9.原因
レフィは自分が着ていた上着を女性に掛けると、そのまま目を覚ますのを待っていた。
「大丈夫ですか? 怪我の方は治療させていただきましたが――」
女性に対して心配な視線を送るレフィ。
女性は少し呆けていたものの、意識がはっきりするにつれて、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「あっ、は、はい。もう大丈夫です……けど――」
「どうして、ここで火事が起こったのですか?」
「それは、と、突然ドラゴンが襲ってきて……」
「肉か!?」
リルが目を輝かせて食いついてくる。
(ドラゴンのお肉、美味しいもんね……。でも、リル。ダイエット中のことを忘れてるのかな?)
「リルはちょっと黙っていてね。それに今はダイエット中だよね?」
「う、うむ。ただ、肉なら大丈夫だろう? 肉はカロリーがゼロだろ?」
とんでもない理論を展開してくる。
お肉がカロリーゼロならどんな食材もゼロになってしまうよ……とレフィは苦笑を浮かべる。
「そんなことないよ! むしろ今のリルには脂がのったドラゴンの肉なんて絶対にダメだからね! お魚で我慢して!」
「くっ……、ドラゴンを目の前にしてお預けを食らうなんて――」
「そ、その……、さっきから話を聞いていたらまるでドラゴンを食べようとしているように聞こえるのですけど――」
女性が驚きを隠しきれない様子で尋ねてくる。
確かにドラゴンを食べたことがない人はあのお肉が絶品って知らないわけだもんね。
「えっと、ドラゴンのお肉は美味しいですからね……」
「あ、危ないですよ! そんなことをしたら」
不安そうにレフィの体を掴んでくる女性。
あっ、そっちだったのか。とレフィは少し反省をする。
確かに爆薬で一撃……とはいえ、普通はドラゴンはかなり危険な部類の魔物だ。
だからこそレフィは女性を安心させるように優しい言葉を掛ける。
「大丈夫ですよ。多少危険でもリルがどうにかしてくれますから」
「うむ、私に任せておけ。レフィのポーションさえあればドラゴンなんて、食用肉も同然だ」
リルがレフィの言葉を聞いて同意してくる。
ただ、念のためにリルも注意しておく。
「あっ、だからって、隠れて食べようとしたらダメだからね」
「わ、分かっている。堂々と食えば良いのだろう?」
「そういうことじゃないよ!?」
胸を張って答えるリルに思わず突っ込みを入れてしまう。
すると、女性がようやく笑ってくれる。
「ふふっ……」
「やっと笑ってくれましたね」
「えぇ、なんだかお二人を見ていると微笑ましくて……」
「まぁ、私とレフィはもう長い付き合いだからな」
「うん、そうだね。なんだかんだリルとはもうずっと一緒だもんね」
「羨ましいですね。私にはそんなに親しい人はいませんでしたので」
女性が遠い目を見せてくる。
詳しく聞いた方が良いのだろうか? とも思ったが、あまり込み入ったことは聞くべきではないかと判断して、それ以上レフィは何も聞かなかった。
「あっ、そうだ。それよりも今はドラゴンでしたよね? どこにいるか分かりますか?」「す、すみません。私もドラゴンの居場所までは……」
「そうですよね……。いきなり襲ってきたのですもんね……」
「あっ、でも、飛んでいった方角は分かりますよ。向こうの山の方にです」
女性が少し遠くの山を指さしながら答えてくる。
「……リル、いける?」
「うむ、それが分かるならひとっ走りいくか」
「うん、それじゃあ、僕達は少し出かけてきますね」
「あっ、はい。気をつけてください――」
女性に見送られながら、レフィ達は急いで山の方へと向かって駆けていった。




