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剣と龍と神  作者: カナメ
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十二話

我輩は金髪の男。名前はまだない。

『二人の約束の地でまつ』



この言葉は……

この言葉が意味する事は……



アベル、時期が来たのか?



過去の光景がフラッシュバックする。



倒れている二人の死体。

血の海。

荒れ果てた室内。

そして……笑うアベル!

オレは手紙を差し出した金髪の男の胸ぐらを力一杯掴み問いただす。



「アイツは……アベルは今どこにいる!!」



「存じません。ただ彼の地にて指定された日に待つとだけです」



「いつだ!?」



「本日よりちょうど二ヶ月後です。四月の二十一日」



「くそ!!」



男を突き飛ばし、すぐそばにある木を殴り付ける。

ただのメッセンジャーにすぎない男を殴っても意味はない。無意味だ。

だが何か形あるものにこの怒りと何かが入り雑じった感情をぶつけないと気が狂いそうだ!

細くもない木を殴ったことで手が傷付き血が出ている。

が、どうでもいい。二度、三度と続けて殴る!



「……何をしている」



すでに去ったと思っていたファラが話し掛けてきた。

どうでもいいだろ。



「何でもない」



木を四度殴り、五度殴りつけんとした手を、しかしファラが掴み、止める。



「……離してくれ」



「木を殴らないなら離す」



「…ケガくらいすぐ治癒できる」



だから離せと力を込め振り払わんとしたが…動かない、動かせない。

オレより細いファラの腕がまるで微動だにしないのだ。

強化剣技による腕力増強?

それにしても桁違いだ。

剣位が上がれば上がるほど、強化できる数値も上がるとは聞いたがこれ程とは…!



「オマエの心配じゃない。木の方が心配なんだ」



「……」



オレが全身から力を抜くと同時に、ファラも手を離した。



「…手紙を見た瞬間に表情が一変したが誰からだ?」



「…弟からの手紙だ」



「弟?」



……ファラに話す必要など少しもない。しかしこの時ばかりは誰かに話しを聞いてほしくなった。



「…四年前、父と母を斬殺した行方不明の弟だ。名前はアベル」



「内容は?」



「…二人の約束の地で待つ」



「どこだ?」



「……子供の頃、いつか二人で行こうと誓った場所だ。この大陸でも数える程しかない聖域」



「聖域にして禁域…ヴェルジュ樹海か」



オレの言葉を引き継いだファラが目的地を告げる。



「あ、あぁ。よく分かったな」



「聖域などこの大陸では限られる単語だ」



昔のオレは知らなかった事柄だがヴェルジュ樹海とは人間を含む、ありとあらゆる存在が足を踏み込む事を許されない聖域だ。

その地に足を踏み込む事が許されているのは、主たる龍とその同族と剣神。

そして何者かが選んだ候補者とその連れのみ。

他一切は入る事を許されない。



まさに絶大なる力を誇る剣龍が住まいし聖域。

神の領域ともいう空間、いや一つの世界と言っても大ゲサではないだろう。

ちなみに候補者を選ぶ何者かとは明言されていない。

いや明言できないのが正解か。

誰も知らないのだ。

候補者を決める基準も、誰がそれを定めたのかも。



一説では龍直々に選んだりとか、剣神が決定権を持っているとかいないとか。


然り

候補者とは剣神になれる人間が選ばれる。


然り

実際なれるかどうかは本人の実力次第。


然り

剣龍も抵抗する権利がある、故に候補者止まり。



こういった決まり事を誰が決めたかすらも分からないが……大昔に剣神の一人がこの事実を広め、世界へと知らしめた。



「しかしあそこは候補者でもないと入れないだろ?お前の弟は候補者なのか?」



「いや分からない。何せ四年も会ってないし……いったいどうやってあの樹海に入る気だ?」



「その心配は無用です」



そんな事をほざいたのは金髪の男。

アベルのメッセンジャーだ。



「何を根拠に……」



そんな戯言(たわごと)を。

そう喋り終える前にまたもメッセンジャーは信じられない事を口走った。



「カイン様こそ、その候補者です。故にアベル様は時が来たとおっしゃっているのです」



「なに!!?」



オレが候補者?

そんな馬鹿な……全く自覚もないぞ。

メッセンジャーの言葉にオレも驚いたが、ファラもその綺麗な顔に驚きの表情を浮かべている。

うん、美人はどんな顔をしていても美人だ。

よし現実逃避終了。まだ驚きは残っているが何とか抑え込む。



「何で、お前が候補者だと分かるんだ?」



真っ先に浮かぶ疑問を問う。

こいつはただのメッセンジャーだろ?

そんな奴がどうしてそんな世界の決まり事が分かるんだ?



「候補者とは、剣神の方々が選ぶ権利を与えられております。今現在、剣神の方々は五名です」



そんな世界の真理を…多くの人々が知らないであろう事実を目の前の金髪男は淡々と語る。



「この五名によって順次、候補者は選ばれます。私はその決定された人選をご本人に伝える存在にしか過ぎません」



やはりただの…っていうと語弊があるが、要は剣神達のメッセンジャーか。



「そして今回の候補者決定権はあるお方にまわされました」



ここまできてオレはようやく理解した。つまり今回の候補者を決めたのは…



「剣神の五名の内がお一人、《狭間》(はざま)のアベル様です」



予想通りすぎて笑えねぇよ、アベル。


フウ~!天才なチートな弟はお先に剣神になっちゃったよ、テヘペロ!!

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