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闇の輝き  作者: ぴん
2章
15/53

星に願いを込めて

「ちょっと待ってくれよ。俺まだ動けないんだ。マリーナ?おーーい!」


「聞こえなーい。なーにー?」



「だーかーらー、動けないんだってー。」


「なら、そのまま座ってればいいでしょー。すぐ戻るよー。」



…一体どこに行くつもりだよ。


ぐぅ~


ん…腹減ったなぁ。リーナさん心配してるかもしれないし、早く帰りたいんだけど…。



「ふわぁーあ。眠くなってきちゃった…。」


zzz…。



「ま、マウちゃん寝てるし…。」


「魔物だぁーー!」



「うぉぉっ。こんなとこで魔物…。え?」


「ウフフッ。元気そうでよかったわ。」


「リホ?あれ、マリーナは?あ?えー?」



「アタシはこーこ。まったくー、かよわいレディーがここから家までマウちゃんを運べるわけないでしょー?だから、リホを呼んできたのー。」


「でも何で?どうしてマリーナとリホが一緒に?」



「マウちゃん、アタシ昨日言ったでしょー?何で置いてったーって。アタシもリホと話がしたかったの。」


「じゃあ、あれってサプライズでも演技でもなく、本気だったってことか?」


「うーん、まぁ半々ってとこね。」


…この顔…絶対嘘だな、うん。



「マウちゃんが洞窟に入った後、暇になっちゃったからさ。もしかしたらーって思って、丘に行ったの。たまたま近かったしね。まさか本当にリホに会えるとは思わなかったけど。」


「ホント、ビックリしたわ。いきなり後ろから、わぁーって。」



「アハハ、マリーナらしいな。」


「それで、マウちゃんの情けなーい姿をリホにも見せてあげようって思って、ピンチになったら合図を送ることにしてたの。結局、ミラさんがいたからリホを呼べなかったんだけどね。」



「え?じゃぁ…リホ見てたの?」


「うん。」



「あれは、その…。そう、油断しただけだぞ?本当はもっと簡単にスパパパパーンって…「凄かったわ。」


「え?」



「一瞬だった。気づいた時にはもう、魔獣は倒れていたわ。私がコロシアムで見たマウアのどの姿よりも、あの一瞬は輝きを放っていた…。」



天士(リホ)は空を見上げて、記憶を思い出すかのように言った。


あの一瞬…か…。



「マウアとなら世界を救える。私はそう信じてる。」


「あぁ。ありがとう、リホ。」



自信なんて全然ない。倒したとはいっても、やっぱり覚えてないんだ。それにこのダメージ。でも、この先もどんな相手が来ても、負けるわけにはいかないよな。封印の儀までは…。



「ねぇ、リホ~。ここに来る途中で話したけど、マウちゃんの回復やってみて!」


「うん。堕天士には仕事のようなものだけど、使う力は同じだから出来ると思うけど。マウア、目を閉じて両手を広げて。」


「あぁ、頼む。」



あお向けに寝転んだ俺の胸の辺りに、天士(リホ)の両手がそえられる。


「ハッ!」



目を瞑っていても、あの光が放たれているのがわかる。…温かい…全てを委ねたくなるようだ。力がみなぎってくる。でも、この感じ…俺の中のもうひとつの魂のせいか?まぁいいや、今はこの安らぎに、ずーっと触れていたい…。



「はぁ…。マウア、もう大丈夫よ。」


「うっ、あぁ。」




「ちゃんと動けるか、私が試してあげる。えいっ!」



闇士(マリーナ)が矢を放った!



「うおっ!」



顔めがけて襲ってきた矢を、間一髪横を向いてかわした。



「いい反応!大丈夫そうね。」


「そりゃどうも。」



マリーナの奴、絶対当てる気だったな…。



「リホ、お疲れさーま。」


「うん。」



立ち上がってみると、嘘のようにダメージが回復していた。



「やっぱ天士(てんし)ってスゲーな。おかげでほれっ。この通り。」



何度もジャンプする俺を見て、天士(リホ)は満足そうに笑った。



「よーし、みんな元気になったことだし、丘まで競争だー!」


「マリーナ?ちょっと待てって。俺まだ回復したばかり…。」


「マウアー!置いてくわよー!」



闇士(マリーナ)を追って、天士(リホ)も走って行ってしまった。



「リホまで?ったく、そんなとこマリーナに似なくていいっつーの。あーもー、わかったから待てよー!」



必死に後を追うが、二人の背中は見えなくなってしまった。




「ゴール!いっちばーん。あれ?」


「ごめんなさいマリーナ。一番は私みたい。」



「うそー!?天士の運動能力って、そんなに凄いの?あー、さてはリホ、インチキしたでしょー。」


「しーてーなーい。ちょっとだけ近道しただけよ。この辺は、私の庭みたいなものだから。」



「ずっるーーい。でも許してあげる。その代わり、今度道教えてね!」


「だーめ。教えたら、私が勝てなくなっちゃうでしょ?だから秘密よ。」



「ぶぅーー。リホの負けず嫌いー!」


「じゃあ、マリーナには教えてあげる。マウアには内緒よ?」



「やったぁ!じゃあ、マウちゃん万年ビリ決定だね。理由もわからず、プッ。」


「そうね。ウフフッ。」



もうすぐゴールだ。あれ?マリーナはともかくリホもいるじゃん。足速いなー。やっぱ天士(てんし)って運動能力もすげーのかな。



「ハァ、負けた。リホ速いなー。」


「プッ。アタシとおんなじ事言ってる。」


「ウフフッ」



「は??」




『アハハ』



何か意味深な笑いだな…まぁいいか。



「疲れたぁ。」



丘に座っていた二人の横で、俺はあお向けに倒れた。


こういうのって、束の間の平和とか呼ぶんだろうな…。



「リホ見てー!星きれーい。」


「本当だねー。」



不思議だよなぁ。こうしてると、さっきまで生きるか死ぬかって闘いをしてたなんて、嘘みたいだ。



「ねえねえ見てー、試合始まったみたいよ。そう言えばさー、マウちゃんまたコロシアムで試合するの?」


「剣士辞めてないから出るかもなー。だけど、今はわかんねーや。トーナメントはシードだし、その時に考えるよ。」



「いつ魔物が出るかわかんないしさー、マウちゃん剣士辞めて家でコックやらない?それで、次の試合を引退試合にして、武器はフライパンで出ればいいじゃん!宣伝宣伝。」


「マリーナお前なぁ。俺は無敗のまま引退する伝説の剣士を目指してるんだぞ?そんな奴がフライパンで戦えるかっつーの。」



「それじゃ~いつ伝説になれるかわからないじゃん。フライパンで勝ったら、1試合で伝説になれるよ?」


「ふふっ、確かにそうね。」



「リホまでー。そんなカッコ悪いマネできねーよ。でも物は考えようか…うーん。」



「あ!マウちゃん本当にやろうとしてるでしょ?」


「やっ、やらねーよ。だいたい、フライパンでどうやって戦うんだよ。」



「へ?頭ごちーん。」


「勝てねーよ!星空の下でくだらねーこと言ってると、マリーナの頭に星が降るからな!」


「ホントー?じゃあ、その前に願い事言わなくちゃ!」


「間に合わねーよ!」


「じゃあ練習しよ、練習。」


「するなー!」




「プッ。アハハ。」


『リホ??』



同時に名前を呼んだ闇士(マリーナ)と、不思議そうに天士(リホ)を見てしまった。



「ごっ、ごめんなさい。だって、おかしくて。私、こんなに笑ったの生まれて初めてかもしれない。」



そっか。俺とマリーナには、これが日常だからな。


天士(リホ)の態度に喜んだ闇士(マリーナ)が、リホに飛びかかった。



「リホ、コチョコチョコチョコチョ。」



マリーナの脇腹攻撃は、マジでくすぐったいんだよな。



「アハっ。止めてマリーナー、アハハ。」



「わぁー!」



おっ、俺もかよー!



「だはっ。わかった、わかったからぁマリーナ。アハハ…許して、許してくれー。」


「ハァ、ハァ、ハァ」



ま、マリーナ…そんなに息が切れるまでくすぐるなよ。



「こんな時間が、ずーっと続けばいいのになー。」



リホ…。そうだな。



「そうだね!」


「うん。」



運命…か…。



「またみんなで来ればいいよ!」


「お!マリーナ良いこと言うなー!今度はデリーも誘って、だな。」



「そうだね。うん…。また…みんなで…。」



天士(リホ)の言い方が少し気になったが、コロシアムの声援が心地よい風に乗って響く中、寝そべった俺たちは夜の星に願いを込めた。



「よし、帰るか。」


「じゃあマウちゃん、家まで競争ー!」



「なにぃ!な~んてね。よーい、ドーン!」


「あー、マウちゃん卑怯ー!フライングだってばー!」



「アハハ、リホー!またなー。」


「またねー、リホー!」



「うーーん!おやすみなさーーーい。」



『おやすみーーーーー!』



これ以上、先のことは考えたくなかった。俺は闇士(マリーナ)と、運命を忘れるかのように店まで走った。

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