48.昔のどこか
ミートパイのおかげで元気になったアマダスと一緒に、宿屋の中へと入る。
「おかえりなさい」
すると入ってすぐに、カタラさんがいつものように挨拶をしてくれたので、
「ただいま、カタラさん」
挨拶を返すと、どこか嬉しそうに笑ってくれるカタラさん。そんなカタラさんを不思議に思いながらも、階段を上がって自分の部屋へ。
「パラン、パラン!早く食べるぞ!」
部屋に入るなりアマダスは慌ただしい声でそう言って、素早くテーブルの前に行く。私もそれについて行き、ミートパイをテーブルの上に置いてから、
「食べていいよ、アマダス」
アマダスに言葉をかけると、物凄い勢いで食べ出した。
そんな勢いを見て、きっとこのままだと私の分が残らない、そう確信して私もその勢いに負けじと素早く一切れ手にとって食べ、ミートパイに食らいつく。
それから数分でミートパイはなくなり、私はいい感じの満腹感の中、テーブルの上を片付けていると、
「その……パラン……」
アマダスが珍しく口をもごもごさせながら、聞こうか迷っているように私をちらちらと見て、少し無言の時間を挟んだあと、小さな声でぽつりと聞いてくる。
「今日、考えておった人は、誰なんじゃ?」
「今日考えてた人?……あっ、私の師匠のこと?」
水魔法を覚えている時に、ふと思い出してアマダスに小突かれた、あの時の事を言っているらしく、アマダスは頷いて、師匠について知りたそうに聞いてくる。
「その師匠とやらは、どんな人なんじゃ?」
「どんな人かって言われたら、強くて優しい冒険者だよ」
「す、好きなのか?」
「あはは、そんな事ないよ」
アマダスから返ってきたその言葉に、思わず私は笑ってしまう。また会いたいなとは思うけど、好きだなんて思わない。
「せいぜい友達になりたいな、ぐらいだよ」
「ほ、本当か?」
「本当だよ。私が好きって思うのは、アマダス一人だけだから」
「そ、そうか」
私の言葉にアマダスは安心したような、嬉しそうな表情で笑って、私にぐいっと身を寄せると、
「我も好きな人は、パランだけじゃ」
そう言って抱きしめてきた。私は、そんなアマダスの頭を撫でながら言う。
「今日はちょっと早いけど、もう寝よっか」
まだほんの少しオレンジ色が残った空を見て、私はアマダスと一緒にベッドに寝っ転がり、手を繋いで目を閉じた。
◆
黒い空の下に、ぼろぼろになった大地が広がっていて、懐かしいような、悲しいような、そんな感情に襲われる。
私はここで何を……
「やぁ、元気してるかい、アマダス」
後ろから元気な声で、名前を呼ばれる。誰だろうこの赤髪のお姉さんは。でも、知っている気がする。昔どこかで……
「あら、また無視されちゃった。力を持っている者は口数が少ないね。それにしても、今日はここに誰もこなさそうだ。何をしているんだい?」
何をしている……私は何をして……
「どうして、戦っておるんじゃろうな」
口が勝手に動き、ひどく弱い寂しそうな声で言う。何か忘れている気がする。何か思い出さないと……
「それが運命だから、じゃないかな?」
「運命、か。つまらんな」
「ぷっはっは、そうだね。私は今つまらない回答をしたね、アマダス」
アマダス……アマダス?違う私はアマダスじゃない。私の名前はパラン。アマダスは私の好きな人。
この記憶は、この夢は、もしかしてアマダスの……
「我は皆一緒がいいな」
「それは相手も思っているよ。でもきっと、後戻りできないんだ、皆。戦いってそういうものだから」
「そうか……ならばなおさら、つまらぬな」
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