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第11章:ソウルイーター対ソウルデバウラー

 暗黒の虚空が悪意に満ちて脈打っていた。ヴァルソラックの血色の瞳が勝利を確信し、深紅の彗星のように俺に向かって突進してきた。


 俺は反応しきれなかった。


 彼の爪がまっすぐに胸を貫いた。


「がっ……!」


 魂の隅々まで激痛が爆発した。口から血を吐き、それが暗闇の中で光る粒子となって溶けていく。自分の存在そのものが引き裂かれ、ひとつずつ喰い散らされているような感覚だった。視界が明滅し、恐ろしい速度で力が抜けていく。


[エリシア……ごめん……お前の体を守れなかった……]


[賢者……すまない……]


 小さな体が透き通り始め、半透明になっていく。これで終わりか。トラックに轢かれて死に、九ヶ月間地獄のような森でのレベル上げを耐え、数々のスキルを盗み続けたのに——結局、自分の魂の中で古代の吸血鬼野郎に喰われて死ぬのか。


 その時、虚空に柔らかく純粋な声が響き渡った。小さな女の子の声。聞き覚えがあり、強い決意に満ちていた。


『諦めないで……!』


 その声はエリシア——この体の本来の持ち主、記憶の中のあの小さな少女のものだった。


『まだチャンスはある! あなたが誰かを思い出して! あなたの目的を思い出して! あなたは一人じゃない……今、私たちは一緒よ!』


 彼女の言葉が、果てしない闇に差し込む月光のように痛みを切り裂いた。


 俺は牙を食いしばり、消えかけた意識を必死に集中させた。


 俺の名前……


 俺の目的……


「俺はリリス・ノクターンだ」

 俺は囁き、声に力を込めた。「エリシア・ノクターンの宿主。ノクターン血族の娘。異世界からの転生者。白秋はあの道で死んだ……しかしリリス・ノクターンは……生まれ変わった!」


 力が再び溢れ返ってきた。現実世界の三日月ペンダントが強く輝き、魂と共鳴する。消えかけた体が止まった。


 ヴァルソラックの目がわずかに見開かれた。


 俺は胸を貫いたままの腕を両手で掴み、真紅の瞳に激しい怒りを宿した。


「生命吸収!」


 深紅のエネルギーが爆発した。彼の古代の生命力を直接吸い上げ始める。彼の本質——濃厚で暗く、途方もない力——が血の奔流のように魂に流れ込んできた。


 ヴァルソラックは頭を仰け反らせ、嘲るような深い笑い声を響かせた。虚空全体を震わせる笑いだった。


『愚かな小娘め!我は真祖の君主だ! 生命の源は無限! どれだけ吸い取ろうと我を空にすることなどできん。お前はただ死を先延ばしにしているだけだ。お前はここで死に、我はこの可愛らしい白髪の体を戦利品として纏う!』


 彼の言う通りだった。必死に吸い続けても、彼の力はほとんど減っていない。胸の傷はまだ血を流し、彼の魂は俺が奪うより速く再生している。


 しかしその時、彼の背後に変化が起きた。


 暗闇の中に小さな光る姿が現れた——七歳くらいの小さな女の子。短い白髪を赤いリボンでツインテールにし、フリル付きの黒いドレスを着ている。真紅の瞳には強い決意が宿っていた。


 エリシアだ。


 彼女は小さな両手をヴァルソラックの背中に当て、反対側から彼の魂を吸い取り始めた。


 ヴァルソラックの笑いが突然止まった。彼は素早く振り向いた。


『お前——!? ノクターンの小娘の残滓だと!? どうしてまだ意識がある!?』


 エリシアは言葉で答えず、ただ彼を睨みつけ、小さな手を輝かせながらさらに彼の本質を引き抜いた。


「させるか!」

 ヴァルソラックが咆哮し、自由な方の腕を彼女に向かって振り上げた。


 俺は許さなかった。


 さらに強く、速く生命吸収を続けた。持てる意志と魔力のすべてを注ぎ込む。サブスキルが本能的に発動——高速再生、弱点搾取、エネルギー吸い取り——すべてが連携して彼の無限とも思えた活力を引き裂いていく。


 周囲の虚空がひび割れ、砕け始めた。


「今だ!」

 俺は叫んだ。


 森で何百回も繰り返したように、口を不自然なほど大きく開けた。


「魂喰い!」


 暗い深紅の渦が口から噴き出し、ヴァルソラックの核に食らいついた。同時に、エリシアの小さな体がより輝き、彼を背後から貪り始めた。


 魂喰い対魂喰らい。


 二つの究極の捕食能力が、俺の魂空間の中で激突した。


 ヴァルソラックが悲鳴を上げた——純粋な怒りと disbelief の叫びだった。


『ありえない! 我は永遠だ! 子供と死んだ小娘の残滓などに喰われるはずがない!』


 彼の巨大な姿が縮み始めた。自慢していた無限の生命力が、両側から引き裂かれていく。彼の古代の記憶と力が俺の中に流れ込んでくる——戦争、裏切り、数世紀にわたる支配、そして血の蝕の戦争で封印された夜の光景。


 圧倒的だった。一度に多すぎる。


 それでも、俺は絶対に離さなかった。


 エリシアの声が頭の中に響いた。静かだが強い声だった。


『一緒に……彼を終わらせましょう。お母さんのために。お父さんのために。私たちのために。』


 虚空の中の戦いは、深紅と黒の光が渦巻く目映い嵐となった。ヴァルソラックが激しく暴れたが、束縛影糸がここでも顕現し、彼の四肢と胴体を拘束して動きを封じた。


 彼の笑いは絶望的な咆哮に変わっていた。


『後悔するぞ! 我の真の信者たちが——!』


 俺は魂喰いをさらに強く噛みつき、彼の本質を大量に飲み込んだ。一口ごとに力が強くなる。魂点が急上昇し、新たな力が血管を駆け巡った。


 現実世界では、深紅の繭が激しくひび割れ始めた。外の教徒たちが詠唱を止め、混乱と恐怖の表情で儀式円陣が不安定化していくのを見つめていた。


 魂空間では、かつて威厳に満ちていたヴァルソラックの姿が萎び、砕けていた。輝く赤い瞳が薄れていく。


 最後の抵抗として、彼は俺を完全に支配しようと試みた——しかしその瞬間、エリシアと俺は同時に攻撃した。


 俺は彼の核の最後の一欠片を飲み込んだ。


 ヴァルソラックが最後の、か細い悲鳴を上げた。


『うわあああああああ——!』


 そして……静寂。


 暗黒の虚空がガラスのように砕け散った。


 俺は残された精神空間の中で膝をつき、荒く息を吐いた。胸の傷がゆっくりと塞がっていく。エリシアが俺の前に立ち、優しく微笑んでいた。疲れていたが、穏やかな表情だった。


『ありがとう……リリス。私たちはお互いを守ったのね。』


 俺が返事をする前に、彼女は光の粒子となって俺の魂に溶け込んだ。温かく優しい感覚が全身に広がる——彼女の記憶との統合が深まったのだ。


 賢者の声がようやく戻ってきた。疲れていたが、深い安堵に満ちていた。


『主……やり遂げました。ヴァルソラックの魂は完全に喰らい尽くされました。憑依は失敗です。しかし……真祖の君主の魂を喰らった影響で、状態が大きく変動しています。目覚めた時に注意してください。』



 現実世界で、深紅の繭が赤い光のシャワーを撒き散らして爆散した。


 俺は四つん這いに地面に落ち、荒く息を吐いた。長い白髪は乱れ、自分の血で汚れていたが、手のひらの傷も体の損傷も信じられない速度で癒えていた。生々しく、古く、恐ろしい力が全身の細胞を駆け巡っている。


 五人の教徒が恐怖に顔を歪めて俺を見つめていた。


「し……失敗したのか!?」


「君主が……喰われただと!?」


 俺はゆっくり立ち上がった。真紅の瞳が今まで以上に輝いている。口を開くと、高い声の中に新しい重みが加わっていた。


「今夜は器の選び方を間違えたな」


 俺は片方の小さな手を上げた。


 教徒たちは逃げようとしたが、以前より速くなった束縛影糸が即座に五人全員を地面に縫い止めた。俺が円陣に残っていた魔力を吸い取ると、儀式円陣がひび割れて消えていった。


 俺は一人ずつ近づいていった。


 生命吸収。魂喰い。


 彼らの悲鳴は短かった。


 終わった時、そこに残っていたのは五体の干からびた抜け殻だけだった。


 俺は少しよろめいた。吸収した膨大な力で頭がくらくらする。新たな通知が視界に溢れた。


『魂喰いが進化しました!』

『新称号取得:君主喰らい』

『大賢者封印解除進捗:+35%解放』

『血統覚醒進捗:ノクターン遺産 部分覚醒』


 賢者が俺の横に実体化し、明らかに驚いた表情を浮かべていた。


『主……かつて不滅に近いとされた存在を喰らいました。魂点が28,000を超えています。複数のスキルがランクアップしました。しかし体と魂はこの新しい力を安定させるのに時間が必要です。セラフィナのところへ戻りましょう、早く——』


 キャンプの方角から大きな物音が聞こえた。


 セラフィナが木々を掻き分けて飛び出してきた。聖なる光を放つ剣を構え、顔に心配の色を浮かべている。


「リリス! 凄まじい暗黒のエネルギーの波動で目が覚めて——何があったの!?」


 破壊された儀式円陣の中心に血まみれで立ち、干からびた死体たちを見た彼女は言葉を失った。


 俺は疲れていたが本物の笑みを浮かべ、牙を少し覗かせた。


「……夜中に体を借りたいって言うカルト教徒がいてね。断ったよ。永久に」


 セラフィナはしばらく俺を見つめ、剣を下ろした。


「本当に驚かされるわね、リリス・ノクターン」


 俺は自分の小さな手を見下ろした。まだ華奢で、十四歳の少女の手のままだった。しかしその奥に、古代の力が流れているのを感じていた。


 ヴァルソラックは消えた。


 しかし彼の力と、エリシアの信頼は、今、俺のものになった。


 王都への道は、ずっと危険で、ずっと面白くなった。



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