ROLL.12:驚愕。
「◎#△?□%☆●×〒◇♂――――――――――!」
もう滑る滑る。
暗闇の中の天然ウォータースライダーを滑る恐怖は半端ではない。
自然と声にならない叫びが口から漏れるのは致し方ないことだ。
オレがチキンなのではない。
そこん所は分かっておいて欲しい。
「★♀≦*――――っとぉッ!?」
ズバドシャバ―――――――ッ!
傾斜が水平になった。
が、相も変わらず床が水で濡れていたので摩擦が働き止まる訳も無く、運動エネルギーを持て余したオレは勢い余って、盛大な音と水飛沫を上げながら大滑走した。
もうグショグショのヨレヨレだ。
だが、
「……明るい」
俺が滑り着いたのは円筒形の広い部屋で、壁に吊られた松明に火が灯っていた。
獅子正もいた。
さっきの音でオレが来たのは分かったらしい。
穿たれた眼窩をこちらに向け、不審げ焔をユラユラと揺らしている。
奴が火をつけて回ったらしい。
……まぁ、んな事ぁどうでもいいんだ。
「てめぇ、オレたちを置いて行きやがって…!」
――ココカラサキハ――キケンナノダ――
――シシテナオモ――ヤツノシネンガノコッテイル――
――ソナタラニハ――タイヘンセワニナッタ――コレイジョウキケンナ――
奴の台詞が弁解がましく聞こえるのはオレだけか。
「はっ、何を今更」
ぐらり、と獅子正がたじろぐ。
「ここまで付き合っといて、じゃあ後は頑張ってね獅子正君♪とか言うと思ってんのかボケ!」
――――ソレハ――――
「人信じんなら最後まで信じろよ!つー訳だ、オレも行く!」
――ホカノモノタチハ?――
「放っときゃ来るんじゃねぇの?」
と、
『うきゃわぁあぁぁぁ―――――!』
オレの後方から異様な絶叫が聞こえてきた。
恐らく、「うわー」と「きゃー」が重なった悲鳴だ。
オレは二、三歩、脇にずれる。
ズバドシャバ―――――――ッ!
はいやっぱりね。
案の定来たよ。
嬉しいやら呆れるやら…。
現研の皆が全身びしょ濡れで姿を現した。
全員無言だ。
叫びすぎて喉が潰れたのかもしれない。
それとも声をスライダーに置いてきたかな?
「大丈夫か?」
一応聞いとく。
「はぁ…はぁ…し、死ぬかと」
「十年分くらい叫んだわ…あ〜喉痛い」
「危なかったわね」
「危なかったのはこっちだよ瑠奈!君だろ、自分の身を守るために僕を壁に押し付けようとしたの!」
等と口々に言いながら立ち上がる皆。
一応は大丈夫みたいだな。
皆が一息ついた所で、オレは獅子正が先程ほざきやがった事を話してやった。
皆一様に不満そうな顔をしたが、獅子正が結構へこんでいたので(焔の量で大体分かる)何も言わなかった。
先に進むことにする。
わなの類に引っかかることも無く部屋を横切り、大きな青銅製らしき扉の前に着く。
「この中か?獅子正殿」
部長が前に浮かんでいる髑髏に向かって問いかける。
アァ――マチガイナイ――――
と、獅子正が肯定した所で。
観音開きの扉が重たげに軋みながら、ゆっくりと、勝手に―――開いた。
「じ、自動ドア?」
一番後ろで瑠奈がボケるが皆はスルーした、あえて。
その刹那―――
ごしゃ
宙を浮いていた髑髏、獅子正が激しく地面に叩きつけられた。
「な…ッ!?」
焔が枯れ、獅子正は沈黙する。
「人の墓を荒らそうとは―――」
前方の闇から声がした。
「いい度胸ではないか」
そこから現れたのは。
この墓の主「鹿賀 堂陰」その人だった―――――――
って、えェぇぇッ!?
皆、叫びますねぇ(笑)
みなさんは、本気で叫んだことありますか?
僕は………。
ぼ、僕は………。
あれ。
ないや(笑)




