表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/47

19-後編. お子様ランチ(大人向け)




「ご飯つけてください。大盛りで」

「かしこまりました、少々お待ちください」


ポテサラ君よ、いらっしゃい。

待ってたよ君を。

君というヘビーユーザーがいながらも、日曜定休を決行した私としては、君にポテトサラダをちょっと多めに盛ってあげようと一方的に心の中で決めていたんだよ!


ただね、ほら…私一人でしょ?

ランチタイムはバタつくじゃない?

ポテサラ君くるじゃん?

ランチ出すじゃん?

…あ!ポテトサラダ多めに盛るの忘れた!てなるんですよね。


と、いうことで。

一人で来たようだし、私も思い出したし、ちょっとサービスで多めに盛っておく。


ーー日曜日、定休日にしてごめん。あと、ポテサラ君がエクセルできるようになりますように。



「お待たせいたしましたー!」

「!」


ポテサラ君の前にランチを運ぶと、プレートを見て少しピクッと反応した模様。

そして、キョロキョロと控えめに周りを、というか周りの人のお皿を見回している。


『なんか今日…俺のポテトサラダ多い?勘違い?いや…、あ、やっぱり多い?』みたいな感じだろう。


チラチラ視線を感じるが、私は知らん振りである。

贔屓ダメゼッタイ(建前)。

ヘビーユーザー贔屓してもいいでしょ別に(本音)。

まぁ、表立って特別扱いはできないから、私が目測誤ってよそったとでも思ってちょうだい。


ポテサラ君はちょっと遠慮しつつも、嬉しそうにポテトサラダから手を付け始めた。

喜んでいただけて何よりです。




「店長さん、店長さん」


お帰りになったお客様のテーブルを片しに厨房と行ったりきたりをしていると、カウンター席のポテサラ君から呼びかけられた。


「はい?どうされました?」

「今日、ポテトサラダがなんかすごく多くて盛られてて…ありがとうございます」

「エッ、ソウデシタカ?」


若干目が泳いでしまった気がする。

恥ずかしい。


「俺、この前エクセルで悩んでたじゃないすか。今も苦手だけど、覚えて使いこなせるように頑張ってます。店長さんが、みんな慣れるまでは大変だったのかもって言ってくれたおかげっす」



何だこの好青年は…!

あなた良い子…!私、応援するよ…!


「そうですか、私気の利いたこと言えてないですけど…」


照れる〜。ニヤける〜。

照れますよ良い年してるけど!


「ここの店来るようになって、いい事が多くて」

「良いこと?」

「ポテトサラダがうまいし、無駄遣いが減りました」

「無駄遣い…とは?」

「ここができる前はコンビニで飯買ってたんすけど、コンビニ飯って毎日食べてると、美味いけど飽きるんですよ」

「なるほど」

「しかも、弁当一個じゃ足りない。だから唐揚げとか揚げチキンとか買うし、味噌汁だって買う。しかも夕方腹も減るのも早いからまた買う」

「……」


すごい食べてるよこの子。

なんでそんなにスラッとしてんの?

食べたら食べた分太る私の立場は?


「コンビニでうっかり1000円くらい使うわけですよ昼に。プラスまた夕方買うし」

「それは…なかなか出費が…」

「まぁ、俺一人暮らしなんで、朝は大して食わないですし、夜は…まぁコンビニか外食か家でTKGです」

「たまご かけ ごはん…」

「そうです。……でもここにきてから、昼飯しっかり食ったら夜までもつし、コンビニで飯買うより安いし、美味いし、なにより飽きない」

「ありがとうございます」


すごく熱弁してくれるポテサラ君に苦笑しつつお礼を返す。

本当にありがたいお言葉だよ〜。


「あと、夜コンビニ飯とか外食じゃなくて、家で何か作ってみようって思うようになって、最近夜は自炊してます」

「えっ、すごい!今までもたまにやったりしてたんですか?」

「いえ、全く。米を炊飯器で炊いてTKGかふりかけでした」

「尚更すごいですね!何を作るんですか?」

「カット野菜と肉を炒めて焼き肉のタレです」

「…なるほど!でも確かにコスパが前より良くなってますね!」


すごくシンプル!イイネ!

一番失敗のないものから始めるポテサラ君、偉い。

堅実なんだな、きっと。

料理したことないのにいきなり、かっこよく聞こえるビーフシチューだとかアクアパッツァだとか言い出す人より好きだわ。


「そうなんです。簡単なことしかやってないけど、それなりにうまいし、なんか…温かいんですよね。後片付けが面倒だけど、よく眠れる気がするんです」

「…分かります」


本当に分かる。

ごはんって本当に大事なんだよね。

ただ、生きるために食べるのは味気なくて、寂しい。

色んな環境がそれぞれあるだろうけど、

楽しんでごはんを食べられる環境にあるなら、それをしないのは勿体無い。


「食事という行為を、ただ噛み砕いて飲み込むだけの“作業”にしてしまうと、色んな事が半減する気がしますよね」

「それっす!なんか…こう…全部に繋がるっていうか!」

「そうですね。…でもそれが、うちのお店がきっかけっていうのは嬉しいです。ありがとうございます」

「いえ…あの…そんな…」


ポテサラ君が照れている。

まぁ、いつも基本は然程テンション高くないタイプのお客様なのに、今日はすごい喋ってくれたし、熱かった。

ハッと気付いてさらに恥ずかしくなっちゃうパターン、あるよね。


「自炊始めても、ランチはうちをご贔屓にお願いします」

「もちろんです!」



売り込みも忘れない、店主の鑑のような私である。

こういう話きくと、燃えるわー!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ