七話
ちょいと時系列が混ざります。
「方法がないわけじゃない」
ファラが突然、オレに希望の光を与えた。
「短期間で道具に頼らず、自分自身を強化する方法だ…………が、あまりオススメは出来ない」
「何でもする!強くなるなら何でも!だから頼むファラ、オレにその方法を教えてぐだざい゛!?」
語尾が濁音なのはファラに蹴り倒されたからだ。
「気軽に何でもというな。お前に出来る事はたかがしれてる」
うぅ、一言一言がキツイなぁ。
「……非常に気が進まないが…その方法は目的地に着くまでには教えてあげる。とりあえずはアタシの修行をクリアしてからね。それが最低条件。……一ヶ月分の内容がまだあと三割残ってるから、それが終わってようやく二ヶ月目の内容だ。さっさと遅れを取り返せよ」
「分かった。クリアしたらすぐに教えてくれるんだな!」
「はいはい頑張って。」
「しゃあー!やるぞー!!」
オレがここまで強さを求める理由。
それは時を少しばかりさかのぼる。
ファラと初めて出会った、今日から丁度一ヶ月前に。
角アリから助けてもらったあの日から、オレは更なる力を求める事になる。
血が飛び散る。
地面に転がっているのはオレの死体ではなく死の刃、角アリの片腕。
それに呆気にとられているのはオレだけではない。
角アリすらも現状を把握しきれていない。
だがオレよりは早く乱入者である存在を見つけている。
黄色の血走った四つ目が背後を振り返る。
そこに立っていたのは紅い髪の女剣使。
手にはやや短めの…髪と同じ色の紅い剣。
ただオレのと違って刀身のみではなく、女の持つ剣は握り部分も含め全てが紅い。
そして装備は身軽さを追求したのかクロース…ただの布の服と防寒用の白い外套だけだった。
その女剣使は元々が気が強いのか力強い意思の込もった青い目が角アリを睨んでいる。
両の腕を失ったにも関わらず、尚も戦意溢れる角アリが乱入者を真っ直ぐ睨み返し……襲いかかる!
攻撃手段などもはや牙くらいしかないはずなのに、躊躇いなく角アリは女剣使の間合いに踏み込む。
短めの剣とはいえ明らかに女剣使がリーチ分有利だ。
勝敗は決している。
あんな状態では角アリも剣技を使えまいし。
だがそれはオレの一方的な思い込みにしか過ぎなかったと思い知らされる。
角アリが予想だにしない動きをする。
体格のわりに細いその足を女剣使に繰り出したのだ。
残る一本の足ではあの体格を支えきれない。
すぐにバランスを崩す。
そして予想通り、角アリのバランスが崩れ…かけたが持ち直す。
どうやって!?
それは本当に一瞬の出来事。
角アリの足が刃へと変形、地面に一本の足を深々と突き立てバランスを維持。
そして残る一本の足も死の刃へと変え、女剣使を斬り殺さんとした……が女剣使はそれを読んでいた。
苦もなくその刃を剣で弾く。
だが角アリの執念は恐ろしく、更なる奥の手を繰り出してきた。
女剣使は角アリの正面だからこそ死角の…オレから見て目の前で角アリの後ろ姿を目にしていたからこそ気付いけた切り札が女剣使に襲いかかる!
角アリはその尻尾すら刃へと変形させ、大きく迂回させる様に…攻撃を繰り出した足とは逆をついて尻尾の刃で女剣使を突き殺さんとした。
視界、意識の両方を一方に集中させつつ、出来た死角からの奇襲!
やられた!!
オレは女剣使の敗北を確信した。
そして角アリの尻尾がその軽装な細い体を貫く!
……仇はとる。
仕留めたと油断した角アリは無防備だ。一気に接近せんとした時、角アリの様子がおかしい事に気付く。
あれは…仕留めたと油断しているより、困惑している?
そして一つの考えに行き当たった。
「まさか、幻影?」
角アリもオレと同じ考えに行きついたのだろう、何らかの動きをせんとしたが……すでに遅かった。
女剣使は角アリの真横へといつの間にか移動しており、その腕が霞む速度で剣を一閃!
なすすべもなく、角アリの首が胴体より永遠の別れを遂げた。
「すげぇ」
そんなありふれた称賛しか口に出来ない。
いったいあの女剣使はいつの間に幻惑剣技を発動したんだ?
いつ実体と幻影が入れ替わった?
角アリの一撃目を防いだ時はまだ実体だったはず。
それから尻尾での二撃目までにそんな時間差はなかったはず……だというのに。
女剣使が剣の魔素を解き放ち武装を解除した。
不意にここで互いの目と目が合う。
互いに目で『何でここに?』と疑問をぶつける。
口を先に開いたのは女剣使からだ。
「この国の剣使?何で一人でこんな辺鄙な所にいるの?兵隊連中は普段から徒党を組んで行動してるくせに。……もしかして脱走兵?」
おいおい、命の恩人とは言え失礼発言連発だな。
「脱走兵じゃない。剣精の討伐に来たんだ。一応、これでも中隊の副隊長だ」
「ふぅん」
心底どうでもよさそうな反応だな、おい。
「で、他のメンバーは?」
「……恐らくオレともう一人の副隊長を除いて全滅だ」
「そう、お気の毒。それとも幸運だったと祝うべきかな?」
「君は誰だ?何でこんな所にいる?」
女剣使のあまりにも無神経な言葉や態度に苛立ちながらも、何とか冷静さを装って身分を問いかける。
命の恩人でなければ胸ぐらを掴んでいただろう。
余りにも無遠慮な発言に嫌味な美人という印象が強く刻みこまれる。
「アタシ?ただの傭兵。一応、傭兵ギルドには属しているけど基本はフリーで活動してる」
「名前は?」
「そういうアンタは?」
聞く前に名乗れってか?
「カインだ」
「ファラ」
互いに事務的な自己紹介。
第一印象はかなり悪い。
「…ファラは何でここに?まさか道に迷ったとかではないだろ?ここら辺は剣精の大群が現れて立ち入り危険地帯に指定されたはずだが」
「依頼でね。しかもギルドから直々の。角アリの目撃情報があったからその調査」
「一人でか?」
「二人に見える?」
信じられん。
角アリを調査するだけとはいえ一人で行動するなんて…正気か?
「その顔は信じてないね」
「…信じろって方が難しい。調査だけとはいえ角アリが一匹存在すればその周りには百を超す剣精が付き従っているんだぞ。…………今回だって角アリがいると分かっていたら一個大隊の剣使部隊が動員されたはずだ。」
「確かに調査が依頼ではあるけど、この依頼の難易度は七だ。ちなみに教えておくと傭兵ギルドの最高難易度になる。」
聞いた事はある。
傭兵ギルドは難易度を一から七までの七段階でランク分けしていると。
確かに七は最高難易度に設定されている。
でも確か…
「七の依頼を受けられるって事は高位剣使か?」
「何か文句でも?」
「い、いやならあの強さも納得できると思ってな」
「さすがにこの依頼を達成できるのはギルドでもアタシを含めて数人しかいない。けれど…この国にだって一人で剣使一個大隊に匹敵する剣使はいるだろ?それも傭兵ギルドに比べて大量に」
確かに。
この国には少なくとも十人以上は化物じみた剣使がいたな。
低位剣使はB級からD級まで。高位剣使がS級とA級になります。化物じみた連中は大半は高位剣使って設定でござる。




