第7話
・・・どうしてこうなった?
目の前で、たぶんこのBランクダンジョンのダンジョンマスターであろう彼女が、地面に頭をこすり
つけるようにして土下座している。
そしてほぼほぼ命乞いのような言葉の羅列が彼女の口から聞こえ出てくるのは、何か
幻聴の類であろうか?
「どうかダンジョン吸収だけは勘弁してくださいぃ~!
私で出来ることであれば、それ以外でしたらなんでもしますのでぇ~!」
・・・どうしてこうなったのだろう?
「いやいやいや、顔を上げてくれ・・・。
それに、このダンジョンをどうこうしようという気は、いまの俺には無い。
ただ、どんな感じなのか見に来ただけだ」
顔を少しだけ上げて、上目遣いに見てくる彼女は、まだ幼さの残る少女であった。
年の頃は、たぶん14歳とかそこらであろうから、出会った頃のマリアよりもずっと若いハズだ。
菫色をした髪がさらさらと揺れている。
じろじろと見過ぎただろうか、なんとなく目が合った気がする。
「・・・ハッ!?
わ、私の身体であれば、好きにしてもらっても・・・」
勘違いしてとんでもないことを口に出してくるが、神の使徒にはそういう欲求は無い。
「悪いがまったく興味が無い」
一言の元に切って捨てると、ガーンというショックを受けたような顔をしている。
「ガーンッ!?」
それ、口にも出すのか。
ふむ、つまり彼女は顔に出やすいタイプなのかもしれない。
そういう意味では無いのだが、釈明するにもいろいろ面倒くさいことになりそうな気がしたので、
否定するのはやめておく。
「俺の名は霧形 藤次だ。
何はともあれ、まずお互い呼び方が分からないと不便だろう。
あんたの名前を教えてもらっても良いか?」
まず礼儀として自分から名乗る。
そして彼女の名前を聞いたのだが、しばらく悩んでいるような素振りをしたあと、
覚悟を決めたように頷いて、彼女は恐る恐るといった感じでゆっくりと口を開く。
「・・・みね、ふじ子と言います」
うん、間違いなく偽名だ。
鑑定スキルなどを使う必要が無いくらい偽名だと思う。
けど、本名を隠すくらいの警戒心はあると前向きに考えることにする。
「了解した。じゃあ俺のことは、適当にゴエモンとでも呼んでくれ。
ふじこちゃんは、ここのダンジョンを作ってどれくらいになるんだ?」
なんか真面目に会話するのが、少し面倒くさくなってきた。
相手がそうきたら、まぁこちらも適当で良いだろう。
本名を知られて被るデメリットはこちらには無い。
「ゴエモンより、ジゲンの方がカッコいいと思います!」
あぁ? おい、いまなんつった?
「ひぃぇっ!?
い、いえ、ゴエモンもカッコいいと思いますです、ハイッ!」
少し怖い顔をして睨んでやると、ふじ子は現状を思い出したかのようにペコペコと下手に出始めた。
「で、どれくらいになんの?」
なんかコイツと真面目に会話するのがとてもとても面倒くさくなった藤次は、ちょっと
上から目線で怖めの先輩っぽく威圧を交えながら話すことにする。
「先月15歳になって、それでダンジョンマスターになったので、1ヶ月程度です、ハイ」
「へぇ、1ヶ月でBランクなのか、ふじ子ちゃんは才能があるんだなぁ。
ふーん、ダンジョン吸収、ダンジョン吸収ねぇ」
言葉尻に、意味もなくダンジョン吸収という言葉を口にする。
ふじ子ちゃんは褒めると付け上がるタイプだというのはよく分かったので、ちゃんと危機感も
忘れない様にしてもらおう。
褒められて鼻高々になりかけたところからの、顔色が急に真っ青になる顔芸を眺めながら、
さて、どうやって相手を付け上がらせないように、こちらの相談を持ち掛けるかを藤次は
考え始めるのだった。
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