誓い
「へ……?」
この世界の、住人じゃない?
確かにそうだけど。
そうだけど、え?
「あの、どういう意味で……」
「ここにはね、基本的に決まった連中しか来ないんだよ。
いけ好かない兄ちゃんと若い女子が数人。あとは近所の爺さん婆さんばっかりさね。
それだけじゃなく、お前さんはこの世界の『システム』を知ったような口の利き方をしやがる。
初めてにしちゃ、ちょっと違和感あるがね」
占いばあさんからだいぶメタい話が出てきた。この婆さん、こんな感じだったっけ……?
「それで、実際のところ、どうなんだい」
「はい……。えっと……」
どうしよう。素直に答えるべきか。言ったところで説明するのめんどくさいし。
「嫌ならいいよ、言わなくて。それが答えだろ?」
「いや、その……ごめんなさい」
「かまわんよ。理由はともかく、この世界で生きていくんだろ?」
「……はい。そうです」
「だったら、良いものをあげよう。お前さんがいま、一番欲しいものだと思うのだがね」
そういうと、占いばあさんは懐からピンク色のチケットのような紙を取り出した。
「あ、それ……!」
「福引券だ。全部で10枚ある。好きに使うといい」
「ほんとにいいんですか!?」
「アタシが持ってても仕方がないからね」
ミラプリでは行動できる日にちというのが決まっている。週前半・週後半・休日の3回で1週間。
そして毎週休日になると、ショッピングセンターで福引が行われるのだ。
ハートの最大値を1つ増やせるアイテムやキャラクターの友好度を上昇させるアイテム等、ゲームを有利に進めるためのアイテムをゲットすることができる。
もちろんハズレもあるが、キャッシュバックという名目で50円貰えるという大変に熱いイベントなのである。
通常この福引券を得るには、ショッピングセンターで買い物をしなければならない。
お金が手に入りにくいゲームなので、週1枚ゲットできれば御の字だ。
それを10枚。一気に3ヵ月分ゲットしたと言っても過言ではない。
「ありがとうございます!ほんとにほんとに、ありがとうございます!」
「かまわんよ。また来るんだろう?」
「はい、来ます!週に3回は来ます!」
「いつでも、待っておるぞ」
占いばあさんは優しく微笑んだ。良かった。よくわかんないけど仲良くなれた。
僕は満面の笑みで占いの館を後にした。
これだけ福引券があれば、福引でしか手に入らない最強のチートアイテム、『モッチの財布』を簡単に手に入れることができる。
ミラプリにはベスト・グッド・ノーマル・バッドの4種類のエンディングが設定されており、
モッチの財布をプレゼントすると、その時の友好度に関係なく、グッドエンディング以上のルートへ突入できてしまうのだ。
ちなみに、友好度は数値化されていて、例の黒い日記で確認できる。
ベストエンディングはMAXの友好度300。グッドエンディングは友好度200以上。
つまり、モッチの財布を使用すると、対象キャラクターの現在の友好度にプラス200されるのだ。
いかにヌルゲーになるのかがお分かり頂けると思う。
しかし、これを手に入れるには今月末まで毎回欠かさず……つまり、週3回は占いの館へ行かなければいけない。
普通に福引をしてもモッチの財布は手に入らないし、時期を逃すと一生手に入らない。
ゲットするのは至難の技だが、僕が今できる最善策は、もはやこれしかない。
正直に言うと、この後の学校でことにゃんと仲良くなれる自信がないのだ。
そもそも、モブキャラである僕がことにゃんと話せる保証は無い。
でもモッチの財布さえあれば、攻略対象キャラクターは無条件で受け取ってくれる。
受け取りさえすれば、あとはいつも通りに会話を進めていくだけだ。
そうなればベストエンディングなんてチョロいもんである。
それにしても──。
なぜ、こんな事になっているのか。
はっきり言って、これはゲームの世界に『転生』したのではなく『転移』しただけだ。
僕が極めたミラクルプリンセスの世界に『転生』していたら、間違いなく女の子からモテモテになっていた。
でも僕は、見た目もカッコ悪くて、性格もそんなに良くなくて、女の子ともあまり喋った事がなくて……。
僕は、この世界で無双できるのだろうか。
今は不安だけど、きっと大丈夫だと思う。
……そう思うしかない。
誰がこの世界に連れて来たのか分からないけど、こうなりゃ意地だ。
僕は、この極めたミラクルプリンセスの世界で、絶対にモテモテになってみせる。




