第12話 呪いは伝播する
ダンジョンには、さまざまな罠が存在する。
落とし穴。
毒矢。
呪いの宝箱。
そして、介護施設には、それらをはるかに超える恐ろしい罠が存在する。
そう……。
一度踏んだら、最後。
処理しても処理しても、なぜか増えていく。
今回は、そんな呪いのお話である。
俺はダンジョン内を探索していた。
小さなスペースから、何やら声が聞こえる。
「ぼっしゃ……ぼっしゃ……ぶはっ!」
……ん?
俺はスペースを覗き込んだ。
確か、ここは妖怪・尻目の生息地のはず……。
この尻目は目が見えず、またが濡れると「ぼっしゃ、ぼっしゃ」と叫ぶ習性がある。
まるで、尻に目がついていて、またが濡れたことが分かるかのように……。
覗き込んだ先……。
そこには雪国……ではなく、毒沼地帯が広がっていた。
ヨシめ……トラップを作成しやがったな……。
そう思いつつも、俺は声のする方へ目をやった。
時間は20時。
蛍石は効果を失い、空間は真っ暗闇に包まれていた。
俺はポケットの中のランランに魔力を込める。
……あれ?
壊れているのかな?
充電魔力が切れたか……。
仕方なく、蛍石の装置に魔力を流す。
パッ。
明かりが空間を照らした。
そこには……。
下半身裸のヨシが、尻目の顔に座っていた。
「あー……たしかに、ぼっしゃ……濡れてるねー……」
……じゃない!
このままでは、尻目が死ぬ!
俺はすぐさまヨシを引き離そうとした。
その瞬間――
「なんだと……! これ、枕じゃなくて……錬金したのか……!?」
足元にあったのは、枕大の黒い物体。
異臭を放つ、大腸の恵みだった。
「等価交換はどうなった……!」
俺は大腸の恵みに足を取られた。
だが、何とか体勢を立て直す。
エリクサーを顔中に浴び、異臭を放つ尻目を、急いで車いすに乗せた。
そのとき、俺は見てしまった……。
ヨシの手には……。
チョコレートソフトクリームを入れた靴が、握られていた。
やばい……。
このままでは、何をしていいのかわからなくなる。
俺は肉体強化魔法を発動した。
介護の肉体強化……。
それは、ただの自己犠牲。
ただの火事場のバカ力だった。
体重50キロの尻目を片手に抱え、もう片方の手には……ヨシを。
「ああ……穢れちまったな、おれ……」
もう、お嫁にいけない。
毒沼までは、約50メートル。
肉体強化魔法が切れる前に、二人を運ばなければ……。
「おれ、こんな時間に何やってるんだろう……」
そう思いながら、俺は二人に浄化魔法をかけた。
モブ男はシャワーを唱えた。
「ウォッシュ!」(洗う)
「ドライ!」(拭く)
「ウインド!」(ドライヤー)
すべての工程が終わり……俺は時計を見た。
20:30。
クエスト終了までは、あと1時間半。
……ギリギリ終わる。
緊急クエストが終わったことに安堵し、俺は二人の手を引きながら戻っていった。
……そして、俺は見た。
家政婦は見た……ではない。
俺は見たのだ。
落ち武者が、ソフトクリームを……。
キヨジンが……。
大腸の恵みトラップに引っかかっているだと……!?
「なん……だと……」
俺の緊急クエストは終わった。
お嫁にいけない体になってまで起こした行動……。
それは、間違いだったのだ。
先にこっちを片づけなければならなかったのか……。
こうして俺は、午前様までのクエストが確定した。
俺は確信した……。
呪い(うんこ)は伝播する……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、呪いの伝播についてのお話でした。
ひとつのトラップを処理している間に、別のトラップが発動する。
そして、ようやく終わったと思った頃には、被害が拡大している。
……これ、呪いというより業務量の増殖では?
なお、今回のモブ男は肉体強化魔法を使用しました。
ただし、その正体は火事場のバカ力と自己犠牲です。
MPを消費して発動する便利な魔法ですが、使いすぎると本人が壊れます。
回復魔法を覚える前に、まずは休暇を覚えたいものですね。
それでは、また次のクエストでお会いしましょう!
……ちなみに、呪いはまだ解けていません。




