表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1、異形の姫君

 神と人が今よりも近くで生きていた時代に、ある少女が生まれた。その少女の名前は時姫ときひめと言った。時姫は白い髪に薄い灰色の目をしていたため、人ならざるものとして育てられた。

 時姫は神事に携わる中臣氏なかとみうじの次女として生まれた。中臣氏なかとみうじの家では、代々長女が家を継ぐしきたりになっている。時姫の姉、風姫かぜひめが、家を継ぐものとして育てられ、次女の時姫は神への供物として大切に育てられた。


 ある時、風姫が両親に尋ねた。

「父上、母上、なぜ時姫の髪は白いの? あんな目の色をしているの? 私達はみんな黒いのに何故なの?」

風姫かぜひめ、そのようなことを口にしてはいけない。神罰が下る」

「ええ、時姫は特別なのです。きっと、神の供物として特別な生を受けたのでしょう」

「……分かりました」

 風姫が両親と話をしていると、時姫が風姫の着物の端をつかんで笑いかけた。


「ねえさま。あそんでくださいませ」

「……ええ、また今度ね」

 時姫は、姉も両親も、自分に触れたくないのか、避けられている寂しさを感じていた。


 時姫が庭で一人、日向ぼっこをしていると、幼馴染の真人まさと影彦かげひこがやってきた。

時姫ときひめ、また日向ぼっこしてるのか? 一人なら、遊びに行かないか?」

「影彦! 今日は何して遊ぶ?」


「野草を摘みに、川のそばにいってみようか?」

「でも、父上に川を渡ってはいけないと言われているのよ?」

 時姫がしょんぼりとした様子で言うと、影彦は明るい声で言った。

「川を渡らなければいいんだろう? 水辺には花も咲いているし、川には小さな魚もいる。遊びに行こう」


「それじゃあ、父上たちにみつからないようにしないと」

「分かった」

 影彦は時姫の手を取り、川へ向かった。

 二人は親の目を盗んで、川べりや原っぱでよく遊んだ。


「時姫、ずっと一緒にいような」

「うん」

 時姫にとって影彦は、自分を異形のものとして扱わない、唯一の相手だった。


二人はお互いに手を取り合って笑った。

 しかし、幼く平和な日々も終わる日がくるのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ