四十一話
後悔しない人生などない!
『剣神』
それはロードギアにおいて絶対なる力を持つ存在。
その気になれば単独で国一つを滅ぼすと言われる存在だが、そのメンバー全員があまり権力というモノに固執はない。
だが刹那的な思考や快楽主義でも知られる『剣神』たちに関わりたくないというのは、各国の王達には周知の事。
故に『剣神』が自分達の国にいようが基本は干渉しない。
『剣神』とはある意味世界から隔絶された存在なのだ…
だから人々は恐れる。
だから人々は尊敬する。
その力を…
しかし、それをあまり気にもとめないように
「あの女が剣神か…人は見かけだけでは判断できんな」
あっけらかんとヴェルガードは納得している。
まるで大した事でもないように。
そんな反応など予想だにしてなかったトラードはしかしすぐに
「今更後悔しても遅い!」
強気に言い放つ。
まさに今すぐひれ伏せと言わんばかりに。だが…
「後悔ばかりさ、ワシの人生は。だから思うがままに生き、選択する。その後悔を自分の責任で処理する為にな。故に選択した、誰かの奴隷になるなど真っ平ご免だ」
相手が悪かったな。
隠れてなければ拍手したいくらい格好いい。
いやはや『剣神』が何だ?と言い切る人材は中々いないぞ。
「き、貴様正気か!?『剣神』レラフ様の…」
「ならば聞くが『剣神』こそが唯一正しいと?」
「当然だ!力、富、名声!その全てを得るは『剣神』!逆らうは神にツバするものと同じこと!」
いやいやそんな万能なもんじゃないんだが。
「下らん」
「な、なんだと!?」
「下らんと言った。『剣神』も所詮は人。一般人より異なる力を持っただけにすぎない人間……神などではない」
……人か。
確かに絶大な力を持とうが、死ぬ時は死ぬしな。
オレだって『剣神』になったが人を捨てたつもりはない。
神と同等など……それこそトラードって奴の勝手な思い込み、神聖視にすぎないのだから。
だがそんなヴェルガードの発言は主に対しての侮辱と受け取ったのだろう。
「撤回しろ!あの方こそ神だ!」
狂信は暴走し、暴力に訴える手段に変わった。
魔素が一ヶ所に集中している。
マズイな。
このままだと巻き込まれる可能性大だぞ。
「お主のはただの妄信だ」
それが最後の引き金になった。
「属性剣技、雷落殿」
いきなり術者を中心に五十メートルの範囲内で雷を連続で落とす剣技かよ!
当然、オレも範囲内!完全に巻き込まれた!
一定間隔で落ちる雷を紙一重で避ける、避ける、避ける。
周囲の家屋など関係なく破壊するので、尾行どころか隠れる事も出来ない。
「むっ誰だ?」
結果、見つかる。
オレをいち早く視認したのは、この場で一番余裕のある術者、トラードだ。
剣技を展開しているとはいえ、雷を避ける必要がないのだから当たり前だよな。
「誰でもいい、まとめて片付ける!」
オレなんてついで扱いだろうに、逃がす気はないと。
…おや?見覚えのある姿が。
「ん?ヌシは…」
向こうもオレに気付く。
何やってんだ、突撃バカ?
互いに不可解な顔になるが…今はそれどころじゃない。
この瞬間にも落ちる雷を回避しているのだから。
「若様、そろそろ限界なのですが!?」
オッサンは槍を避雷針がわりにして、この雷の雨をしのいでいる。
だが、ただの槍がこの威力の剣技に耐えきれるわけがない。すでに槍は一目みて分かる程にボロボロだ。
「この程度はピンチにもなるまい。いざとなれば奥の手を使え、ジイ」
「御意、限界までは粘ります」
だがあの主従二人にはまだ余裕がありそうだ。
まるでこの程度は死地にあらずと言わんばかりに。
「ちぃ、しぶとい!」
まだ一人も倒せない事実に、しびれをきらしたトラードが新たに魔素を展開!
攻め方を変えるか?
「属性剣技、雷轟」
二つの雷の塊が極大サイズでオレとヴェルガードに放たれる。
デカッ!
しかも速いし!!
ここから回避は不可!
なら防ぐのみ!
ファラ直伝の
「属性剣技、焔塞」
焔の城壁が極大の雷と激突!
直後の衝撃と閃光!
よし!
この手応えは完璧に防ぎきれたと確信!
ヴェルガードやオッサンは……無事だ。
立ち位置から推察してヴェルガードがオッサンを守ったか。
どう防いだかが気になるが。
「ば、ばかな!!?」
自身の剣技を両者共に防がれた事に対する驚愕……にしては大ゲサだな?
「きっ、斬っただと?ありえん、何の剣技を使った!?」
トラードが喚き散らす相手はヴェルガードだけ。
ちぇ、オレも防いだのに。
「衝破だ。お主だって使えるだろ?」
事も無げに告げるヴェルガードに、オレもその防ぎ方を耳にし驚嘆した。
衝破であの魔素量の雷をしのいだのか?
あの魔素量からトラードはA級相当の剣使のはず。
なのにそれを初歩の剣技で……
こいつすごいな。
ヴェルガードの実力に底が見えない。
「認めん、認めん、認めんぞ!」
トラードが狂ったように魔素を放出!
その目に宿る狂気はあらゆる憎悪をヴェルガードにのみ向けている。
「もはや貴様は殺す!」
主人たるレラフの命令など、すでに頭にはない。
トラードはその全力をもって剣技を発動せんとして……
剣に貫かれた。
某漫画にこんな言葉がありました。
尊敬は理解からもっとも遠い感情とか何とか。




