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「誰が誰に寝取られたって?」

短め

七月十九日。木曜日。午前九時。東京駅前高級ホテル。


「手が痛てえ……」


ビッフェで野菜ジュースを啜りながらグロンドはうめいた。

あの後、ぶっ通しで深夜零時まで連弾をしていた訳なんだが――現役バリバリの仁ノ宮愛と張り合うのは流石に無理があった。


グロンド・キアウイー、四十一歳。そろそろ昨晩の無理が翌日に響くお年頃であった。

なので、遅めの起床である。


「……」


あの連弾の後、グロンドは別に部屋を取りそこで寝た。

部屋に愛と光二人を残して。


「……」


部屋にはダブルベットが一つだけである。

まあ、ソファで寝るという手もなくはないが……それだったら最初からツインに泊まれよって話である。


「……」


いや良いんだ。

愛だってもう十七。結婚だって出来るのである。

だから良いんだ。


「………………って!! 納得できるかあ!!」


突然の大声に集まる視線。

こほんと咳払い一つして、とりあえず味噌汁を取りに行く。

夜更かしした朝には味噌汁。基本である。


「……そりゃ、俺だって人の事言えた立場じゃねえけどさ」


言える立場ではない、というか。

むしろ反面教師にしかなり得ないといっても良い。

初体験は小四。それから二十四で勇者界を去るまで関係を持った相手の数は四桁に上る。


……ケダモノかっ!! とツッコミたくなる来歴である。我ながら。


「だけどさあ……こう、大切に大切に……」


育ててねえ。

育てたのは光である。


「……そうだけどさあ……なんかこう、ネトラレ感がパねえ」

「誰が誰に寝取られたって?」


ひょこ。

危うく味噌汁吹き出すところだったのを根性でこらえたグロンドは勢いよく振り向く。


赤く紅く朱い天才。

仁ノ宮愛がそこにいた。




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