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異世界も、俺は俺だし、そうボッチ。  作者: 司弐紘
王宮に
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こうしてオタクは民主主義に絶望する

>BOCCHI


 え~~と。

 何処から始めようかというお話しですね。


 まず俺の格好ね。

 これはね、確実にマドーラ(あの娘)が悪い。


 何だ、あの不良ヤンキー趣味。

 それで思わず俺が学ランとか思い出してもこれは仕方が無い話。

 金ボタンの付いた感じのね。


 で、それを見て思い出したわけですよ。

 学ラン=超能力者の構図を。


 幻○大戦とかさぁ。

 それにもちろん、山野浩一ことバ○ル2世ね。


 ああ、それで思い出したことがあった。

 テレビアニメ放映時に、そのビジュアルが変わった事があったんだよ、バビ○2世。

 途中でロプ○スにも跨がらなくなっちゃう。


 あれなんだったんだろう? と思っていたらその真相が聞こえてくるわけですよ。

 どうもね。

 当時のPTAが、


「学生服で戦闘するなんてけしからん」

 

 とか、


「なぜ、恐竜に跨がってるんだ?」


 みたいな文句を付けたらしい。

 確かにEDで、バ○ルの学生服、機関銃で穴だらけにされるからな(すぐに元に戻るけど)。

 戦っていたのは間違いない。


 でも、そんな事、言うまでもない事だけど「だからどうした?」ぐらいのこと。

 確実なのは文句付けた連中は確実に、バカで、クズで、さっさと酸素の浪費をやめた方が人類のためになる、という事が判明するだけ。

 ……まぁ、当時の世情を考えると学生運動とかの影響もあったのかなぁ、と思わないでは無い。


 実際それ以降の、さっきも出した「幻魔○戦」とか「風○の小次郎」とかは平気だったわけだし。

 ……いやあれは、TVアニメじゃないしなぁ。


 まぁ、それは置くとしてだよ。

 そういうイチャモンで涙を呑んだはずの連中が、どういうわけか大人になったら規制賛成派に回っているという現実ね。あいつらは一体何?

 人間というのは、やはり加齢で劣化の一途を辿るのかねぇ?


 そう俺が考えて、ついでに民主主義に未来は無いと判断したのもこれが理由。

 100%劣化が約束されている政体と、0.0001%の確率でも名君の出現で、まともになる可能性があるのなら、それはもう血脈をアテにしての君主制の方がマシなように思えるもの。

 それに名君出現の確率は、ここまで低いわけじゃ無いだろうし。


 そうそう。


 そこから確率の話。

 藤子・F・不二雄先生の短編の中で面白い描写があるわけですよ。

 自由に動き回っている分子なり原子の動きが、同じ方向に揃って動いたら? という問い掛け。


 別に運動量が増えるわけでは無い。

 つまり熱は発生しない。

 単純に“偶々(たまたま)同じ方向に”原子の方向が揃っただけ。


 これが、対ヨハン戦で俺がいきなり「支え」を空中に出現させた絡繰り。

 “壊れスキル”がある、ということが前提になるけれど、これはなかなか便利だった。


 赤い翼竜……そうか、こいつの説明も必要だったか。

 こいつは俺が“大密林”で優雅に1人住まいしていた頃に捕まえた奴。

 別に愛情を持って飼い慣らしたわけでは無い。


 どうやら、そういうことも出来るらしい“壊れスキル”。

 「テイム」とか、それみたいな仕様が存在する可能性。


 捕まえた動機は、もっぱら移動用。

 ……ええ、すでにロプ○スとか呼んでましたよ。


 もっともロプ○スじゃ無いので、当たり前にロボットじゃ無い(ネタバレ)。

 “大密林”で放置しておけば、勝手に死ぬだろうと思っていたが、流石に1年や2年ではなぁ……


 で、今回のバ○ルで存在を思い出して、久しぶりに呼んでみたわけですよ。

 それで大体説明――そもそも超能力じみた力の説明の途中だった。


 ロプ○スでもガ○ーダでも、どっちでも良いんだけど、あいつから飛び降りた時に減速したのも、原子の動きの向きを揃えただけ。

 でも、これって絡繰り分からないと、本気で魔法みたいに見える。


 それを自覚した上で――さぁ、経済動物かちくの処理を始めよう。


 俺は空中に足場を作って、スタスタと金ピカに向かって歩いて行く。

 多分、現場責任者はこいつだろうしな。


 念のために確認しておくか。


「お前が、この場の頭って事で良いんだよな?」


 流石に家畜に敬語を使う趣味は無い。

 そもそも金ピカが……あ、そうだ!


 俺は、その場で振り返って塀の上に戻ることにした。

 

 お!


 何かしたようだな。

 背中から風が来る。


 これはね。

 お兄様に恋い焦がれる怖い妹の手法。

 あの「クローソー」みたいな役割の妹ね、

 つまり原子運動を制限すれば、当たり前に“燃焼”っていう現象は起きないんだよ。


 ま、これは後で良い。


「……申し訳ないんだが、頼みがある」


 壁に戻った俺は床几に身体を預けているゴードンに話しかけた。

 何だか、目をまん丸にしてるけど、それも後回し。


「ここに、剣ぐらいの木の棒集めておいてくれないか? 本物はもったいないから、木で良い」

「あ、ああ……」


 相変わらずゴードンの表情が冴えないが……多分いつものことなんだろうな。

 俺は気を取り直して、ブルーとキリーへと視線を向けた。


「『念動テレキネシス』をお願いしたいんだが、大丈夫か?」

「……そ、そりゃあ出来るけど、兄ちゃんが使ってるのって……」

「これは魔法とは違う」


 ――超能力だ。


 とは流石に言えないしな。

 そもそも超能力でもないし。


「で……いや、先に一頭潰しておくか。その後の方がゆっくり出来るし」

「ゆ、ゆっくり?」

「そう、ゆっくり」


 そう返しながら、俺はもう一度金ピカへと向かった。

 あまり、こいつらが逃げ出すとは思ってないんだよなぁ。


 「ア○ギ」で、ヤの付く自由業の方々を、


「自分の不利が分かっているのに、逃げ出す事も出来ない圧倒的なカモ」


 みたいなことを言われていたが、多分似たようなものなんだろうな。

 と、そんな事を考えていたら今度は無事に金ピカの前に辿り着いた。


「こっちも損害があるわけでな」


 普通に話しかける。


「それで数頭潰しておくことにした、基本的にお前はダメだ。下手に収穫したら経済が崩壊しかねん。何だその下品な金ピカは」

『下郎……』

「やはりしゃべれるか。ということは、お前人間だな。ようやく人を殺す事が出来るようで俺も一安心だ」


『下郎! 我の姿を……』

「高貴な竜だとか言うんだろ? もう良いんだよ。そういうテンプレは飽きた。それよりも喜べ。人間扱いしてやるんだからな。俺の尊敬するシナリオライターが『言葉を話す以上人間』という基準を示してくれたのでな。俺もそれに従うことにした。で、お前らはそれに逆らう権利は無い――経済動物風情が」


 ああ、セブンスター(セッタ)飲み(やり)たい。

 しかし、流石に学ラン姿ではなぁ……


『下郎めが! 先ほども我を……』

「あ、わからないんだ? って事は、女神(あの馬鹿)がバカすぎるのか、こいつらが無下に扱われているのか……」


 悩みどころだ。

 ま、この辺は追求しても仕方ないだろう。


「……とにかく、お前らは高貴で力強く、え~と、何だ? 美しいも足しておこうか。そういう存在であると主張したいんだろ?」

『げ、下郎の分際で――』


「だから、そっちが満足する形で付き合ってやるよ。お前の火炎放射を防いだのが、何かしらのズルで、まやかしとか言いたいんだろ? それが無かったら、俺なんかたいしたこと無いって言いたいわけだ。そのテンプレはスルーして……」


 俺は金ピカの周りにいた、1頭に目を向けた。

 緑の奴だ。


「お前が手頃かな。俺と力比べしよう。金ピカ。お前もそれで良いな?」

『な、何を勝手な……』

「俺が怖くは無いんだろ? だったら何でも良いじゃないか。まぁ、面倒なのでお前達の火炎放射は封じさせて貰うけど。それならそれで力で俺潰せば良い話だし」


 俺が金ピカの返事を待たずに緑に近付いて行く。

 “みどり”なんて名付けてしまったせいか、俺の頭の中では、


(もう少し~もう少し~)


 なんて歌声が流れているが、緑の命も、もう少し――うむ、なんて冒涜的なんだ!

 ……まぁ、いいか。


 と、緑は随分やる気みたいで、出し抜けに右腕を振るい爪を繰り出してきた。

 金ピカから指示が出たのかな?

 昔は竜言語ドラゴン・ロアなんて概念があったわけだが、こっちにあるかどうかはわからない。


 翻訳スキルで強制的に言ってることがわかるしな。

 それはともかく、緑の爪。


 ……うん。


 やはり大したことが無いんだ、これが。

 世界システム的に、俺より強くなることが出来ないみたいでなぁ。

 俺が強化されてるのか。

 相手が弱体化してるのか。

 あるいはその両方か。


 俺は左手1本で、迫った来た緑の爪をあっさりと止めてしまっていた。

 そのまま、その爪を握りつぶして、その右腕自体を固定してしまう。


 ああ、その口の形であんぐりと口を開くと、思ってる以上に間抜けだから。


 そんな忠告は胸に留めておいて、俺はその腕を辿って緑の懐に入り込んだ。

 周囲のドラゴンがまったく動いてないのは――恐らく何が起こっているのか、わからないせいなんだろうな。

 仕方ない。

 俺もよくわかってないし。


 それでも、やること変わらないんだけどね。

 もう爪は手放してるし、好きに動けるはずなのに緑、硬直してるんだもの。


 あ、それでも、動けることに気付いたみたいだ。

 でもその方向に行かれると、ちょっとプランと違うんだよなぁ――ということで修正。


『グワァアアア!! い、痛い! 痛いぞ!!』


 翻訳スキルが律儀に緑の窮状を伝えてくれた。

 それも仕方ない。


 何しろ今度は、緑の上腕部に手を突っ込んで骨……もまた太すぎるから、適当に握りつぶして保持してるし。

 その過程で、太い神経でも傷つけたか切ったんだろう。


 これはあれだ。


 コラテラル・ダメージって奴だな。


 で、緑の腕に突っ込んでいる俺の左手を引いてだな――ありゃ? 奥襟とか、そもそも無理な話だし――でも、緑はもう体勢崩れてるし、緑の右腕を両手で持つしか……


(ん?)


 これって“山嵐”にならないか?


 と、俺が不遜な事を考えてしまったのが運の尽き。

 緑の身体が宙に舞う。


 それも逆さまに。


 どうやら“壊れスキル”がまたやらかしてしまったらしい。


 ズゥゥゥゥウウン……


 そして、緑の身体が仰向けに地面に叩きつけられた。

 受け身もへったくれも無く。


 バシーン! と。


 しかし、その時俺はこんな事を考えていた。


 ――脳天から落とせなかったから、これ“山嵐”じゃないよなぁ……


 と。

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