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「うめええっ!」
「わーレナちゃんこれ僕好きな味だ」
絶賛している二名、ニキ様やケイン様それと馬車に居た全員に配った後、護衛に居た人達も先程話したそら豆のスープを渡すとガツガツ食べる(飲む)人や、味わってゆっくり飲む人等多種多様な人が居てちょっと面白い。
ちなみにジーニアス兄さんはコリンさんに自慢している。
「美味いだろ?」
「はい!先輩から何度か聞いて居ましたが、こんなに美味しかったんですねー!」
とかって声が聞えて来るのは何だかちょっと恥ずかしい。
そしてコリンさん、こっち向いてお礼を言って来る辺り何だかムズムズする。
今居る場所は蒸気機関車の丁度真ん中、中継地点だ。
当初蒸気機関車の中からここの場所が見えた時驚いたんだよね。てっきり職員用の官舎と機関車の倉庫とかそう言った建物しか無いのだと思って居たけど、全く違って居た。少し立派な村が出来上がって居たのだから。
中央に蒸気機関車のレーンが通っており、その片方には人が住む村、反対側には幾つもある機関車の倉庫に職員達の寮、それと関係資材置き場等がありこの場所に居る住人はほぼ機関車の職員だと言う。更に駅がある村の方には家族がいる職員達が住んでおり、その中には商業ギルドや冒険者ギルドの各支店まである。
今は機関車関係の仕事や警備等がメインだが、そのうちこの村特有の産業を作るのだそうだ。
何だかドンドン発展しそうだなぁ。
そして中継地点に付いてから周囲の石などを組んで竈を作ってスープを作ろうとした所、職員寮の一角にある台所を借りる事が出来、我が家の執事であるアイオロスさんと共に作ることが出来た。
ちなみにアイオロスさんはこのスープを作った事が無く、今回この視察に来るにあたって我が家の一人しか居ない料理長から作り方を教わり、実に手際良く手伝って貰った。
アイオロスさん万能執事だなぁ。
とは言え本来なら執事は料理の補佐とかってする物じゃないと思うんだけどって聞いてみたら、
「それを言ったら貴族のお嬢様が自ら手料理をする物ではありませんよ?」
と言われてしまった。
それを言われると前世庶民、元実家のアレイ領では下手すると農民以下な生活を送って居た私としては何とも言えないデス。
「あら、本当に美味しいですわレナちゃん」
「うむ、美味いな。ニアスはコレが好物だと聞いたが成程、柔らかい口当たりに塩味も丁度いい塩梅で確かに良い味だ」
そして目の前でモグモグと食べる二人。
残念ながら私の両隣にはビシッとニキ様とケイン様が座って居る。また二人の妙なやり取りが出るかと思ったけど、今の所は有り難い事に為りを潜めて居る。
理由はレスカ様が叱ったからだ。
「あほうか、レナの目の前で繰り広げるなみっとも無い」
と言われ、大人しくなった。
更にはジーニアス兄さんの嫌味も喰らって居た様だけど、それはそれ自業自得なので甘んじて受けて頂きたい。特にニキ様。強引に乙女の手を握って来るのはマイナスポイントですからね。
…嫌じゃないけど。
ただそれを嫌がらないとケイン様までやるので面倒なんですよ。
二人に同時で手を握られると気分は両手を握られた某写真の宇宙人です。
身長そこまで小さくないけど。
是非ご理解お願い致します。
さて。先程も思ったが、馬車の車内以外では特に隣国の王子様であるアレクサ様は積極的には交流して来ようとはして居ない。ニキ様とケイン様が牽制しているから(しなくてもいいのに)かも知れないけど、何度か此方をチラッと見ては接触して来ず、他の警備の人や職員達に話し掛けたりしている様に見える。
遠慮しているのかな?
等と思って居たのだけどレスカ様曰く「彼奴はそんなタマでは無い」との事。ならば避けられて居るんだろうと思う。
「気にするな、彼奴はアイツで思う所があって行動して居る。それに今回視察しつつも頭の中に知識を貯えようとして必死らしいしな」
レスカ様曰く、自国では余り自由な身分で無い事と過密スケジュールな事、更に度々命を狙われたり地位を狙う女性に追い掛けられたりして居たので此方の様子を窺って居るのだとか。
「疑心暗鬼に陥って居るからな」
と、一言で済ませたニキ様に対し、ケイン様は「気にしなくていいよ、多分そのうち向こうから接触して来るから」との事。
うーんそれで良いのか他国の王子の対応。外交問題とか平気なの?
「当人がそうしてくれと頼んだから良いのだろう」
…そう言う問題なのか。
ちなみに私だけ警戒されているのかと思ったら、ユリア様もらしい。
「案外女性不審なのかも~」
とケイン様が言って居たが、そうなのかも知れない。
だって兄さんやコリンさんとは普通に話して居たから。近衛兵の格好してたので気楽だったのかも知れないけど。苦労して居るんですねアレクサ様。
スープもだけどそれだけだと勿論足りないので各自でサンドイッチとかのお弁当を持ち寄り、共に食べて居るんですけど…
先程から兄からのこっちこーいこっちゃこーい視線が痛い。
声に出しては居ないけど、ジトーと目付きがネチッコイ。
行っても良いんだけど、そっちアレクサ様居るじゃん。
隣国の王子様居るじゃん。
行きたくないんだけど!
「レナ」
等々コイコイと手を動かしてきたよコレ。
イキタクネーッ!
チラリとユリア様の方を見ると淡く微笑んでいて、隣のレスカ様は面倒だから行って来いって目。ニキ様とケイン様はこの場合スルー一択だ。寧ろ見ない。
仕方ないなぁ…
ああ、憂鬱。
何処か誇らしげなジーニアス( *´艸`)
ちょっと違う感じの小話。
↓
タイトル付けるならコレ
『アレイ家長男、カイデンの苦悩?』
「…」
末の妹が居なくなり、レッティーナ同様に家出をされてから数か月後。
一時期動揺して居た領民達も二度目の事なので「ああ、また逃げ出したのか」と言った風に此方を見て居て正直風当たりが強く、その視線に晒されて居心地が悪かった。
だが月日と共にその視線が無くなり、最近は…
「「「「「「禿げませんよーに!」」」」」
…そして親父は拝まれていると思って喜んでいる。
イイノカソレデ。
作者:面白いからソレで(`・ω・´)!




