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19-前編. お子様ランチ(大人向け)



『メニューはこれだけ!

 本日の店主の気まぐれご飯

 お子様ランチ(大人向け)

 ・ナポリタン

 ・ミニハンバーグ

 ・ポテトサラダ

 ・カレー風スープ

 ※上記内容セットのランチです。

 ※※ご希望でライス一杯(大盛り可)サービス


 900円

 大人が夢見たお子様ランチ!』



店主の気まぐれが大爆発したような献立である。

春眠亭特製ゴロゴロポテトサラダはもちろん、

牛豚合挽き肉を使い、中にはチーズを隠しこんであるミニハンバーグ。お肉に乾燥バジルと粗挽き胡椒少し多めに練り込んでスパイシーに。

スープは玉ねぎと鶏ささみのほぐしたものを入れてコンソメベース、仕上げにカレーパウダーと粗挽き胡椒。隠し味は少しのにんにく。


ナポリタンは昭和の喫茶店のような感じを意識。

今どきのトマトソース感漂うパスタではなく、“昭和のナポリタン”である。

もはや令和だというのに、昭和とは。


ちなみにパスタ麺は茹で置きします。

通常よりも1分程長めに茹ででから、流水で締める。

水気を切ってから麺同士がくっつかない様に油を少し。馴染ませてから冷蔵庫へ入れて、ランチタイムまで寝かせて置きました。

こうすると、麺がモチッとするんだよね。

いざ作るときは、ソースを絡める前に麺を炒めておくのがポイントである。食感と香りが引き立つのさ!

うちのナポリタンはケチャップとウスターソース使います。

具はピーマン、玉ねぎ、ベーコン。

王道だよねぇ、ふふふ。

ナポリタンは味濃いめ。濃い味って後で喉が乾くんだけど、ナポリタンは濃い味派な私としましては譲れんのです。

そして、そこにご希望の方にはライスまでつけてしまうんだぜ!

味の濃いナポリタンって、ご飯食べたくなるんですよ私。

じゃあ濃い味にするなよって話なんだけど、それとこれは話が違ーう!

自分の希望を具現化出来るって幸せだわ〜。


こんなに楽しく準備してるのに、今日は“ご予約席”にお客様がこない。残念。



さて、今日も張り切って仕事をしましょう!



*******







「ここのランチを食べ始めてから、太った気がします」

「え」


毎日ではないけれど、結構な頻度で来てくれるようになった貴重な女性のお客様、矢崎ヤザキさん。

そう、早食いかつ意外と大食いの美人さんだ。

同性ということもあり、一番話をするお客様でもある。

お名前も話をする中で名乗ってくれたので、それからは矢崎さんとお呼びしている。

ちなみに私は名乗ったけど、店長さんと呼ばれている。

そりゃそうだ。


そんな矢崎さん、入ってきてカウンター席に腰掛けると、

「いつものやつをお願いします」と言い、神妙な顔で言ったのだ。先程の台詞を。


「矢崎さん、今日はナポリタンメインだし、“いつものやつ”やめときます?」

「やめません!」


“いつものやつ”とは。

矢崎さんは初回来店含め以降ずっと、大盛りご飯を食べるお客様であった。

ただ、“大盛り”という言葉は女性的には少し恥ずかしいらしく、いつも声を少し潜めて言うのだ。

だから、“いつもの”って言ってくれれば大盛りにしますよ、とこちらも伝えたわけだけど。

まぁ、言われなくても大盛りにしてあげればいいかも知れないけど、体調によっては善意がアダになってしまう事もあるかもしれない。そう考えての策である。

それから、彼女は“いつもの”と言うようになった。

ーそう、来る度欠かさず言うのだ。

こちらとしては全然構わない訳だが、確かに結構な頻度で大盛りご飯を食べるのは太るかもしれない。


「多分、うちのお店でお腹いっぱい食べてるからかもしれませんね」

「そうなんです!美味しいのがいけないと思うんです!」

「ありがとうございます、と言って良いんですよね?それ」

「良いんです!」


「はい、お待たせしました」

「わー!すごい!やばいです、カロリーが!」


そう言いつつも嬉しそうな矢崎さん。

今日はお子様ランチ(大人向け)なので、スープとご飯以外はワンプレートである。

プレートの乗ったお盆の脇に置いてあるお茶碗には、こんもりと白米。

炭水化物のレイヤードスタイルである。


「うぅ……ご飯とナポリタン、合うよ〜…」


たっぷりソースと絡んだ茹で置き麺を、白いご飯の上に乗せながら食べる矢崎さん。

わかるよ、ナポリタンっておかずじゃないの?って気持ち。

いや、おかずじゃないけどね。


「ハンバーグにチーズ入ってる!あ、すこしお肉がスパイシー?」

「ここのポテサラは本当に美味しい。食べごたえある」

「あ、本当にカレー風スープだ!意外とさっぱり」


矢崎さんは、カウンター席に座って私と話しやすいポジションだと必ず一品ずつ感想を教えてくれる。

以前話したときに、私が聞きたいって言ってたのを覚えてくれているようで、非常にありがたい。


「今日も美味しかったです」

「ありがとうございます」


お会計の際には、来店時太ったことを気にしていたとは思えないくらい晴れやかな顔つきだった。


「店長さん、私思ったんですけど」

「はい」

「今日のお子様ランチ大人向けってやつ、ちょこちょこスパイシーだったからですか?」

「あ、そうです。気づいてくださったんですね」

「ハンバーグもバジルの香りと粗挽き胡椒強めの大人味でしたし、スープもさっぱりしつつ意外とピリッと後味ありました」

「そうなんです、控えめにパンチを効かせてみました」

「こういうのも私好きです!」

「ありがとうございます」


またきますね!と元気良く仕事に戻って行った矢崎さんであった。



…太ったことは別に良いのかな?

見た目にはわからないし、大盛りも続けるみたいだし…

まぁいいか。




美味しいものをたくさん食べたい。

でも太りたくない。

乙女心は複雑だなぁ。





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