自信
「やぁ水瀬さん」
「やぁ、じゃないよ!ストーカー!変態!」
恐ろしい言われよう。悲しい。
「宇月ちゃんを傷付けたら……ボ、ボクが、許さないから!」
「あのー……水瀬ちゃん?」
「宇月ちゃん、大丈夫!?」
かがみんが物凄い勢いで、まどかに思いっきり抱きつく。
「わわ、み、みな、みみ……」
まどかが顔を真っ赤にして動揺する。自分で抱き付きにいくクセに、やられると弱いのだ。
かがみんは抱き付いたまま右人差し指をピッ、と僕に指差す。
「狩場くん!宇月ちゃん、怖くてこんなに震えてるんだよ!?
女の子にモテないからって、コソコソするのはダメだよ!」
いや、恥ずかしくて震えてるだけだと思います。
「コソコソしてないよ?ってかストーカーじゃないし」
「じゃあ、なんで天音ちゃんの住所知ってたの!?」
「それは……」
無意識の僕が言い淀んでいる。ゲームの事を言っちゃいけない事だけは分かっているらしい。
「えっとー……。ごめん、言えないんだよねぇ」
「狩場くん。怒らないから話してみて?」
「じゃあねー……」
なんかポケーっとした受け答えしてるな。
しかし、この後。
僕は、とんでもない事を口にしていた。
「明日の朝、一緒に学校に行きながら話すよ!」
……っはああぁーーーーー!?!?!?
え、なに、この後かがみんに全部話すってこと!?
いやいやいや、なに勝手に決めてんの!!
「なんで明日なの?いま話せばいいじゃん。
言い訳を考える時間ってこと?」
「違う違う!話すと長くなるから、中途半端になっちゃうと思って!」
「ふーん……」
かがみん、もっと問い詰めろ!あ、やっぱボロ出るから問い詰めちゃダメ!でも朝からいきなり話すとか無理だしもおぉおーーー!!!
「わかった。1回だけ、信じてあげる」
「ありがとう!明日の僕も喜ぶよ!」
「は……?」
貴様この野郎幸太郎アホかクソが幸太郎。
「み、みみ、み……」
「宇月ちゃん、どしたの?怖いねぇ、狩場くん怖いねぇ……」
かがみんがまどかを抱きしめたまま、頭を優しく撫でている。なんという美しき姿。かがみん&まどか推し大歓喜。……じゃなくて!
「ふぁー……♡」
あ、まどかが壊れてる。ホントやられると弱いなぁ。……ってさっきの言葉!訂正して!
「とりあえず安心して。僕、ストーカーじゃないから!」
「それは明日、ちゃんと聞くから。
納得できなかったら、学校中巻き込んじゃうんだからね!」
「任せて!全部ちゃんと話すから!」
あーあ、もうめちゃくちゃだよ。
ストーカー扱いされてる中で、ゲームの事をかがみんに話す。
僕、頭バグってんの?
絶対信じてもらえる訳ないじゃん……。
かがみんは最後にまどかをギュッと強く抱きしめ、教室の外へと去っていった。どこに行ったかはわからない。
そして、まどかは両足を横に折り曲げる、いわゆる女の子座りで床にペタンと座り込んでいた。
「宇月さん、大丈夫?」
涙目で顔を真っ赤にするまどかに、僕は両膝に手を付いて話しかけた。
「ハァ……ハァ……」
「大丈夫?顔赤いよ?」
「むり……むりぃ……」
まどかは自分を抱きしめるような格好で、斜め下を見ている。
「え?なにが?」
「水瀬しぇんぱぁい……ハァ……ハァ……♡」
「宇月さん、変な顔してる。嬉しかったの?」
「ヒャハ……水瀬しぇんぱぁい……♡」
口をだらしなく開け、目はトロンとしており、若干白目を剥いているように見える。人間、ニヤケすぎると顔面が崩壊するのかもしれない。
「狩場氏、本当によかったのか……?」
加藤氏が心配そうに僕を見る。
「うん。明日の僕がなんとかするでしょ」
もう何も言わない。何も思わない。
「それなら良いのだが……」
「かなり不安ではあるな……」
「本人が言うのだから信じるしかないな……」
田中氏と渡辺氏も心配そうにしている。僕の為にそんな顔しないで。
「心配しなくていいよ!」
僕は、とびっきりの笑顔でこう言った。
「だって僕、この世界で簡単に無双できるぐらい、色んな知識があるんだもん!」
……あぁ、そうだったのか。
そういうことだったのか。
無意識の僕がこんなに攻めているのは、絶対的な自信があるからなんだ。
この世界で、簡単に無双できる。
そんな軽々しく、よく言えたもんだな。
でも、信じてるんだ。
無意識の僕が、自分自身を心の底から信じてるんだ。
無意識の僕が自分を信じてるのに、意識のある僕が自分を信じないでどうする。
ムカつく僕だけど、少し臆病になっていたと気付かされた。
自信がありすぎるのも問題だけど、いずれにせよ自分で決めた事だ。
しょうがないな、無意識の僕。
宣言通り無双するから、もう少し時間ちょうだい。




