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今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】  作者: 柚ノ木 碧(活動休止中)
4章 今日もお屋敷も学園もゴタゴタしていますが、働いて・学んで・そして何故か陰謀に巻き込まれつつ何とか奮闘致します。
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「ああ、青い空白い雲」


「レナ、随分と呑気だな」


 私は今車上の人、じゃなかった馬車上の人となって居る。

 その馬車の窓からノンビリと空を見上げ、言葉を漏らす。

 ガタガタと揺れる馬車は通常の馬車とは違い、以前デュシー姉さんを探した時に乗ったワゴン車みたいな長細い車体を持った馬車だ。

 そしてこの馬車、何と蒸気機関車のレールの上を走って居る。


 先日のスタンピードの影響で王都にあった幾つかの機関車が魔物によって大破し、港町に置いてある最終終着駅等に置いてあった一部しか使えず、その替わりに馬車に機関車用の車輪を付けて走らせることになった。

 そんなワケでレッティーナ・アルセーヌ・ガルニエとなった私は、何故か試作機第一号へと搭乗している最中だったりします。勿論馬車の車内にはこの国の魔法大臣の息子のケイン様に騎士団団長の息子のニキ様、第二王子のユウナレスカ様と何故か微笑みながら手を握り合って居るユリア様、そして…


「ああ、ホントいい天気だね」


 アレクサ・ロー・ウィックロー様がニコニコとして此方に笑い掛けて来る。


 …死ぬ。

 何だこの攻略対象者勢ぞろいしている空間わーっ!

 わーっ!

 わーっ!

 …悲鳴あげたいのを堪えているから取り敢えず心の中だけで喚いてみました。


 ああ、何か虚しい。

 わーとかって何度も頭の中で喚くものでは無いね。

 例え現実逃避だとしても。



 数匹の馬が地面に敷かれたレールのおかげで比較的楽に引く事が出来る為、護衛達も何人も乗せる事が出来るらしい。この車両の他に二両ほど連結して居る馬車に護衛達が乗って居たりするのだけど、一応この場にもレスカ様の近衛兵のジーニアス兄さんまで居て、更に異様にキンキラした攻略対象者達がどの方向にも居て、目に痛い。

 ついでに胃も痛い。

 王都を出発当初、何時の間にか情報を得て居たのか改札口にヒロインのアメリー準男爵令嬢が此方を射殺す程に殺意を籠めた目付きで見詰めて居たので。


 きっと私コロサレル。

 私の後ろにユリア様がいらしたけど、あの視線は私あてじゃないかな…


 大丈夫、私アレクサ様とはどうこうってのは無いから!

 他に攻略対象者達とも何かって言う感じじゃないから!

 ニキ様にケイン様はギリギリな気がするけど。

 でも今の関係は友達ですから!

 無罪です。

 むしろ冤罪です!

 アレクサ様の場合、罪とか以前に今日まともに会話したのは今の言葉と挨拶だけなんだけどね。


 そしてニキ様や、ムスッとした引き攣った顔でものスッゴイ牽制、眼力。

 眼光鋭過ぎ。

 更にほんわかとした笑顔で、でも目付きは笑って居ないケイン様まで目でのみの牽制し出して、正直居た堪れない。


 怖いですよお二人共。

 相手王子様ですよ、隣国の。

 大丈夫なの?そんな態度で。

 更におにーさまー!

 妹の傍に寄るなって雰囲気満々でジーニアス兄さんが殺気通り越して冷気がっ!

 馬車の中が寒い!冷える!まだ9月だと言うのにもう真冬が来たって位に寒いっ!

 寒波だ寒波!

 だからなのか、ユウナレスカ様はユリア様の手を握って私達とは距離を取って居るあたり、是非変わって欲しいその位置。


 ユリア様の手を握って暖を取りたいです、ええ。心底居心地が悪いんだよ!


 そして関わる気ゼロな他の護衛な王国騎士団員さん方は空気を読んで見て見ぬふり。

 凄いよ、気配が無いよ。一瞬その場にいるの気が付かない位だよ。

 そして誰だ「鬼神がコワイ」って呟いた奴。

 その鬼神ってジーニアス兄さんの事だよね?

 私も怖いよ!

 同意するよ!


 そして何故か普通にコリンさんも護衛の中にちゃっかり入って居たので聞いてみたのだけど、この度晴れてコリンさんもユウナレスカ様の近衛兵として入れたらしい。

 ただし新人の見習いとして。

 理由は爵位が「準男爵」だからって言う理由と、爵位が低いのが影響して仕方なく見習い近衛兵としたと。ただ近衛兵の見習い等前代未聞らしく、貴族達の中からも反対が多く大変らしい。


 うーんこう言っちゃなんだけど、レスカ様って結構やんちゃなんだね。

 第二王子って地位もあるからある程度は融通効くとは思うけど、普通反対に在ったらある程度引くんじゃないだろうか。それこそ我儘王子って存在なら別だけど、レスカ様はそう言った人じゃ無いし。

 むしろ策士っぽいんだよね。

 ジーニアス兄さん曰く『腹黒』と言う言葉で片付けられてしまうのだけど。


「それにしてもレナちゃん良く思い付いたね~」


 ケイン様が何時の間にか私の左側に座って、ニコニコとした顔をして話し掛けて来る。


 思い付いたって言うのはこの馬車の事。

 前世で何処かの国で列車のレールの上を車で走って行くのを見て居た記憶が偶々あり、王都にあった機関車が大破して新鮮な魚介類の輸入が出来ないという話をケイン様やニキ様が遊びに来た時についぽろっと、


「馬車に機関車の車輪つけたらレールの上走れませんかね?」


 なんて、ぼそっと呟いたのが切っ掛けで実現してしまったんだよ、コレが。

 勿論馬車の車輪と機関車の車輪の幅が違うらしくて存在して居る馬車で丁度良いのが無いかと模索したらしいけど、前に私達ニキ様やケイン様達と共にデュシー姉さんを探しに乗った馬車を思い出したらしく測ってみたらビンゴ。

 更に長旅用の馬車なので比較的頑丈らしく即採用に為ったとの事。

 融通して貰ったらしいけどあまり馬車の数が無いらしいので今急ピッチで制作しているらしい。勿論機関車の制作の合間にだけど。

 ただ機関車一台作るよりも馬車を作った方のが格安らしい。

 問題は馬だから馬糞問題とか餌とか、休憩を合間に入れないと馬がへばってしまうと思われるので、今回初の試作運転中に様子を見る事となったらしい。


 そんなワケで提案者の私、レッティーナも連れて来た方が何か落ち度とか見付けるかも知れないという事で、ケイン様のお父様であるハリントン・ノスタルジア・ジアス魔法大臣様から何故かお仕事として依頼されてしまったわけです、はい。

 本来ならこんな攻略対象者がビシッと居る空間の中に入りたくは無かったのだけど、


「学園からもレッティーナ嬢に頼まれていてな、新鮮な魚介類が入って来ないのと先日のスタンピードの影響で若干食材が、だな…」


 つまり食堂で扱う食材が不足していて、学園側から「暇ならついでに港町で仕入れもして欲しい」と言うお仕事が発生しちゃっていると言うわけです。主に「塩」らしいけど。


 確かにここ数日市場の相場がガッツリと吊り上がり、塩や干し魚等三倍以上。更にハーブや生野菜等も高騰し、市井等では大打撃になって居ると言う。当然学園の食堂も同じ目にあっており、今は学生がほぼ居ないけど(一部帰れない人は寮に居る)職員等は困って居るらしい。

 ガルニエ家は庭にある一角にケイン様が作った野菜やハーブ畑があって特に影響が無かったのだけど、塩は確かに料理長(一人しか居ないけど)が嘆いて居たなぁ。「くっそたけー」って。あの料理長本音が出ると口が悪いんだよね、腕はとてもいいけど。

 そう言えば先日来たオルブロンが「お姉ちゃん(シドニー)が仕入れ大変だって言ってたよ」と呟いていたっけ。御土産にシドニー姉さんや家用に塩購入して行こうっと。


 そんなワケでお仕事ならと試作に乗ったわけです。

 だけど聞いて無いよ、何故アレクサ様まで居るのですかね?ニコニコと愛想振りまいてるけど、何となく一々此方が言う事に気にして居るみたいで困る。

 なんとな~く観察されているみたいなんだよね、正直居心地が悪い。


 そしてそんな空気を破ってくれる癒しのユリア様が先程からレスカ様に独占されている。

 くっ…

 少し寄越せやレスカさま!

 こんな男男男しかも攻略対象者ばっかの空間嫌なんじゃ~!

 それよりなら女子トークしたいんじゃ~!

 はぁ、こんな事ならパーシャさんでも無理に連れてくれば良かった。物凄く抵抗されてしまって断念したのだけど。ちくしょい。

 ヴェロニカさんも誘ったのだけど、第二王子がユリア様と来ると聞くとニッコリと微笑み、


「王子の惚気で死ぬので遠慮致します」


 と…。

 オノレ、レスカ様。

 どんだけ普段惚気出しまくって居たのよ…。

 最後にユイさんに声を掛けようとしたら、問答無用で我が家の執事さんであるアイオロスさんが付いて来る事が決定してしまった。

 勿論兄さんの補佐として。

 わーい、憩いが無いよ。

 って言うか男率あがってるじゃねーかああああああっ!

 ふ。

 せめて先頭車両なのでちょこっと見える馬みとこう。

 ああ、可愛いねお馬さん。

 パカパカパカって音が素敵だよ。

 癒されるよ。


 この攻略対象者二名に挟まれて、更に少し離れた箇所にいるレスカ様やアレクサ様、更に兄のジーニアス兄さん。

 ああ、攻略対象者達の後光とかある気がしてキンキラして目が痛い。


 馬じゃ、馬!

 憩いは馬じゃ!


 逃避ですけど、何か。


「思ったより馬が疲れて居ないようだな」


「車輪がレーンの上を走っているから、馬が疲れにくいのかも知れないね~」


「思ったのだが普通の馬ではなく、別の大型の動物でも良いかも知れないな」


「その場合団体行動出来る種でないとキツイかな~。走っている途中で喧嘩始まっちゃうと困っちゃうんだよね~」


 ちなみに私を挟んで話して居るのはケイン様とニキ様。

 どうでも良いけどこの二人、確り私をガードしているつもりらしく先程同様ジーニアス兄さんから厳しい視線を浴びて居ますが涼しい顔をしてスルー。


 スルー技術高すぎてコワイヨ!

 まぁこの二人だと慣れて居るんだろうけど。

 何せ何度もガルニエ家に遊びに来て居るから、ジーニアス兄さんが居ると寒波吹いて無い?って言うぐらいの冷気込みの殺気を浴びても平気な顔してるし。


 お陰でストレスがっ


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