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第41章:凍てついた峠の巨神

 フロストヘイヴンへの道は、道などではなかった。

 それは試練そのものだった。


 翌朝の早朝、俺たちはエルデンリーチを出発した。馬車の車輪が新雪を軋ませ、二頭の雪竜が北へと俺たちを引いていく。一マイル進むごとに空気は鋭さを増し、強化された耐性さえも突き刺すようだった。森は徐々にまばらになり、風が吹き荒れる広大な平原へと変わった。そこには鋭い岩と凍った川が点在し、地平線には古代の守護者のように山々がそびえ立ち、峰は永遠の雲と雪に包まれていた。


 ミラは御者席で俺の隣に座り、町で買ってやった新しい冬服に身を包んでいた。白い毛皮の縁取りがついた厚手のフード付きコート、保温性の高いズボン、頑丈なブーツ、そして小さな手をさらに小さく見せるミトン。まるで小さな雪狐のように可愛らしいが、黄金色の瞳には強い決意が宿っていた。彼女は馬車の中にいるのを嫌がり、俺の隣に座ると言い張り、風が唸るたびに俺のジャケットの端をぎゅっと掴んだ。


 最初の数日は比較的穏やかだった。俺はその時間を彼女に生存の基礎を教えることに使った。

 湿った薪でも【冥界主権】の小さな火花で火を起こす方法。雪上の足跡と乱れた粉雪から動物を追う方法。戦い方――基本の構え、回避の仕方、小さな体格を活かした戦い方。

 彼女は飲み込みが早く、狐の直感はすでに鋭かった。三日目には自分で火を起こせるようになり、練習用の丸太にしっかりとした打撃を加えられるようになっていた。


「強くなってきたな、ミラ」

 ある夕方、焚き火を囲みながら焼いた兎を分け合い、俺は言った。「もうすぐ、自分で自分を守れるようになるぞ」


 彼女は尻尾を振って笑顔を輝かせた。

「リリスお姉ちゃんのおかげだよ。絆が……胸の奥を温かくしてくれる。何でもできる気がする」


 静かな時間に賢者がさらに説明してくれた。【魂の絆】は着実に成長している。ミラの忠誠と信頼が俺に還元され、感覚を研ぎ澄ませてくれる。逆に、俺の力が彼女の潜在能力を目覚めさせている。すでに小さな幻術の火花を獲得し、狐火のような光で敵を惑わすことができるようになっていた。


 天候が味方してくれる時の馬車移動は、意外と心地よいものだった。雪竜は安定しており、魔導の車内は暖かく、果てしない空の下に広がる白い大地は、古い幻想画を思わせる厳かな美しさがあった。ミラが動物や奇妙な岩の形を指差し、俺は彼女を楽しませるために、元の世界のゲームや映画の話を簡略化して語って聞かせた。


 しかし、北の地は決して穏やかではなかった。


 五日目、二つの巨大な山の間に挟まれた狭い峠に入った時、地面が激しく震え始めた。


 馬車が大きく跳ねた。雪竜が慌てて後ろ脚で立ち上がる。俺は手綱を強く引き、馬車を停止させた。地平線を鋭く見据える。


「何か来る」

 低い声で言った。「ミラ、馬車の中にいろ。鍵を閉めて。どんな音が聞こえても絶対に出てくるな」


 彼女は恐怖で目を大きく見開いたが、素直に頷き、車内に飛び込んでドアを固く閉めた。


 俺は馬車から降り、【夜の嘆き】を抜いた。刃が嬉しそうに唸る。地面の震えがさらに激しくなり、山の斜面から雪が崩れ落ちる。


 そして、それは現れた。


 巨神だった。


 ただの巨人の類ではない。

 氷と岩、そして腐敗した暗黒エネルギーで構成された巨大な人型。身の丈は三十メートル近くあり、紅く輝く瞳と馬車ほどの大きさの拳を持つ。古い体躯はルーンで覆われ、先ほど去った森と同じ暗黒の力が脈打っていた。これは偶然の魔物ではない。峠の守護者であり、残留する腐敗によって目覚めた存在だった。


 賢者の声が緊迫していた。


『Sランク・タイタン変種です。魔力レベルは衰弱した大聖者に匹敵。極めて高い耐久力。核は胸の中央にあります。注意してください、主よ』


 巨神が咆哮を上げた。雪崩のような響きだった。巨大な拳が馬車目がけて真っ直ぐ振り下ろされる。


 俺は動いた。


 巨神に向かって突進する。巨神が足を上げ、俺を踏み潰そうとした瞬間、【幻影】を発動。無数の残像が現れ、巨神は混乱してそれらを次々と踏みつけた。

 その隙に俺は暗黒の瞬きとともに巨神の腕の上に現れ、山道のようにその肢を駆け上がった。巨神がもう片方の手で俺を叩き落とそうとするが、指先から【粘着糸】を放つ。黒い糸が叩き落とそうとする手に絡みつき、自らの体に固定した。巨神は腕が絡まったことに混乱し、咆哮を上げた。


 俺は肩まで到達し、頭部に向かって跳躍した。


【闇の一閃】。


【夜の嘆き】が強化された広い弧を描いた。【冥界主権】と新たに得た【深紅剣技】を込めた刃は、巨神の首をまるでバターのように切り裂いた。氷と岩の巨大な頭部が吹き飛び、山腹に激突して雷鳴のような音を立てた。


 首のない胴体が一瞬揺れ、伐採された巨木のように前方へ倒れ込んだ。衝撃が峠全体を揺らし、斜面から大量の雪が雪崩となって落ちてきた。


 俺は軽やかに地面に着地し、剣を鞘に納めた。巨神の体は腐敗した魔力へと溶け始めていた。


 ミラが馬車から顔を出し、目を大きく見開いた。


「リリスお姉ちゃん……すごい!」


 俺は歩み寄って彼女の頭を撫でた。


「ただの障害物だ。さあ、進もう」


 しかし本当の報酬は、巨神の魂を吸収した時に訪れた。


 溶けゆく体の上に、その本質の巨大な輝く核が浮かんでいた。俺は手を掲げ、【永劫魂支配】を発動した。


 魂が奔流となって俺の中に流れ込んできた。全身が黄金と深紅の光に包まれる。MEとSPが爆発的に上昇した。新たな力が四肢に満ち、世界との同調が深まった。


 賢者の声が解析結果を告げた。


『魂と本質の同化完了。MEが28,000上昇。SPが19,500上昇。新合計ME:141,450。新合計SP:99,320』


『新たに四つの師級スキルを獲得:』


 - 【巨神の力(師)】 サブ:大地を揺るがす一撃、不動の構え

 - 【凍結支配(師)】 サブ:氷の構築物、吹雪のオーラ

 - 【巨体再生(師)】 大規模損傷からの高速回復

 - 【山岳破壊(師)】 大規模な障害物や要塞を破壊する能力


 力の奔流は圧倒的だった。俺は一瞬よろめいたが、すぐに体勢を整えた。巨神の千年にもわたる存在――守護者としての役割、古の戦い、孤独――が脳裏に閃いた。この峠を守り続けてきた存在が、森を蝕んだのと同じ暗黒エネルギーによって腐敗させられていたのだ。


 俺はより強くなった。より速くなった。剣技はさらに深みを増し、体は山をも動かせるような感覚があった。


 その夜、洞窟にキャンプを張った後、俺は焚き火の傍らに座っていた。ミラは俺の隣で安らかに眠っている。賢者が完全に顕現し、ステータスを再確認した。


 久しぶりにフルステータス画面を開いた。


 名前: リリス・ノクターン

 種族: 至高の吸血鬼(真・頂点)

 レベル: 112

 魂力: 99,320

 魔力: 141,450 / 141,450


 究極スキル: 永劫主権賢者(真・上級)

 新スキル: 巨神の力、凍結支配、巨体再生、山岳破壊(全て師級)


 数字を見つめ、俺は小さく満足げに微笑んだ。


「すごいな……前より確実に強くなっている。この成長速度……加速している」


 賢者が頷いた。


「ミラとの【魂の絆】と強力な魂の同化が相乗効果を生んでいます。もうすぐ次の進化の瀬戸際です、主よ。フロストヘイヴンはさらに高みを目指すのに最適な場所となるでしょう」


 俺は安らかに眠るミラの寝顔を見つめ、それから洞窟の入り口から見える星空に視線を移した。


 フロストヘイヴンへの道はまだ長い。


 しかし一歩進むごとに、俺はより大きな存在へと変わりつつある。


 そして大切なものを、守りながら。

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