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剣と龍と神  作者: カナメ
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六十話

数ヶ月ぶりに主人公のターンだ!

傭兵ギルド……『剣精』退治や街道警備、戦争など幅広く対応する荒事専門の機関。

創立、運営はあくまで個人でありそこに一切の国は関わりをもたない。

ゆえにどの国とも対等であり、中立をつらぬく。



保有戦力は皆無だが、所属する剣使の数はどの国よりも多く、ロードギア全体に強い影響力を持つ。 ちなみに傭兵ギルド創設者の名はセト。 最初の『剣神』にして『直刃』その人である。










「『直刃』が傭兵ギルドの創設者だったなんて初めて知ったよ」



「知らなくても無理はありません。あまり世間に認知されていない事柄ですから」



傭兵ギルド本部前に、オレとルシスは並んで五階建ての建物を見上げる。

バルト大陸から少しばかり離れた孤島……傭兵ギルドの本部は辺鄙な場所にあった。

好き好んでこんな場所に来たのではない。

だが、ここに来なくては先に進めないのだから仕方ないのだ。

理由?

もちろんファラを助けるためだ。



「現状『直刃』にしか頼めないよな、『鬼界』へのゲートを開いてくれなんて」



「はい。三人の『剣神』とは敵対中ですし、一国の女王である『神壊』に会える確率は限りなく低いです。残るは『直刃』のみです」



「それも確率で言うと低そうだが、な」



何せ人前にはまったく姿を見せないと聞いている。

会えたとしても側近である『七欲』メンバーのみ。

一国のトップに会うよりは確かにハードルは低いだろう……だがそれでも『直刃』セトに会うのは難しいだろう。

難しいが、会わなくてはならない。

例えどのような手段を使ってでも……。



「……とりあえず中に入りますか?マスターの傭兵登録もしておきたいですし」



「そうだな、行こう。案内頼むよ、ルシス」



「はい、任せて下さい」



ルシスが先導する形でオレは傭兵ギルド本部へと足を踏み入れる。

中に入ると広々とした室内には机が一つのみ。

そこに座っているのはどう見ても十四、五才ほどの少女のみ。

他に係員らしき人物は影も形もない。

係員だけではない、依頼する客や、依頼を受ける傭兵の姿すら皆無。

ここにはオレとルシス、そして受け付け係?の少女の三人のみだった。

こんな雰囲気に戸惑っていたのはしかしこの場にはオレだけのようだ。

現にルシスは何も気にすることなく少女の元へと歩いている。

少女も特に驚いた様子は見受けられない。



「ようこそ、傭兵ギルド本部へ。本日は何のご用でこちらに?」



涼しい顔でルシスに用件を伺う少女の落ち着き方が尋常じゃないと感じるのはオレだけか?

一人勝手に少女に対して若干の畏怖を感じながらもルシスが淡々と応じる。



「セト様にお会いしたい、ですか?」



幾つかのやり取りで初めて少女の表情に変化があった。

怪訝そうに聞き返す少女に、ルシスは構うことなく平常だ。



「ええ、事前の約束はないけど取り次いで。ルシスが呼んでると言えば何らかの返事くらいはくれる仲だから」



「……承知しました、ここでお待ちください」



プロ意識が高いのか、それ以上の問答もなく少女が席を立つ。

おいおい、唯一の受け付けが中座していいのかと思ったがどうやら代わりの人材はいないらしい。

少女は躊躇うそぶりすらなく奥の扉へと去っていった。



「……オレ達以外に誰か来たらどうするんだ?」



思わず疑問を口にしたオレに、ルシスが答えてくれた。

曰く、ここに客が来るのは非常に稀で受け付けは一人で事足りるらしい。



「天下に名高い傭兵ギルド本部なのに、普段から常に閉店状態か」



「場所が場所ですからね」



「確かに」



その一言に尽きるな。

そうこうしている間に少女が戻ってきた。

さて、返答やいかに?



「お待たせしました。セト様がお会いするとの事です」



おお!?

意外に簡単に会えるもんだなぁ。

やっぱりルシスが『直刃』と直接面識があったのが最大の要因か?

何にしても助かった。

これで無駄足にはならずに済んだし、手荒い手段をとる必要もなくなった。

だがそう思うには気が早すぎたようだ。 少女の次の言葉に思わずオレは天を仰いだ。



「ただし、『七欲』の二人を倒せた場合のみとする。客人が二人ならこちらも二人で歓待するとの事です」



「……まぁそうなるとは予想してました」



予想してたのかよ、ルシスさん。



「どうしますかマスター?性格と人格…ともに破綻している男ですが、約束を破るような狭量な男でもありません。『七欲』の二人を倒せばまず間違いなく会えるかと」



……どうするってそりゃあもう答えは一つだろ。



「ご招待をお受けするとしよう。内容が少々血なまぐさいが合法的に会えるなら喜んで」



快諾しますとも。

それはもう喜び勇んでスキップまじりに、な。



「お二人の意思はイエスと受け止めてよろしいですか?」



少女が念を押すように問う。

オレとルシスは頷きで返す。



「承知しました、ならば早速戦闘のご準備を願います。まずは『七欲』の一人である私、フィフラがお相手します。どちらが戦われるか、ご相談下さい」



…………え?

少女…フィフラが『七欲』?

ただの受け付けじゃなかったのかよ!?



「その前にマスターの傭兵登録をしたいんだけどいいか?その間にどちらが相手するかも決めておく」



「承知しました、手続きをしておきます」



今から戦わんとする雰囲気を、しかしルシスは平然とぶち壊す。

いやそんな登録手続きなんて後でもいいんじゃないのか?



「ではこちらの用紙にご記入をお願いします、答えられる範囲で、出来るだけ空欄は埋めて下さい」



あっ、はい。

……………………本当にこれから戦うの?

戦う雰囲気じゃないよ?

そう切実に感じながらオレは空欄を埋めていく。



「わからない点がありましたその都度お聞き下さい」



「あっ、はい」



ご丁寧にどうも。 …………調子狂うな~。

これからファラ救出編開始です。

道のりは長いけど飽きずに、諦めずについてきてね~

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