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第3話 久遠血河

 抵抗して怪我をさせるわけにもいかなかったカランは、何時でも抜けられるような縄で縛られてダリア村へ連行されることになった。

 どこかで逃げ出そうとも思ったが、魔王というのが気になったのと、人のいるところへ行きたくて大人しくついていくことにした。


 これには少しばかり農民も疑い顔だ。


「あんた、やけにおとなしいな?」


 先ほど盗賊どもを一網打尽にした手腕は農民も見たところだ。

 このくらいなら縄抜けもできると思ったが故の問いだった。

 カランは暢気に笑う。


「魔王が気になるからな」

「いつまでそう言っていられるやら」


 ダリアの村は、すぐ着いた。

 牧歌的な村なのだろうが、今は魔王が付近の山に居座っているため、陰鬱とした絶望の雰囲気が漂っているようだった。

 道の端に生えた草花も元気がないように萎れている。


 農夫はまずカランを村長のところに連れていき、事情を説明する。

 もうこれしかないという説得に村長も理解を示し、すぐに村の娘連中を呼んでカランを着付けさせた。


「おぉ……」

「まぁ……」


 中天大姫譲りなのか元々見た目が良いカランなので、出来上がった際には、男も女も頬を赤らめるほどに美麗な女に仕上がっていた。

 服装もこの地域で用いられる花嫁衣裳をなるべく肌を見せないように改造した白糸の装束を着せて、あとでベールをつければどこからどう見ても女にしか見えないだろう出来である。

 村人たちにとってこの仕上がりに希望を見出したようである。


「よし、これなら何とかなるかもしれないぞ」


 あとは村にある馬車に乗せて魔王のところに連れて行けば良い運びとなった。

 カランはその間、されるがままだった。

 魔王についての情報もある程度、盗み聞きもできた。どこへいるかもわかったから、一人でそこへ向かっても良かった。

 ただ、逃げるなら服が欲しかった。服がもらえるなら別に女物でも何でもいいと考えてされるがままになっていたのだ。


 上等な花嫁衣装は、多少動きにくいにしても着心地が良く、花嫁を守るための守りのまじないが掛けてある。

 まじないの質からして、ずっと昔から花嫁のことを想って多くの人物たちが大切にしてきたことがわかった。


 騎士等級までの魔ならば、早々近寄って来れないだろうという素晴らしいものだ。

 元王族のカランをして、これは良いものだとなったので、魔王の所から帰ったらこれをもらって普段着にしようと思ったほどだ。


「それじゃあ傭兵先生を呼んで連れて行ってもらおう」


 村長がそう言うと村人が宿屋に人を呼びに行った。

 傭兵はすぐにやって来た。

 十八か、十九と言った年頃の男で背が高く、険しい顔つきで頬に一本筋の傷がある。傭兵らしい精悍さが溢れているが、目からは不遜な色が感じられた。

 腰に下げた剣は、カランも目を見張るほどの業物であり、鞘内から滾る魔力から聖剣の類であると伺えた。

 傭兵はやってきてカランを目にして絶句したようであった。


「出発は明日のはずだが、いきなり呼びつけた何の騒ぎだ――」

「どうも」


 カランは挨拶とともに微妙な笑みを向ける。

 すると傭兵は村長に、凄まじい剣幕で声を上げた。


「な、なんだ、これは、どういうことだ! オレが運ぶのはガウラのはずだろう!」

「し、仕方ないのです。逃げられてしまい。その代わり、生贄を出すことにしましたのです。それに依頼料はお支払いしていますし……」


 村長の言葉に傭兵は舌打ちし、ずんずんとカランの方へ近づいてくる。

 そして、なんとも形容しがたい顔をしたまま、先ほどの剣幕が嘘のように丁寧な言葉で着いてい来るように言った。


「こちらへ。今すぐ出ます、魔王の下へ着くのは真夜中になります」

「あ、どうも」


 そのまま馬車に乗せられ、山道を進む。

 別にカランも多くを話す方ではないが、それでも沈黙寄りは会話を愛している。静かな森よりも人のいる場所の方がカランは好きなのだ。

 だから、少しくらい会話してみるかと口を開いた。


「僕はカランという。良ければ君の名前を教えてくれないかい?」


 御者台の傭兵はしばらくの沈黙の後、溜息を吐くように答えた。


「……ジニアです」

「ジニアか。良い名前だ」

「アナタこそ、勇者と同じ名前でしょう」


 ジニアの言葉にカランは驚く。

 まさか、まだ自分の名前が勇者として伝わっているとは思わなかったのだ。

 カランが勇者として活動したのは九百年も前だし、それ以降、何度か同名で色々な活動をしていたが、伝説になるようなことはしていない。

 ゆえにこの名前も時の流れに埋もれても仕方ないと思っていた。


「驚いた。まさか、勇者のことを知っている人がいるだなんて」

「この付近には勇者が眠る堂があると昔から伝わっていました」

「なるほど、そうか。そういうこともあるのか」

「それでアナタは、人助けでそんな格好を?」


 ジニアの言葉の中に信じられないという感情を見つけて、カランは不意に懐かしくなった。

 魔王討伐の旅の最中、ジニアのように言ってきた仲間がいた。


(懐かしいな。そう言えば、彼も傭兵だった。傭兵の神になったから傭兵は皆、彼に似るのかもしれないな)


 そう思うと少しおかしくて笑ってしまった。


「何か笑うところがありましたか」

「いや、何でもない。昔を思い出して、つい吹き出してしまった」

「……そう、ですか」

「しかし、先ほど村で見た君は傭兵っぽく荒々しい口調だったのに、僕には丁寧なんだな」

「相手は選びます」

「なるほど、そういうところも僕の知り合いにそっくりだ」

「そんなことより、さっきの質問の答えは?」

「ああ、人助けではない。成り行きだ。僕はこの件には介入するつもりはなかった」


 カランがそう言うと、ジニアの言葉には再び信じられないというような色が混じる。


「なぜ?」

「なぜって、そうする意義も意味も見いだせないからだ」

「勇者なのに?」

「名前が同じだけだよ。仮に、仮にだ。もしもの話だよ? 仮に僕が勇者だとしても、同じことをしたと思うよ」


 なぜならば、カランにはもう戦う理由も、護りたい人もいない。守るべき義務もなく、生きる理由も今は定かではない。

 村を見てわかったが、災禍が発生しているということではないようだった。

 災禍が発生した時は、大陸の反対側だろうともハチの巣をつついたかのような事態になっていたものだ。


 それが何もなかったからには災禍は起きていない。何よりその波動を感知できない。

 カランが目覚めたのは、単純に長い年月が経って、魔導が劣化し壊れたからだ。


 それならあとはカランの心づもり一つとなる。

 カランはもう誰かを積極的に助けるということはない。

 この件は、ただ成り行きに従っているだけで特に行動を起こそうとしたわけではない。


「そうですか……」


 そんなことを話しているうちに馬車は坂道を登り始め、日が暮れる。


「そろそろなので、ベールをかぶって黙っていてください」

「ああ。しかし、君一人で大丈夫なのかい?」

「どうせ、騎士か貴族の魔です。その程度ならば問題ありません。そもそも、アナタは手伝う気がないでしょう。なら気にしないでください」


 言われた通りだったので、肯定に頷いてカランはベールをかぶって黙ることにした。

 馬車が止まったのはそれから少ししてからで、カランは目の前に館が現れたことに気がついた。


(魔が領域を展開している)


 領域は魔が最も力を発揮し、特殊な効果を付与したりする場のことで、貴族以上の魔ならば誰でも作れる。

 そもそもこの領域が作れるからこそ貴族等級の魔なのだと言った方が良いだろう。


 そう考えればこれから相対する魔というのは貴族以上の等級だということが確定した。

 外からでも感じられる力の総量とも一致する。

 ジニアは警戒しつつ館の敷地へと馬車を進める。

 その瞬間、魔力が渦巻きカランは馬車の上ではなく、館の中へと移動させられた。


(これは、領域内での転移か)


 領域内では、こういう芸当も可能だ。

 大抵の場合は分断させて、移動させた先に罠や敵の大軍を配置しておいて、各個撃破したりなどするときに使ったりする。

 そして、カランが転移させられたのはどうやらどこかの広間のようであった。


(酷い匂いだ)


 何かが腐れたようなにおいがその広間には満ちていた。視線だけを動かして、その原因を探れば一目瞭然だった。

 この広間の建材はどこかあでおぼれ死んだらしい人間だったからだ。おびただしい数の水死体を組み合わせてこの広間は作り上げられている。

 それらが腐れてこのような酷い臭いをさせているようだ。


(そして、あれが、魔王を名乗る魔かな)


 奥に安置された椅子に一人の青年が座っていた。


「ほう、これはまた上物を寄越したものだな。てっきりガウラを持ってくると思っていたぞ」


 不遜な声色を広間に響かせて、魔は立ち上がる。


「だが良い、この魔王ペレンニス様を満足させるとは少しばかり見くびっていたようだ。これだから人間は揶揄い甲斐がある。だが、男を寄越すのは赦せんな」


 くすんだ青の髪に、薄い青の瞳の青白い肌をした青年がクックックと喉を鳴らして笑う。

 突風が吹き荒れ、カランのベールを飛ばす。


「ほう、男にしては良い顔をしている。この我以下ではあるがな」

「それは光栄だが、君が魔王だって? ただの貴族だろう」

「我を愚弄するか。ならば死ね」


 魔の強大な身体能力を用いてペレンニスが、カランの背後へと瞬時に移動しその後頭部めがけて拳を放つ。

 常人では見切ることすらできないだろうその一撃をカランは容易く躱してみせた。


「元々殺す気だったくせに」

「なに!」


 さらに連続して放たれる攻撃をカランは避けるか、あるいは技巧を駆使して受け流してみせた。

 大した力をペレンニスは感じないというのに、魔と人間、隔絶された力の差を持っているはずなのに、ペレンニスはカランに一撃も与えられなかった。

 装備もなく動きにくい花嫁衣裳を着ていてなお、貴族では元勇者のカランに一撃すら与えることはできないのだ。


「何者だ、貴様」

「何者でもない、わからないんだ、僕にも」

「ふざけおって、見せてやろう、我が君よりいただいた力を!」


 ペレンニスは懐から球体を取り出し握りつぶす。

 黒い水のようになった魔力が竜巻のようにペレンニスの周りを渦巻き、まき散らされた突風が灯りを消す。

 それが晴れた時、ペレンニスという存在は一変していた。


「アハハハハハ! 素晴らしい、素晴らしい力だ。流石はハイドランジア様、我が君!」


 先ほどまでは貴族等級程度の魔力総量しか持ち合わせていなかったペレンニスの魔力総量が、今では魔王に匹敵するほどに膨れ上がっていた。


(だが、ありえない。貴族が魔王になることはない。魔王とは生まれるものだ。素質ある素晴らしい者が魔に転じない限り、魔王にはならない)


 だが、事実、目の前でペレンニスは魔王となっていた。

 もしあらゆる魔が魔王になれるとでもいうのなら、神、人間、魔が保ってきた三界のバランスが崩れることになる。

 カランの背にうすら寒いものがよぎって行った。

 これから先、災禍などとは比べ物にならない大いなる厄災が巻き起こるかもしれないという予感が、魂を揺さぶる。


「では、死ね、愚かな人間よ」


 気がつくとカランの目の前に拳があった。


「――!」


 辛うじて防御したが次の瞬間には館の壁を突き破り、別の場所へ叩き込まれていた。


「確かにこの力、魔王だな」


 カランは拳を受けた腕を振りながら辺りを見渡す。

 吹き飛ばされた場所は教会のような場所だ。広々としているが、火が落とされていて暗く、空気が澱んでいる。


 まるで水中にいるかのようであった。

 流石に少しは気合いを入れなければならないと、息を吸おうとした時、視界の端を青い小鳥が通り過ぎていった。


「死ね」


 そこにペレンニスの追撃が来る。

 莫大な水がペレンニスの前へと集い濁流となってカランを襲う。


 だが、その汚濁は一滴たりともカランに降りかかることはなく、純白の花嫁衣裳の裾すら汚すことはなかった。

 ペレンニスは驚愕した。魔王と化した己の力をただの人間に止められるとは思っていなかったのだ。


「な、なんだ!? なぜ、我の力を消せる!」

「いや、僕はなにも」


 カランは何もしていない。

 その時、ちりんと金属音が響く。

 光すら通さぬ闇の中、何者かがカランの隣へと降り立っていた。


 闇を纏った何者かは、手をカランの前へ差し出す。

 すらりとした青白い手はカランの手と比べると小さく、女の手のようであった。


 この手を取るか、とらないか。そもそも、この場に乱入したということは相当な力の持ち主だ。

 顔を見ようとしても、光源がないのに加えてこの女が纏っている闇が深く、その顔を見ることはできない。

 そんな得体のしれない相手に従うのは愚策だと思うが、カランはどうにも悪意や邪気というものを感じなかった。


 しばらく逡巡はしたが、カランは手を伸ばしていた。

 その手に引かれるまま教会の赤い絨毯の上を出口に向かって歩いていく。

 流石に良いようにされるのはまずいかと思って、わざとゆっくり歩いてみたが、彼女は強く手を引くでもなく、何をするでもなくカランの歩調に合わせて歩くのみだった。


 それどころか、先ほど壁を突き破ってやって来たために散乱した瓦礫などが、カランを遮る前に取り除く動きすら見せていた。


(悪い人ではないのか? いや、そもそも人なのか? 魔か、あるいは神か。いや、神はこんなことできないか。だとしたら、彼女はいったい何者なんだ?)

「貴様は何者だと言っているぅ!」


 無視されて怒ったペレンニスの手から魔力波動が放たれる。

 だが、カランの隣の彼女はまるで揺るがず、そよ風にでも打たれたかのようですらあった。


 ちりんと、金属の音が鳴るばかりだ。

 横目で彼女を確認すれば黒い法衣に川の水のような赤い布がいくつかたなびいていて、それらを鎖の装飾が覆っているのが見えた。


 その装飾は精密で、事細かに魔導術式が刻んであることがわかった。

 意味まではカランにはわからないが、鎖の一つ一つに刻んであることからして、これを作った者は根気と忍耐力と器用さの権化だったのだろうと思った。


「このぉ!」


 魔力や術式を用いて水の魔法を放ったとしても、この闇を纏う女には敵わないとわかったのだろう。

 ペレンニスは魔としての身体性能を駆使し、殴り殺すために拳を握って向かってくる。

 女がカランの身を案じるようにそっと前に出ると、空いている手を前に出す。

 ただそれだけでペレンニスの拳は受け止められた。


「馬鹿な!?」


 魔王と化したペレンニスの身体能力は、その魔力量の増大分、増加している。

 だというのに小枝のように細くしなやかな片手に受け止めて小動もしない。

 彼女の口元には、涼やかな笑みすら浮かんでいるようであった。


 しかし、これでは進めないと思ったのか、彼女はぽんと指先でペレンニスを弾く。

 何が起きるのかと身構えたが、あまりにも静かにそれは巻き起こったために、カランですらぽかんとしてしまった。

 ペレンニスは、彼女に指先で弾かれただけで音もなく消滅した。


 あれだけの魔力量を誇ったペレンニスを指先ひとつで消滅させた。こんなことは人間の業ではない。

 つまり彼女は人間ではない。

 神でないのならば、それはまぎれもなく魔だ。


 女はそれに満足したのか、再びカランの隣に立つと歩き始める。

 この行為を楽しんでいるさまは、童心を持った少女のようですらある。ただその歩みは、魔王級の力を持ったペレンニスですら邪魔できなかった。


 ならば、彼女は魔王なのだろうか。

 今のカランでは苦戦するかもしれない相手を赤子の手をひねるように倒して見せた彼女に、カラン興味を持った。

 いったいどのような人物なのだろうか。

 そんなことを考えている間に、教会の中から出る。


 すっかりと天には二つの瞳月がのぼっていて、月の女神の双子がサボらずに仕事をしている様が見て取れた。

 二つとも大きく丸く、光は何よりも強い。

 彼女が纏う闇すら払うのではないかと淡い期待をしていたが、どうやらそうはいかないらしい。

 彼女の尊顔を拝する前に、青い小鳥が御簾のように遮っている。

 それが羽ばたきと共に声をあげると、領域が消え失せ、彼女もまた何処かにさってしまった。

 手が離れる瞬間、名残惜しさを感じたのは気のせいだったのだろうか。


(何でもいいか。件の魔王は倒されたわけだし、僕がやるべきことは何もない)


 頭を振っていると向こうの方からジニアが走ってくる。


「大丈夫ですか、魔王は!」

「ああ、それなら問題ない。消滅したよ」

「アナタが?」

「いいや、青い鳥を連れた黒衣の女性が消滅させたよ」

「何ですって?」


 これまたジニアが信じられないという風にするものだから、カランも気になってあの女性について何か知っているのかと聞いてみた。


「知っているのか?」

「知らない方が驚きです。それは久遠血河ですよ」

「久遠血河?」

「七大魔王を知らないのですか?」

「知らない」

「説明します」


 ジニアが言うには、この世には現在、把握されているだけでも七人の魔王が存在しているのだという。

 そして、その中でも出会ってしまえば最後、絶対に生き残る者はいないとされている魔王がいると前置きされるのが、先ほど彼が言った久遠血河と呼び表わされる魔王。


「それが久遠血河『カメリア・イモーテル』最悪の魔王です。かつては幸福を呼ぶとされていた青い鳥も、彼女が連れ歩くことから今や不幸を運ぶ凶兆となっています」

「あんなに綺麗な鳥なのに、そうなのか」

「よく無事でしたね」

「まあ、僕なんて相手にしても魔王にとっては何の得もないからね」


 それをいうのならカランを助けるのも何の得にならない。

 久遠血河はなぜ、カランを助けたのだろうか。


「考えても仕方ない。とりあえず、僕は行くよ」

「は? 帰らないのですか」

「ああ、僕は何もしていないし、これ以上何かするつもりもない。どこかの山にでも籠って静かに暮らそうと思う」


 ジニアは何かを言いかけていたが、しばらく待っても何も言わず、最終的にはそうですかの一言だけ呟いて溜息を吐いた。


「…………そうですか」

「馬車とこの服はもらっていくから、適当に魔王にやられたとでも言っておいてくれ」

「持ち逃げですか?」

「借りるだけだよ。それに十分なお金なら既に渡してある」


 盗賊から抜き取ったお金は全て村に置いてきてある。

 この服と馬車と馬を新しくしてもおつりがくるはずだとカランは思っている。

 足りなかったとしたら、人を生贄にしようとした分の慰謝料だと思ってもらうことにした。


「わかりました。それなりに言っておきます」

「助かる。では、また会うことがあれば、といってももう会うことはないかもしれないが」

「会いますよ、オレはここにいるのですから」

「そうだね。中天地にいるのなら、いつかまた巡り合うこともあるか。では、また」


 そう言い残してカランは馬車を出発させた。

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