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フリー台本声劇|読めば終わる、でも残る  作者: 沼波まろな


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いい人ってなんですか?

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    【いい人ってなんですか?】


■人数:3人

■登場人物:愛 同僚 真奈

 

________


「愛ちゃんってほんと優しいよね」


確かに私は優しい人間だと自負してる。

誰かが困っていたら迷いなく助けるし、店員さんや立場が弱い人にも態度を変えたりしない。

そういう意味では優しいとは思う。


「人の悪口も言わないじゃん、理不尽に怒ったりもしないしさ」

「えー、それは普通じゃない?」

「そんな事ないよ!レアだよレア!」


同僚はそんなふうに私を褒める。

"普通"を“多くの人がすること”だと定義するなら、確かに私は普通ではないのかもしれない。

だって多くの人は、誰かの悪口を言うし、理不尽に怒ったりするのだから。


ただ私は自分の機嫌で人に当たるのがダサいと思ってるだけだ。

あと単純に面倒くさい。

悪口なんて一度口にしたら絶対どこかで広がる。

共感されたらされたで空気ができるし、その空気の中で「わかる〜」なんて続ける時間もだるい。


だから言わない。


もちろん苦手だなって思う子はいる。

今もいる。

少し離れた席で笑ってるを真奈を見ながら、愛はぼんやり思った。


(ああいうとこが嫌なんだよな)


怒られそうになると声が小さくなるところ。

でもフォローされた瞬間に許されたと思いすぐ甘えるところ。

「〇〇さんからこう教わったんですけどぉ」って自分だけの責任じゃないって方向に持っていこうとする所。


多分本人は無意識なんだろうけど。


まあ別にどーでもいいんだけど。

ここで私が「真奈ちゃんってさ」って話し始めたら多分みんな乗ってくる。

でも、それもなんか違うし。


誰かが本人に伝えてしまうかもしれない…。

そしたらあの子、その性格直しちゃうかもしれないでしょ。


それは嫌だった。


別に大した理由じゃないの。

わざわざ人に好かれやすくなる手伝いをしたくないだけ。

そのままでいて、そのままどこかで普通に嫌われればいいと思う。


愛は自分の考えに少し笑いそうになる。


私って性格悪いなぁ

まあでも…ほんとだし。


こんな私の内心を知っても本当に優しいと思うのかな。

きっと悪いって思うに違いない。

腹黒いだとか、皮肉たっぷりにいい性格だねって言われるのが目に見えている。


じゃあ陰で悪口言ってる人は優しい人なのか。

陰で言う悪口はいずれ本人の耳に入る。

無闇に誰かを傷つけるくらいなら、私は黙っていたい。

表面上だけでも、いつも通りに接していたい。


どちらが優しいかなんて、結局わからない。


優しさなんて曖昧だ。

相手の受け取り方ひとつで、簡単に形を変える。


自分が辛くて苦しい時は大丈夫?の一言が救いにもなるし別の日のメンタル的には、ほっといてくれた方が優しさになったりする。


「きみのためだから」って言いながら、実は自分の考えやこうした方がいい正義を押し付けてるのに気が付かない人もたくさんいる。


私はそういう空気を読んでいるんだ。


社会性があると言ってほしい。

だから私は自分の性格を嫌いじゃなかった。


むしろ誰よりもずっと人間っぽいと思う。


翌日。


真奈がまたミスをして周囲が少しピリついていた。


「大丈夫?」って声を掛ける人もいる。


愛もその一人だった。


「手伝おっか?」


柔らかく笑う。


真奈はほっとした顔で「ありがとう〜!これね、私が頼まれてたんだけどさ、課長も気がついたのこんなギリギリで!本当に早く欲しいならもっと早く言ってほしいよね〜」と言った。


愛は柔らかく笑い返す。

よかったね。

助けてもらえて。


でもその甘え方、またいつか誰かをイラつかせるよ。

心の中だけで、そっと思う。


そしてそのまま、何も言わない。


だって私、性格いいからね。

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