましょうか。」
「「え?」」
「ああ、元々ガリアが一人で確認のためだけに来る予定だったのに俺が無理矢理ついてきただけだ。」
「そうなのか?」
「ああ。街の様子を見ておきたくてな。大分復興できてるだろ?」
「はい。そうですね。」
「もう後は街の人達でできるから俺達の手伝いはいいって言われてるんだよ。」
「へ~!そうなのか!」
「だから帰っても問題なしだ。だから、二人も一緒に来てくれるか?」
「「勿論。」」
という訳で領主夫妻とリト君に別れを告げて、優人さん達が乗ってきた馬車に便乗させてもらった。
馬車の中では。
「‥‥‥ルリ。可愛くなったよな。」
「へ!?そ、そうですか?」
「ああ。おまけにその指輪‥‥‥リヒトさんか。」
「「!!!」」
「正解みたいだな。あとで色々話聞かせてくれるんだろ?」
「ああ。優人に話したいこともあるしな。」
そして、途中お昼休憩を挟んで夕方頃。
魔王城に到着した私達の前に。
「あ!リリスさん。お久しぶりです!」
「ルリ様!?リヒト様まで‥‥お久しぶりです‥‥。」
「さて、ルリ様、リヒト様。こちらへどうぞ。」
と驚くリリスさんを放置したガリアさんの案内で前回私達が泊まった部屋に案内された。
部屋に集まったのは優人さん、護衛の三人、ガリアさん、私とリヒトの七人だ。
そして全員が座ったところで。
「えっと‥‥ガリアさんが私達の立場をご存知ということは皆さんも?」
「ああ。ルリは多分って感じだが、二人が旅立ったあと俺も聞いた。」
「なら改めて自己紹介するか、ルリ。」
「そうだね。‥‥改めまして、魔王陛下。並びに宰相閣下、護衛の皆様。前回は家名を名乗らず、失礼しました。私はここより南にあるエヴァンジル大陸の三国の一つ、セピオライト王国第二王女のルリ・セピオライトと申します。」
「同じくラズライト王国王太子のリヒト・ラズライトと申します。」
「!!!‥‥‥正解だったな。ガリア。」
「ええ。ルリ姫。確認ですが、もしやエヴァンジル大陸に現れた巫女というのは‥‥」
「はい。私のことです。」
「「「「「!!!」」」」」
「あと、もう一つ。陛下、この髪はカツラなので取ってもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ。」
そして、私がカツラを取ると。
「!!!‥‥ルリ、そっちの方が可愛いぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「‥‥優人。ルリはあげないからな。」
「分かってるよ、リヒトさん。って王太子と王女にこの話し方はまずいか?」
「いや。俺も魔王である優人を呼び捨てにしてるから構わないよ。」
「良かった‥‥‥あ、ルリ。」
「なんでしょう?」
「さっき、リヒトさんを呼び捨てにしてたよな?」
「は、はい。」
「(ニヤリ)だったら俺も呼び捨てにできるよな?」
「え!?えっと‥‥い、いいのかな?リヒト。」
「いいんじゃないか?」
「えっと‥‥じゃ、じゃあ‥‥優人。」
「おう。じゃあ、次はタメ口な。」
「え!?えっと‥‥は、話したいことなんだけど、私達日本に帰ってきたの。」
『え!?』
魔族側の方々全員びっくり。
「ふふふ‥‥俺も見たぞ?優人のニュース。」
「え!?まだやってたのか!?」
「ああ。「三年経った今も家族にも何の情報も入ってきてません」ってな。」
「ああ‥‥そういえばもう三年経ったのか‥‥」
「そうだよ。‥‥で、日本に帰った理由なんだけど、魔岩を消すためだったの。」
「消す?そんなことできたのか?」
「うん。二年前、ここに来たあと旅を続けてちゃんと両親に会ったよ。その後、あの時ライムントの街で私が使った力のことも全部聞いた。あの時の力で私は魔岩を消してきた。」
「そうなのか!?‥‥すげぇな‥‥ルリ。」
「結局、魔岩というのは何だったのですか?」
「魔素の塊です。」
「「「「「え!?」」」」」
「魔素って‥‥動物を魔物に変える元凶だよな?」
「うん。そう。その魔素が増えると魔素溜まりとか塊ができるみたい。だから二年前のライムントの街を襲ったのは魔素溜まりによって大量発生した魔物が来たんだと思う。」
「「「「「‥‥‥。」」」」」
「なるほどな‥‥で、ルリにはその魔素を消す力があると。」
「うん。」
「‥‥‥ルリ姫。情報提供に感謝します。」
「いえ。‥‥あ、ガリアさんに頂いた剣。あの後、おかげさまで色々助かってます。」
「そうでしたか。お役に立てていたなら良かったですよ。」
「じゃあルリもあの後、剣術の訓練したのか?」
「うん。旅の間はリヒトに教わって、帰ってからはちょっとやらない期間があったけど、騎士達に頼んで訓練に参加させてもらってるよ。」
「おお~!じゃあ、明日見せてくれよ!」
「うん。いいよね?リヒト。」
「ああ。俺も誰か相手してもらっていいか?」
「勿論ですよ。私が再びお相手致します。」
「バラク殿か。楽しみだ。」
まだまだ話は続く。




