助け
──目を覚まして、カーテンを開ける。雲一つない青空で、まさに快晴といった感じだ。
時刻はまだ6時30分。学校へ向かうには随分と早い。早速、黒い日記を開く。
ビックリした。
4ページ使って書いてくれている。
文章を順に追いながら、知らないのに思い出す、という不思議な作業を行いながら、僕の記憶と照らし合わせていく。
──火曜日。
僕はいつもより30分早く家を出て、正門でまどかを待ち構えようとしていた。またストーカーっぽい事してるな。
間も無く正門へ到着しようか、という時。
なんと、まどかが先に待ち構えていた。
「狩場先輩、おはようございます!」
とびっきり笑顔のまどかが、僕に挨拶をする。
「あ、宇月さん、おはよう!めっちゃ早いね!」
「まぁねー♪」
「早速なんだけどさ、昨日の僕が今までの事を全部話していいって言ってたんだけど、一緒に話してくれない?」
いやいやいや早い早い早い!先走りすぎでしょ!
「え……?」
まどかの表情が、一気に緊張する。
「へ?知らないの?」
「や、そうじゃなくて……誰に?」
「なんかねー、親衛隊のみんなにだって」
「へー、そうなんだ……」
あーあ、会話おかしくなった。焦りすぎだよ、僕。
「じゃあ、私と一緒にみんなが来るの待ちましょうか」
「そうだね!ここで待ってればいい?」
「えーっと……教室でいいかも?」
「じゃあ行こっか!」
積極的なのはいいけど、なんかムカつく僕だな。なんだろう、これ。
そのまま二人で教室へ移動する。案の定、教室には一番乗りだ。
「ねぇねぇ、僕ヤバくない?」
みんなを待つ間、不意に僕が質問を投げかけた。
「いまストーカー扱いされてるじゃん?
普通に学校生活を過ごしたかったんだけど、どうすればいいと思う?」
「そうだなぁ……」
いい、いい。答えなくていいよ、まどか。シカトしろシカト。
「まずは、ストーカーだっていう誤解を晴らさないとですよね?
先輩は天音ちゃんが好き過ぎるだけで、襲おうとか考えてないと思うし……」
さらっと凄いこと言うね、この子。でも、真剣に考えてくれてありがとう。ホント申し訳ない。
「うん。襲おうとか思ってないよ。
じゃあ、天音さんに襲わないって直接言えばいいのか」
やめろバカ。
「先輩、それはやめた方がいいんじゃないでしょうか……。多分、天音ちゃん余計に怖がっちゃうと思いますよ?」
「え?なんで?襲わないって言った方が安心じゃない?」
「えっとですね……。いま、狩場先輩は天音ちゃんにストーカーだと思われてる訳ですよ」
「はいはい」
「そのストーカーが直接『襲わないよ』なんて言ってきたら、怖くないですか?
逆になんかされるかも、って思いません?」
「あー……確かに怖いかも」
「でしょ!?でしょでしょ!?私ってあったま良いー!」
ごめんなさい、僕がアホすぎるだけです。
まどか、無理させてごめん。今日、ちゃんと謝ります。
そんな会話をしていると、教室へぞくぞくとクラスメイトが登校してきた。
そして親衛隊のみんなが、わりと早めに教室へ入ってきた。
「あ、親衛隊のみんな!」
僕が3人に声を掛ける。
「狩場氏、おはようございます!」
「昨日はどうでしたか?大成功でしたか?」
「ことにゃん様とラブラブできましたか?」
3人がキラキラとした目で僕を見ている。
「あー、ごめん。ストーカー扱いされた」
「「「な、なんだってー!?」」」
わー、息ぴったり。そりゃ驚くよね。
「それでね、僕、昨日までの僕じゃないの」
「う、生まれ変わったという事か?」
「ううん。そうじゃなくてね、別の人なの」
「狩場氏、何を言っているのだ……」
「ことにゃん様にフラれたショックでおかしくなってしまわれたか……」
「安心して下され。何があったにしても、我々は狩場氏の味方ですぞ……」
優しい。みんな優しすぎる。もう大好き。
「みんな、私の方から話してもいい?」
「う、宇月氏。な、何を、話されるので?」
加藤氏が若干テンパっている。そっか、僕とまどかの関係知らないのか。
「ちゃんと信じてほしいんだけど……ここにいる狩場くんと、昨日の狩場くんって、本当に違う人なの」
「……え?」
「一体何を……?」
「わ、わかりやすく説明を……」
そこから、まどかは事細かに僕の事を話してくれた。
時折、無意識の僕が余計な横槍を入れるが、まどかは上手く昇華させて、そこから話をわかりやすくまとめ上げた。天才かよ。
「……それは全て、本当の話なのだな?」
「うん。ふざけてる訳じゃなくて、本当に」
「僕もよくわかんないけど、色々知ってるからホントみたい」
「なるほどですな……」
「狩場氏が異世界人だったとは……」
「ラノベやアニメの話が現実に起こるとは……」
3人が難しい顔をする。でも、受け入れようとしてくれている気はする。
「それでね、昨日の帰りにあった事件なんだけど……」
「せっかくだから僕から話すよ。
ゲームの知識使って、天音さんの家に行っちゃったんだ。
それを西園寺くんが見てて、写真撮られて、その写真を天音さんに見せて、人生終了!みたいな感じ」
「……ちょっと補足すると、そこの廊下で事件が起こったのね。
関係ない生徒がたくさんいて、そこにいたみんなの前で『こいつはストーカーだー!』って感じで、見せしめにされちゃったの」
「狩場氏、だいぶやらかしましたな……」
「このクラスの者もいたでしょうな……」
「早めに噂を鎮圧せねば……」
僕のために真剣に考えてくれている。
どうしよう、お菓子とか持っていって昼休憩にみんなにあげようかな。
「とりあえず、私から天音ちゃんに話してみる。
先輩、天音ちゃんにはゲームのこと言っちゃいけないんだよね?」
「うん。そうみたい」
「ありがと、それだけわかれば大丈夫!」
キーンコーンカーンコーン……。
「やば、いつの間にこんな時間!」
「宇月氏、色々と話して下さり感謝する!」
「また後ほど!」
「午前休憩に再度話し合いを!」
各自バラバラと席へ着き、少し遅れて入ってきた明智先生の挨拶が始まった。
僕がふと、左右を見る
右手には、目を合わせようとしない、ことにゃん。
左手には、不敵な笑みを浮かべる、輝樹。




