ROLL.13:狂人・兇刃。
細長くとがった顎、高い鼻、狡猾さを窺える落ち窪んだ切れ長の双眸。
羽二重の留袖と羽織袴を身に纏い、手には煌めく日本刀を携えている。
このいかにも悪人です、って奴が鹿賀 堂陰(の霊)なのか?
「貴公等は、何故面妖な髑髏等を連れて、我が墓内に居るのかな?」
堂陰が、優しい口調でそう言った。
…お前の性格はそんなのじゃない筈だ。
猫被りやがって。
内心では怒り心頭で、オレたちをどう嬲り殺してくれようかと考えているんじゃないのか。
「もう一度問おうか。何故、貴公等は――」
「下手な猿芝居はよせよ、堂陰。どうして来たかぐらい解っているだろうに」
一歩前へ。
刀を握る手に力がこもる。
堂陰の口角が歪に吊り上がった。
「くっくっく…餓鬼だと思って舐めるな、か。面白い」
「還してもらおうか、獅子正の〈命〉を」
「…鞍富の刺客であるか。これはまた…随分と時が経ったものよ」
化けの皮を脱いだな堂陰。
しかし、こんな奴がこの地を治めていたなんて。
信じられないというか、信じたくない。
「しかし、何の事やら。我には貴公が言っておる事が―――」
「黙れよ下衆。しらばっくれてんじゃねぇ。いいから早く獅子正の〈刀〉を還しやがれッ!」
そう。
そうなのだ。
獅子正が言っていた命というのは己の〈刀〉の事なのだ。
刀は武士の命だとよく言われる。
それは獅子正にとっても例外では無かった。
彼は堂陰に夜討ち朝駆けを受け、殺された。
己が使い続けてきた愛刀を、武士としての証を、誇りを、奴に盗まれた。
獅子正は数百年もの間、その第二の命を探していたのだ。
「渡さぬ。此処に有る物全てが我の物だ…!何も、誰にも渡さぬわ!」
堂陰の瞳が、狂乱の光を宿す。
奴の手にした刀が(これはどうやら獅子正の物では無いらしい)灯火を受けてギラリ、と輝きたつ。
「なら…武力行使だ。ぶった斬ってやる」
奴を睨みつけながら、黒鞘から得物――霊刀を引き抜く。
「くく…礼儀作法を知らぬ餓鬼よな。我が叩き直してしんぜよう」
「下がってろよ、皆。オレが引き付けている内に…頼むぜ!」
濡れた地を蹴り、全速で堂陰に肉薄する。
奴は刀を構えてさえいない。
くそ、舐めやがって。
激昂を必死で抑えて、獲物を振り上げる。
「はあぁぁっ!」
上段からの振り下ろし――すんでの所で躱される。
堂陰が目を見開いた。
なぜか。
奴は見くびっていたのだ。
己が身体は霊子である、このような餓鬼にわれを攻撃する術など無かろう、と。
「ほぅ、その刀…見目は悪いが――どうも珍品らしいな」
下からの斬り上げ、続いてスラスト(突き)、横からの薙ぎ払い。
その全てを悉く躱される。
流石に武士だっただけある。
半端じゃない。
身体の軸を動かさずに避けるので、こちらのスタミナだけが一方的に削られてしまう。
それに相手が人型というのもどうも気が引ける。
強がりを言ってしまったがやりづらい事この上な――っ!?
堂陰の反撃。
迫る太刀筋を避ける事が出来ず、刀身で受け止めた。
――のだが、それでも衝撃は抑えきれず、後方へ大きく弾き飛ばされた。
きしり、と刀身が欠ける。
「小僧、威勢が良いのは口だけか?せっかく良い刀を持っておるのに、それでは宝の持ち腐れだ」
オレを嘲笑いながら堂陰は刀を振るう。
奴の刀の軌跡がしなる。
その剣技は柔らかく、まるで鞭のようだ。
それ故に軌道を読みにくく、苦し紛れの反撃もいとも簡単に受け流されてしまう。
でもまぁ、囮役ならこのぐらいの差があった方がかえって良い。
皮肉な事だが。
チラリ、と堂陰の背後を見ると部長たちが息を殺し、じわじわと堂陰が先程現れた扉に向かっている。
これなら行けるぞ。
だが―――
「何をしておるのだ?」
オレの前で刀を振るっていたはずの堂陰が、いつの間にか部長たちの前に仁王立ちしていた。
「餓鬼どもの策略程度を見抜けぬ我ではないわ」
窪み濁った瞳が更なる光を宿す。
部長たちが何かに押し倒されるように膝をついた。
――やばい。
足が勝手に走り出す。
堂陰の口元が三日月を描く。
間に合わない。
「先ずは貴様等から我が刀の錆びにしてくれよう」
兇刃を振り上げる。
「やめろぉおぉォ――ッ!」
悲痛な叫びが口をついて出た。
しかし、堂陰は耳も貸さず。
狂気の笑みを湛え、得物を振り下ろした――
おぉ…なんとも緊迫した雰囲気(^_^;)
なんか裏ボスが登場したような感じですね(笑)
皆さんの感想がほしいと思う今日この頃です。
見てくださる方がいるのは確かなのですが、
はたして面白いと思ってくれているのか、不安でたまりません。
どんな意見でも結構です。
感想お待ちしております!
今ならまもなく、なんかします!(笑)




