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其の三
「優希子!」
咲平が名前を呼ぶ声と同時に小屋の扉が開く。
「咲平さん!」
そこには少し怪我をしている優希子と優希子を攫ったであろう男達がいた。
「よぉ、漣?前はうちの奴が世話になったなぁ?」
「知らないよ。何のこと?」
「あ゛ぁ?忘れたとは言わせねぇぞ!まあ、いい。そういやお前この嬢ちゃんには何にも教えてないんだな?」
走って熱いはずなのに体が内側から冷えていくのを感じる。
「…何が?」
嘘だ。何のことかなんてわかってる。
やめろ。頼むから。優希子だけには…
今までの優希子との生活が頭によぎる。
知られたくない。
知ってほしくない。
嫌われたくない。
離れたくない。
「お前が」
やめろ。
やめてくれ。
「人殺しだって事をよぉ?」
その瞬間頭の中が真っ白になった。
僕はただ刀を握った。
目の前にいる男達を斬りつけた。
優希子がいることを忘れて…