プロローグ:痛みの共鳴《レゾナンス》
【 閲覧注意 】 ⚠️
「本作品には残酷な描写、暴力、および倫理に反する関係が含まれます。苦手な方はご注意ください。」
マルチPOV:イントRO・モンタージュ
【影山 蓮 - 政治家】
天井のLEDライトが眩しすぎる。白く、無機質で、目を刺すような白濁した光だ。最後に覚えているのは、車内に漂っていた高級ウィスキーの香り。その後、すべてが闇に落ちた。
今、俺が目を覚ましたのは、未来を感じさせるほど不自然に清潔で、それでいて隠しきれない死の臭いが漂う部屋だった。手首には金属製のブレスレットが固く嵌め込まれ、冷たい青い光を点滅させている。
【犬神 朱里 - インフルエンサー】
スマホはどこ? なんで肌がこんなにカサつくの?
壁の大きな鏡を覗き込む。でも、そこに映っていたのは私だけじゃなかった。他に七人もいる。そして、その中の一人を見て……心臓が凍りついた。
あの男。兄の、江戸。私が知る限り、この世で最も冷酷な人間。彼がここにいる。これはただの誘拐じゃない。ここは、医学的な地獄だ。
【犬神 江戸 - 医師】
この空気の質感には見覚えがある。高性能HEPAフィルタを通した濾過空気。通常、非公開の執刀室にしか存在しないものだ。
憎悪の籠もった視線を向けてくる朱里は無視する。私の目は部屋の隅にあるモニターに釘付けになっていた。
『ニューラル・リンク・インターフェース』。誰かが我々《われわれ》の体性感覚野にチップを埋め込んだらしい。
「誰も動くな」
私の声が、感情を排した平坦なトーンで響く。
「このセンサーが過度のアドレナリン上昇を検知すれば、我々《われわれ》の神経に良からぬことが起きると推測される」
【伊邪那美 詩織 - 大学生】
私は部屋の隅で震えながら膝を抱えた。顔は蒼白で、涙が溢れ出す。
腐敗した政治家、狡猾な弁護士、残虐な元警官……。この捕食者たちの中で、私は最も弱々しい獲物に見えるはず。彼らは憐れみと蔑みの混ざった視線を向けてくる。
いいわ。もっと私を可哀想だと思えばいい。
激しく脈打つ心臓の裏で、私がカウントダウンを始めていることなんて、誰も知らない。
【音声システム - AI合成音】
『ようこそ、患者の皆さん。西暦二〇二六年、外の世界は富士の雪の下で凍てついています。ですが、ここでは温かさを感じられるでしょう――あなた方自身の「痛み」によって』
唐突に、影山が手首のブレスレットを無理やり外そうともがいた。彼は唸り声を上げ、爪が皮膚を掻き毟り、血が滲む。
「あ、がぁっ!!」
悲鳴を上げたのは影山だけではなかった。同時に、他の七人も床に崩れ落ちた。
私もそれを感じている。自分の手首を鈍くらな刃物で抉られるような感覚。だが、その痛みは本来の二倍は鋭い。
神経が絶叫している。これこそが『ミラーペイン――鏡面痛』。
『地上にいた頃、あなた方は犠牲者への共感を持たなかった』
のたうち回る我々《われわれ》に、声は続ける。
『ゆえに、ここで「共感」を神経に直接縫い付けましょう。それでは、第一の外科的処置を始めます。……今日、最も生きる価値のないのは、誰ですか?』
私は俯き、髪の隙間から微かな微笑を隠した。
ゲームは、始まった。
共感の実験:鏡の痛みに囚われた八人の罪人」を読み始めていただき、誠にありがとうございます。
本作は、人間のエゴと痛みの連鎖をテーマにした、非常にダークで救いのない物語を目指しています。
富士の麓、閉ざされた地下施設で繰り広げられる狂気のゲーム。彼らがどのような結末を迎えるのか、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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