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奴隷の呪いと  作者:


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104/104

104. 月光

 叙勲式の後、王宮では騎士とその家族や関係者が呼ばれ、慰労パーティが盛大に開かれた。


 綺麗に飾られたスイーツのテーブルの前で、アリア、キャロライン、ユリア、ユーラス達がまるで女子会のように集まり、話していた。

 ペドロがマーガレットの腰に手を回し、女子会の前に現れた。その距離は、誰がどう見ても、恋人の距離だ。

「え!? あんた達いつの間に!?」

 ユーラスが驚いてマーガレットを見る。

「いや、その…」

 珍しくマーガレットが照れている。

「ペドロが…どうしてもって言うから…付き合ってあげるのよ」

「ま、そう言うことにしといてやるよ」

 ペドロはそう言ってマーガレットの頭をポンと撫でた。

「わぉ…マーガレットさん、職場恋愛は本気じゃないとしないんでしたよね?」

 アリアのからかいにマーガレットは顔を赤くしたまま、気まずそうにしている。

「…ま、長い付き合いだから分かるけど、意外にマーガレットの好みかもね」

 ユーラスはそう言ってペドロをチラッと見てマーガレットの耳元で尋ねる。

「あっちの方はどうだった?相性は?」

 マーガレットは照れくさそうにユーラスの目を見てニヤリと笑い、黙って親指を立てた。

「!、ま、祝福するわ。ペドロ、舞い上がって、職務中にマーガレットにセクハラしないでよね?」

 ユーラスはそう言ってマーガレットにハグをした。

「バーカ、んなことしたら、マリウス団長に殺されちまう」

「あーあ、夜遊び仲間がいなくなっちゃうのはさみしいわ。マーガレットを泣かせたら私が許さないからね」

「ああ、分かってるよ。マリウス団長に挨拶して来る」

「また後で」

 二人はそう言ってその場を離れた。

「はぁ…私もそろそろ恋人作ろうかな…」

「ユーラスさん、魅力的だから。誰かいないんですか?」

 キャロラインの質問にユーラスはワインを飲みながら考える。

「まぁ…少し気になる人はいるのよね」

「わぉ…誰ですか?私の知ってる人?」

 アリアは興味津々に尋ねる。

「ん、ネストのフィガロ」

「あ、あの酒場の!? そう言えばあの人、ユーラスさんだけにいつもサービスしてた!」

「こないだ休みの日にバッタリ街で会って、食事をしたの」

「で?」

「また今度デートしようって」

「きゃあ、素敵。私も今度そのネストってお店に行ってみたいわ!」

 ユリアは目をキラキラさせる。

「じゃあ今度、女子会をネストでしましょうよ!ユーラスさん、その方に予約して」

 キャロラインはノリノリでそう言うとユーラスも少し照れて笑った。

「わ、わかったわ。でも、ドレスはダメですよ、ユリア様。ちゃんと平民の変装して来ないと」

「楽しそう!」

 恋バナに盛り上がる女子達にスタークとカインが苦笑しながら近付いて来た。

「ユリア様、あちらに珍しいお酒がありますよ。キリア隊長が来るまで二人で飲みません?」

「ぜひ!私、こう見えて結構酒豪よ?ユーラスさん、行きましょ」

 ユーラスが気を利かせると、ユリアは頷き、二人はその場を離れた。


「やっと解放されたのね。男の人ってこんなパーティでも仕事の話しばっかり」

 アリアとスタークはバルコニーに出る。

「何も食べてないんじゃない?」

「ん、カインが肉メインで持って来てくれたから、こっそり食べたよ」

「ふふ、お兄様はすぐお腹すくから。じゃあ、目、瞑って、あ~んして」

「?」

 アリアに言われ、スタークは目を瞑り、口を開けた。アリアは手に持っていたイチゴをスタークの口に放り込む。

「!」

 目を開けるとアリアはにっこりと笑った。

「好きでしょ?イチゴ」

 月あかりに照らされ、銀色の髪が透き通るようにキラキラとしている。まるで月から降りてきたようだ。凛としたその姿にため息が出る。

「…ドレス姿も良いけど、騎士の制服を着たアリアも綺麗だ」

「…ありがとう。私も、スタークの制服姿、一番好きだわ」

 アリアは少し頬を赤くして言った。

 白い月が二人を見つめている。まだ春は遠く、澄み切った空気は冷たいが、スタークの手は温かい。

「…もう新月の夜も怖くないのね」

「ああ、もうあの背中の痛みはないよ」

「スタークに奴隷紋を半分分けた時、申し訳なくて胸が苦しかったけど、それと同時に心強かったわ。月を戻す時も…背中の奴隷紋が痛んだけど、スタークも同じ痛みを感じてると思うと…変だけど、スタークと繋がってる気がして…頑張れた」

「…同じだよ、俺も。アリアと同じ痛みを感じられて、嬉しいって思ってた」

「スタークって、ちょっと変態ね」

 アリアがプッと吹き出した。

「カインにも言われたよ、それ。変態でストーカーだって」

「お兄様だって大概、シスコンだけど」

「あと、アリアの魂が迷子になってた時も言われた。スタークはアリアがいないとポンコツだって」

「お兄様にポンコツって言われるなんて…」

「ああ、心外だ。あんなおっちょこちょいに」

 二人は顔を見合わせ笑う。

「…スタークは…知ってたの? 私が…ジオルグの出身だと」

 アリアは白い月を見上げながらスタークに尋ねた。

「…君がヨルン王子と踊ったの覚えてる?」

「ええ」

「アリアは踊ってる時、ずっと微笑んでいた」

「?」

「アリアの笑顔は見たら分かる。あの笑顔は嘘をついている時の笑顔だった」

「!」

「あの後ヨルンに聞いたんだ。幼い頃に会ったジオルグの姫とアリアが似てたって。踊った時、アリアに確かめたら、違うと答えたって」

「…」

「小さい時からアリアは所作がきれいだった。言葉遣いも平民とは違ったし、気品があった。ビックリするほどお転婆だったけど」

 スタークはそう言ってクスッと笑ってアリアの左手の薬指の指輪にキスをした。その笑顔にアリアの心臓はトクンと跳ねる。深い群青色の瞳に吸い込まれそうになる。いつも自分に向けるスタークの笑顔だ。

「…五歳の時、クーデターで国王だったお父様とお母様、お兄様は殺されたわ。私だけ生きのびて、奴隷商に拐われた。助けてくれたのはお祖父様よ。その時、私はダリアと言う名前を捨てたの…国と一緒に」

「仕方ないよ、五歳のアリアじゃ何もできない」

「私はラスタに来て幸せになった。素敵な家族に恵まれたし、スタークとも出会えた。騎士にもなれたし、大事なものも守れた。でも…国を…ジオルグを見捨てた罪悪感はずっとあったの。」

 スタークはアリアを抱き寄せる。

「うん。…領主として、ジオルグを再建できればアリアの心が少しは軽くなるかなと思って」

 スタークの優しさに涙が溢れる。

「あリがとう…スターク」

「ジオルグは海の幸もエールも美味しいから、観光地にするのもいいかな。北部ではリンゴが名産だ。鉱山もある」

「私より詳しいのね?」

「ちゃんと学校や病院も整備して、治安を良くする。少し忙しくはなるけど、騎士をしながら領地経営するんだ。二人ならきっとできる」

「うん。スタークとなら…きっと良い領地にできるわ。なんだか…少しワクワクしてきたわ」

 アリアはそう言って笑った。そのキラキラと光るハチミツ色の瞳をスタークは愛おしく見つめる。

 お互いの体温が心地良く、口には出さないが、幸せを噛みしめる。

「俺は君の王子様になれたかな?」

 スタークはアリアの頬にかかる髪を優しくかき上げ、尋ねた。

「…あなたは、初めて会った時から私の王子様だわ」

 アリアはそう言って背伸びをし、スタークの首に両手を回し、唇にキスをした。


 深い群青色の夜空から柔らかな光で月は二人を照らし続けた。


***おわり。







 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 このサイトを知り、初めて小説を投稿し、人様に読んでもらえたことも初めての経験でした。

 数ある小説の中から、私の作品を読んで下さる人がいることが、モチベーションになりました。

 初めてファンタジー小説を書いたので、もしよろしければ、感想やコメント、評価などいただければ幸いです。

 その後の話や、スピンオフ的な話も書きたいなと思っていますので、また読んでやって下さい。

 ありがとうございました。

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