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知らない、とは怖い事なのですね  作者: 猫卜雪乃


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04:後継者は……




「その事だが、クリーマ嬢はエールデと結婚する」

 アンドロシュ公爵が断言しました。

 え? 私への打診ではなく、決定事項?

 結婚させる、でもなく、結婚する、とは不思議な言い回しですね。


「元々エールデとクリーマ嬢が結婚して、公爵家(うち)がクロイツァー伯爵領の統治も行うはずだったのだから、問題無いだろう」

 アンドロシュ公爵の視線の先は、我が父クロイツァー伯爵。

 何それ。初耳ですが?!


「それではエールデが大変だからと、ヴァッサーを婚約者にすれば伯爵家で後継者教育が出来るとの事だったが……何を教育したのか」

 今まで聞いた事のない、深い深い溜め息を公爵が吐き出す。

 幸せ逃げますよ。



 確かにヴァッサーはやたらと伯爵家に入り浸っておりました。

 しかし、後継者教育を家令から受けていたのは私だけで、ヴァッサーはブリーゼや継母、たまに父も混じってお茶をしていただけですよね?


 そもそも父自体、領地に関しては何もしていないし。

 なぜなら、母の喪が明けるまでは別邸に篭もりきりで、伯爵邸には近寄らなかったのですから。


 あれ? そういえば、婚約して初めて他家のお茶会へ一緒に行った時に、開口一番「何でお前が来るんだよ」とヴァッサーに怒鳴られた記憶が……。

 もしかして当時のヴァッサーは、自分の婚約者はブリーゼだと思っていたのでしょうか。



 私が後継者教育をしていた時間にも伯爵邸に来ていて、二人で遊んでいたのかもしれません。

 顔合わせの時にきちんと挨拶したはずなのに、記憶に残らなかったのですね。

 確かにヴァッサーは、ブリーゼばかり見ていましたけどね!


 それに父と同じ形の当主になるつもりだったのならば、愛人と楽しく暮らすのは大正解ですねぇ。

 父の考える後継者教育を受けていたようです。別名、クズ製造教育。

 ヴァッサー、可哀想に。


 いや、でも、自分でおかしいって気が付いて、改善する事は可能だったはず。

 婚約期間は約十年あったのですからね。

 やっぱり可哀想でも何でもないわ。



「ヴァッサー、伯爵家へ行った日に受けた教育は逐一報告させていたはずだが、あれは嘘だったのだな?」

 アンドロシュ公爵の声が一段低く変化する。

 私が家令に教育を受けていると、必ずヴァッサーの従者が家令にその日の勉強範囲を聞きに来ていたわね。あれは、さもヴァッサーも受けているように報告する為だったのね。


 でも残念。

 家令は私……というか、クロイツァー伯爵家の生粋の使用人なので、ヴァッサーとその従者も信用していなかったのよ。

 だから通常では有り得ない早い進み方で、天才でない限り無理な教育を受けている、とヴァッサーからは報告されているはず。


 だから、アンドロシュ公爵もおかしいと思っていたのでしょう。

 お世辞にも優秀とは言えない馬鹿息子が、既に子爵家位なら管理出来るくらいの能力が有ると報告を受けていれば、ね。



 ヴァッサーの従者は変わらないけれど、護衛はいつからか固定ではなくなっていました。

 公爵家子息ならば専属の護衛がいるのが当たり前なのに、その当時から信用が無くなっていたのでしょう。


 護衛は、おそらく監視役です。

 ヴァッサーは護衛の顔など覚えていないようで、その違和感にも気付いていませんでしたね。

 その辺もアンドロシュ公爵からの試練だったのかもしれません。

 自分で気付いて、行動を改めれば……とか?



「エールデがクリーマと結婚……クロイツァー伯爵家は、クリーマしか継げない。それならば、アンドロシュ公爵家は俺のもの……?」

 ヴァッサーが父親の質問にも答えず、ブツブツと独り言を呟いています。

 なぜそういう思考に陥ったのか……馬鹿なのかな? 馬鹿だったね。


 アンドロシュ公爵家がクロイツァー伯爵領も一緒に統治するって、さっき言ってたのに聞いてなかったのかな?

「じゃあ、私、公爵夫人?」

 ブリーゼがヴァッサーの呟きに反応して、嬉しい! とか喜んでいるけど、空気読め。




「ははははは! やはりブリーゼは幸運をもたらす聖女なんだな! 伯爵家なんかくれてやれ、ブリーゼ!! 公爵夫人だ」

 えぇえええ。頭大丈夫? ヴァッサー。

 現アンドロシュ公爵家当主様は、凄い顔で貴方を睨んでおりますけど?


「そこまで言うのなら、どちらがアンドロシュ公爵家の後継者に相応しいか、試そうではないか」

 アンドロシュ公爵の声が応接室に響きます。

 こっわ! 怖すぎる。

 何かが声に込められて……威圧? かしら。イライラが頂点に達しちゃったみたいです。


 いつも呑気にピカピカしてるブリーゼの周りの妖精達も、どこかに逃げ隠れしてしまいました。

 なのにブリーゼは可愛く小首を(かし)げていて、その極太神経に吃驚(ビックリ)します。

 その横で、顔色を悪くしながらも笑う我が父。

 同じように邪悪な顔をしているヴァッサーは、エールデ様を見ています。



 あれ? もしかして、アンドロシュ公爵家、血で血を洗うお家騒動になる?

 エールデ様暗殺の危機?!

 いや、ないか。

 アンドロシュ公爵夫妻は、公の場であんな恥晒しな愚行をしたヴァッサーを許すほど、甘い人間ではないですからね。


 後継者試験、何をするのでしょう?

 領地管理に関する事なのは間違いないでしょう。


 ヴァッサーとブリーゼ、それに父と継母。

 誰も領地管理の知識が無いけど、大丈夫ですか?




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