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闇の輝き  作者: ぴん
3章
19/53

親友の戦い3

翌日デリーとコロシアムへ行き、デリーの試合は3日後になっていた。試合の日まで、俺はあの丘でデリーの相手をした。昨日とは違い、何故か剣を折られる事はなかった。こっそり闇士(マリーナ)に相談したが、わからないらしい。

デリーの魔人化の心配も、忘れる程の二日間だった。その間、やはり天士(リホ)が現れる事はなかった。

そして、デリーの試合当日を迎えた。裏士(リーナ)さんは、店があるから行けないと言った。闇士(マリーナ)と観戦に来た俺は、コロシアムのスタンドで一人緊張していた。



デリーの剣は、本当に悪気をまとっているのか?もしそうでなければ、あの威力はなんだ?今日見れば、何かわかるのかな…。



「お?あれマウアじゃないか?」

「え?似てるだけだろ。だってここ一般席だぜ?いる訳ないって。人違いだよ。」



側にいた観戦の声に、少し微笑んでしまった。



「おっ!さすがマウちゃん、有名人だね!」


「まぁな。」



闇士(マリーナ)におだてられていると、さらに観戦の声が聞こえた。



「一応サインお願いしてみるか?」

「サイン?って言うか、お前マウアのサイン見たことないのか?スゲー字が汚いぞ。部屋に飾る方が恥ずかしいっての。」


「まじ?そりゃ最悪だな。止めておくか…。」

「逆に俺のサインあげるっての。」


『アハハ』



なっ!?俺のサインが汚いだと?ぶっ殺す!!



「マリーナ、短剣よこせ!」



バッと立ち上がった俺の手を闇士(マリーナ)が引っ張り、強制的に座らされた。



「おーい、マウちゃ~ん。いい加減に学べよー。」


「だってよぉー。ひどくねーか?」



「まぁね…そうだ!」



闇士(マリーナ)が、カバンからメモ用紙とペンを出した。



「マウちゃん、これにサイン書いてみて。」



そうか、なら見せてやる!


いつものようにササッと書いて、闇士(マリーナ)に渡した。



「どうだ!カッコいいだろ?」


「どれどれ…。」



マリーナ?何で苦笑いなんだよ…。



「あのなぁ。サインなんて読めなくて普通だろ?それを汚ないとか…「デリー!負けるなー。」



闇士(マリーナ)は話を切るように、準備運動をするデリーに叫んだ。



「マリィナぁ、こっちも何か言ってくれよー。」


「マウちゃん!」



「なになに?このサインいいよな?な?」


「変…」


急に振り向いたかと思えばそれかよ。やっぱり変なのか…へこむわ。



「ん?もー、確かにサインは変だけど、アタシが言った変なのは、あ・い・つ。」


「あいつ?」



視線の先にいたのは、デリーの反対側で試合をじっと待つムルスだった。


っていうか、マリーナの奴、さりげなく感想言ったよな?



「マウちゃん、へこんでる場合じゃないって。よく見てよ!」



闇士(マリーナ)は興奮ぎみに話すが、俺にはピンとこない。



「う~ん。俺と戦った時と変わらないけどなー。」


「それは外見でしょ?中身よ中身。」



中身ねぇ~、ふ~ん…



「お隣、よろしいですか?」


「ん?」


誰?



「え?ミラさん!?」


「マリーナ様、お久しぶりです。」



「この前は、ありがとうございましたぁ。」


「いえいえ、あなた方のお陰ですから。」



どうして堕天士(だてんし)がここに?



「マウア様、その顔は立場上私がここにいるのが意外とのことですか?そんなことはありませんよ!私も、一人の格闘ファンですから。」


「そっかぁ。アハハ」



「ミラさんがいるってことは、もしかしてリホりんも一緒なの??」



闇士(マリーナ)が、何かをたくらむように嬉しそうに言った。


あのーマリーナさん?いつからリホりんに?



「リホ様には他の者がついております。今日は私一人ですが…何か問題でも?」


「ううん、そんなことないですけどー…」



闇士(マリーナ)が、横目で俺を見た。一瞬目が合ったが、俺は目を逸らしてため息をついた。


「はぁ~。」


「やっぱりへこんだか…」



「お二人共、そろそろ試合が始まりますよ。」


「試合!」

「あ、はい。」



そうだよ!デリー、勝てよな!


そして、試合開始を告げる場内アナウンスが流れる。



「お待たせいたしましたー!これよりトーナメント2回戦第三試合を開始いたしまーす。」




「やっば、なんかアタシが緊張してきた。」


「大丈夫だって。デリーなら勝つ!」



あいつの強さは、俺が一番よくわかってるんだ!



「それでは、始め!」


「うおぉぉぉ!」



審判のかけ声と同時に、デリーが斬りかかった。



「フフッ」


「なにっ!?」



「デリーとやら、この程度か?」


「くっ。以前とまるで別人…」 



開始直後の隙を狙ったデリーの剣は、ムルスにあっさりと止められた。



「なにやってんだデリー!止まることはないぜ!ドンドン攻めろー!」



すると、聞きたくなかった声がすぐ横から入ってきた。



「あ!?やっぱり…」



マリーナ?やっぱりって…。




「マリーナ様、お気づきになりましたか?大きな声では言えませんが、(デリー)の相手は恐らく魔人でしょう。」



魔人だって!?バイラインに続いて、またデリーの相手が魔人なのか?なんで…くそっ。




「これは、乗っ取りではありませんね。意識はあるようですし、なによりまだ尾がありません。すなわち、肉体を自ら売った人間、ということですね。」



堕天士長(ミラ)さんは淡々と語った。


マリーナの違和感はこれだったのか…。



「通常はありえませんが、(ムルス)のように自らの意志で契約する者もおります。ですが、いずれは完全な魔人へと変貌するでしょう。」



完全な魔人だって!?



「こんな試合、止めてやる!」


「待ちなさい。」



堕天士長(ミラ)さんの前を通り過ぎようとした俺は、右腕を掴まれた。



「マウア様、(デリー)の目は諦めていませんよ。」


「でも…。くそっ。」



「マウちゃん落ち着いて。アタシもいるし、ミラさんだっているから大丈夫だよ!」


「わかるけど、俺はもうデリーをあんな目に会わせたくないんだ…。」



これじゃ、デリーが勝てる訳がない…。バイラインの時みたいに、また見てる事しか出来ないのかよ!



試合は、少しの膠着(こうちゃく)状態になっていた。悪魔(ムルス)がデリーに話しかけているようだった。




「どうした?俺を恐れているのか?まぁ無理もない。俺は無敵の強さを手に入れたからな。いずれこの体は世界を無茶苦茶にするだろう。だが、そんなことは関係ない。今なんだ!俺には今が全てなんだ!お前もわかるだろう?俺たち負け組に、明日はないんだよー!来ないなら、悪いがさっさと終わらせるぜ!この力を俺が長く使うには、あまり時間を掛けたくないからなー!うりゃー!!」



悪魔(ムルス)が動いた!デリー!!



「話はそれだけかい?」


ブシュ!


「なにっ?」



見事なカウンターが、悪魔(ムルス)の腹部をとらえた。



「へっ。やるじゃないか。だが、この傷はすぐに治る。お前に勝ち目はないんだよ!」


「試合中によくしゃべる人だ。あなたが悪の力を使おうと、僕には関係ない。」



「何?てめー、なぜそれを?

だが、悪の力と知ったところで俺の勝ちは変わらない。」


「どうかな?よく考えなよ。あなたはなぜ僕に傷をつけられたのかをね。」


「はっ!?」



「どうやら解ったようだね。」



「キサマ一体…どこでこの力を…。」



「あなたと少し、道は違うようだ…。」


「ぐっ…。」




「そこまで、勝者デリー!」


『うおぉぉぉぉ!!』




「やっ、やったぁー!凄いぞデリー!」



結果のみに興奮していた俺は、どうして悪魔(ムルス)が倒れたのかはわからなかった。デリーも特別な人間だったのか?という発想もなかった。とにかく、デリーが無事で、試合にも勝った事が嬉しかった。



「デリー…。」


「…。」



闇士(マリーナ)堕天士長(ミラ)さんは、冷静に結果を見つめていた。



「マリーナ、それに堕天士(ミラ)さんまで何しけた顔してんだよー!デリーが魔人を倒したんだぜ!やっぱりあいつは強いんだよー!」


「マウちゃん、事はそう単純じゃないのー。」



「何だっていいじゃないか。デリーやったぜ!」


「まったくもー。」



「まぁ、いいではありませんか。彼が魔人を倒した。それが結果です。私たちの出番もなかった訳ですし。」


「えー、ミラさんまで?」



「マリーナ、早くデリーのとこに行こうぜ!」


「あー、マウちゃーん…。」



闇士(マリーナ)の手を取り、俺は控え室へ走った。



「ミラさんまたね。リホりんによろしく伝えておいてねー!」


「わかりました。では…。」



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