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剣と龍と神  作者: カナメ
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四十九話

あの二人なら心配はいらない。



そう思っていた。

いやもちろん今でも無事だと信じてますよ!

ただどうにもオレは予想以上に堪え性がなかったらしい。

ついに我慢出来ず、オレは二人を追いかけるようにアルブドル山脈に出発を決意。

言い訳するなら…うん、アレだ……何か居ても立ってもいられなかったからだ!よし、オレは行くぞ!

勝手に自己完結して山脈へと旅立つ。

それは二人が山脈へと向かった三日後の事だった…

























あれから六日間、山脈目指して歩いていたオレだったが少々……いやかなり面倒な事態に出くわした。

まさかの剣精による商隊襲撃である。

商隊を蹂躙せんと囲む剣精。対して戦う護衛の剣使。

状況は圧倒的に剣精が有利な……いや一方的な展開のようだ。

数からして剣精は五十以上はいる。

護衛は六人。

その内の四人と商人らしき死体が地面に倒れている。

流れ出てる血の量からしてすでに死んでいるだろう。

以前のオレならあの異常な剣精の数に躊躇った状況だが、数々の死線をくぐり抜けるとこの程度はさほどの修羅場ではない。

かと言って油断やおごりは死につながる。

慌てず冷静な対応こそが自分の命を守る。

さてこの場面での最善策は……



「一撃離脱。奇襲で混乱させて生き残りを回収、撤退だな」



目的をあえて口に出し、再確認。助ける義理はないがこのままやり過ごす理由も特にない。

強いていうなら成り行きか。

よし、一発デカイのをかまそう。

幸い近くにいい目眩ましになるモノもある。

オレはタイミングを見計らって魔素を展開、亡き商人の馬車目掛けて剣技を放つ。



「属性剣技、火落」



放った剣技は馬車に派手に着弾!

場は殺戮から火事場に早変わりした。

傍目から見ても異様な混沌さだ。

だが一方的な殺戮の状況打開にはこれくらいが丁度いい。



「今の内に逃げるぞ!」



呆けている護衛二人を叱咤し、正気に戻す。

剣精は見えない襲撃者に未だ吠えているが、このままのはずがない。

この混乱がおさまれば仕掛けたオレの命が危ないのだから。経過する一秒一秒すら惜しいので、オレは既に目星をつけた退路に疾走!

そこでまた改めて護衛二人に「こっちだ!」と先を促す。

ようやく現状を理解した二人はオレが誘導する方へと全力で走る。

そしてここにきて剣精の混乱がおさまり、状況を把握しつつあった。

周囲を忙しなく見渡している剣精が一体。

ふとオレと目が合う。



やばい!!?



バレてしまっては誤魔化しようがないので、すかさず目眩まし変わりに剣技を発動。

二、三発適当に発動し、オレも護衛達の後を追いかける。

少し遅れて剣精の耳障りな鳴き声が上がる。

どうやら怒り心頭で追撃してくる気満々だ。

噂通り数が多い。

これも剣鬼の影響か?



「ウワアアァ!!」



二人を促した先で男の悲鳴が上がる。

まさかこの一帯がすでに剣精のテリトリーか?

悲鳴の方へと急いで駆けつけたオレが目にしたのは剣精に胴体を刺し貫かれた護衛の一人。

そこには、まるで滝のように流れ落ちる血を気にもしない剣精が、男の死体となった肉の塊を持ち上げ地面に叩きつけた場面だった。

当たり前の事ではあるが、男の死体は声すら上げず、ただ肉が地面に叩きつけられた不快な音だけが妙に耳の奥底に響き、残った。



「ああぁ……いや……」



残った護衛の一人である黒髪の女がその惨状に腰を抜かしている。まずい、あのままだと女が殺される!

立ち塞がった剣精は運が良いのか一体のみ。

むしろアレを即座に片付けてここから離脱しないと囲まれてしまう!

剣精の視線が男の死体から生きた女へと移る。

オレはこの時点で動いていたので、次にオレへとその黄色い四つ眼が向けられる。

脅威はこちらの方が上だと判断したのだろう、さほど迷わず剣精もオレに量腕の刃を構える。

剣精が上段、下段の同時攻撃を仕掛けてくるが上段は回避、下段の斬撃は剣で防ぐ。

そしてがら空きとなったその胴体に左ストレートをおみまい!

人間離れした膂力により見事に風穴をあけた。



「ガァ……ギャア……」



数瞬、何が起きたかを理解出来てない剣精に、オレは容赦なくその首を刈り取り止めをさす。

それからすぐに腰を抜かした女の元へと歩み寄る。



「大丈夫か?」



「ひ、ひぅ!?」



あれ?

何故か怖がってる?だが今は理由を考えているヒマはない。



「あー…その、とにかくここから早く離れないと駄目だ。動けるか?」



オレの問いに女は首を横にふる。

まいったな……しょうがない。

オレとしては事情を説明してから行動したいところだが、今の状況がそれを許してくれない。

少々強引に女の手を取り、立たせる。

女の膝はまだ恐怖のせいか震えている。立ってるだけで精一杯か。



「ちょっと失礼するよ」



「へ?え?」



戸惑う女に構わず、お姫様抱っこして移動を開始。

突然の事に女の口からは「何で?どうして?」の疑問の言葉は尽きないが、下ろせとは一言も言わないのをいい事にオレは走り続けた。

肩に担ぐのも選択肢にはあったが…何か嫌がる女を連れ去る図になるのでそれは遠慮したいというか……うん、個人的な事情で却下しました。

女にとっては見ず知らずの男に担がれるなんて、どちらにしても嫌がるだろうが状況が状況だ。

後で真摯に謝る事で許してもらおう。



「あ、あの」



「うん?」



早くも危惧した事態に突入寸前か?



「あなたの……名前は?」



女の予想外の質問にオレは呆気にとられた。

死地からそう離れてもいないのに暢気に名前を聞く女の神経の図太さに。



「え、えっと……聞いてはいけなかったですか?」



「い、いやそんな事はない。オレの名前はカインだ」



別に隠してもないので正直に答える。

偽名を使う立場でも身分でもないし。



「カインさん……ですか。あ、私はラスといいます。あのですね…」



「話しは後だ。今は少しでもあの襲撃地点から離れないと。……舌をかむぞ」



「は、はひ」



……時すでに遅かった。

以後はラスと名乗った黒髪の女も静かにオレの腕におさまった。

さて、一旦町に戻るべきか?

思案しながら走り続ける。

だがどうやら奴等のテリトリーは予想よりもはるかに広大だったらしい。

一息ついて休息していた場所にも突然現れ、交戦を余儀なくされた。

ルシスが言ってた剣精二千がいよいよ真実味を増してきた。逃げるオレとラスの二人はしかし、思わぬ所で思わぬ人物達に助けられた。

見覚えのある騎士達の格好に、その身につける鎧に刻まれた紋章。

それはオレが騎士を辞めた国のモノ。

どうやら巡り巡った因縁は簡単には断ち切れないものらしい。



……しまったな。

女に本名を名乗るべきではなかった。

オレの身分は一応騎士だった。

助けてくれた連中も格好から推察するにあの騎士団所属だろう。

……行方不明扱い、もしくは戦死扱いされている事をただ願うばかりだ。

場合によっては敵前逃亡の罪で拘束されるかもしれないのだから。

ここでカインサイドは一時休止です。予定では三話分は出番なしです。カインが好きな人はごめんなさい。嫌いな人はヒャッハ~!と喜びの絶叫を上げて下さいさい。

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