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剣と龍と神  作者: カナメ
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三十二話

ベタな展開です。

闘技都市、ゴルドー



または軽蔑の意味もかねて



《命を浪費する舞台》



と言われる、まさに命を削り、カネを得る事を堂々と売りにした都市だ。

そんな都市の治安は悪い。

強者のみが生き残る事を許された気風ゆえか、ケンカやらひったくりは日常茶飯事。殺しだって珍しくはない。

露店で商売している商人もイカツイ顔したオッサンばかり……正直、辟易へきえきしてる。

イカン、これじゃあ心が荒むだけだ。オレはオアシスを求め、視線を右後ろに向ける。



そこには紅の色をしたショートカットの美女。

気が強そうな目が周囲を牽制している。

そしてオレから見て左後ろには銀髪ロングのメガネ美女。

見る物すべてが珍しいのか、キョロキョロ周りを見渡している。その仕草一つ一つが可愛らしい。

あ~癒される。

ムサイ野郎で腐りかけた目には女神に見えるわ、マジで!

だがそのせいでオレ達はある意味目立っていた。

美女二人を引き連れているオレに……殺意盛りだくさんの視線が突き刺さる。



ここがふつ~うの治安の街中なら別にオレは気にしない。

むしろ二人との仲の良さを他の野郎共に見せびらかすだろう…だがここでそんな事をすれば厄介事しか飛び込んでこない。

だからオレからは何もしない。

オレからは何も……



「マスター、あれって何ですか?」



ルシスがオレのすぐ側まで…むしろ密着しながら物珍しそうな食い物やらアクセサリーを聞いてくる。

近い、近いよルシスさん!

オレは心の中ではそう叫びつつ、平静を装いながらルシスの質問に答えを返していく。

純粋な好奇心から聞いてくるルシスを、あまり無下にできない。

だがその度に密着するのはどうかと思います。

これが計算された嫌がらせなら回避しようもあるが残念ながら?ルシスは天然さんだ。

天然さんには何を言っても無駄だ。

長くもないが短くもない旅路でそれだけは理解した。



そしてそんなオレ達をやけに楽しそうに見ているだけ!そう見ているだけのファラはニヤニヤしている。

その笑顔の意味を知るオレには疲れしか発生しないが、他の野郎共には美女が微笑しているだけみたいだ。

周りに味方がいねぇ~!

そんな針のむしろだったオレに救いの手が……



「よう兄ちゃん、マブい姉ちゃん連れてるな、少しオレらに貸してくれや?」



さしのべられるわけがなかった。

知ってたよ!

知ってたけど何この状況!!

ってかこのゴリラ野郎に言いたい。マブい姉ちゃんっていつの時代の人間だよ!死語だよ!

前世に帰れ!

……冷静になれカイン。冷静に。

とりあえずはこのゴリラ野郎共…四人の対処が先だ。

嘆くのはその後だ。



「彼女達はオレの物ではないから誘いたいなら本人達に許可をとっくれ」



決して下りない許可だがな。

オレの真意など気が付く頭がないゴリラ男共は、びびって女を差し出したヘタレ男って思ってんだろうな。

よし、いざ始まったらボコボコにしよう。



「なぁ姉ちゃん達、こんなナヨナヨした男よりオレらと酒でも飲もうぜ」



なんて口説き文句だ。

それについていく女がいたら是非ともお目にかかり……



「いいよ、どこ行く?」



ええええええええええええええっ!!?

んな馬鹿な!

何その軽いノリ!

だがオレはそこで気付く!

ゴリラ共の誘いにのったファラの表情で全て!

面白がってる。

オレがどんな態度をするか。

どんな対応をとるかを。

くそっお前は男心をもてあそぶ悪女か!?

そんなオレを無視して



「よっしゃー!オレらが全部オゴってやる!しこたま浴びるほど飲もうぜ!!」



ゴリラ男共は盛り上がってます。テンションMAXです。最高潮です。

そしてゴリラ男共の目には早くも情欲が見え隠れしている。

コイツら絶対に酒を飲むだけじゃ終わらねぇぞ。

……未だファラは悪ノリを続けてるし、ルシスはキョトンとしている。

……ファラの知り合いとか勘違いしてそうで何か不安だ。

しょうがない、そろそろ止めよう。



「待ちたまえ!!」



第三者の叫びに動こうとしたオレは出鼻をくじかれた。

誰だ?視線を向けた先には……何と言い表すべきか……三十過ぎのいいオッサンが槍を振り回していた。槍ってことは剣使ではなく一般兵か?場所が場所だけに逆に珍しい。この都市の名物は勿論、闘技場。そこで争うのは剣使のみ。剣使より一般兵を探せという方が難しい土地柄なのに、だ。



「悪漢共が!女性たちが嫌がっているだろ!!」



「…………」



ゴリラ男共は何か釈然としない表情だ。

当然だ、嫌がってないし。

ノリノリだし。

合意だし。



「そこにいる男性に謝り、この場から早々に立ち去れ悪漢共め!さもなくば我が怒りの一撃が貴様らの命を刈り取るぞ!」



うわっ何かオレがカッコ悪い雰囲気になってる。

当事者以外の生暖かい視線がすげぇ傷付く!

おのれオッサンめ~貴様のせいで微妙な空気になってんぞ!



「…おい、やっちまうか」



「だな」



ゴリラ男共が平常運転を再開したみたいだ。

オッサンの命もここまでか。



「マスター」



言葉にせずともルシスが言いたい事は伝わる。

助けましょう。

……気は進まんが仕方ない。

オッサンめ、ルシスに感謝しろよ!!

オッサンがゴリラ男共に囲まれている。時間に余裕はなさそうだ。

骨の一、二本を折れば逃げ帰るだろうと物騒な計算を終えた瞬間。



「ガァグェ!」



カエルが潰れた様な声が上がる。

……オッサン、散り際もせめてカッコよくしてくれ。

そう願うオレの目の前で倒れたのはゴリラ男たち。

四人全員が気絶。



オッサンはピンピンしてた。




「…………」



周囲がシーンと静まりかえる。



皆の心の声を代弁しよう。



オッサンつえぇな!

みなさんの予想をいい意味で裏切れたら幸いです。

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