―6 今日、渋谷で5時♪―
―6 今日、渋谷で5時♪―
ひきこもり それは日本国内各地に点々と存在する逸材達だ。奴等はまず滅多に誰とも与する事無く、そうやって孤高の王として、だがひっそりと、そして昼夜など全く関係無く部屋に籠りっきりで(食事とトイレの時は施錠を解き出てくる)、そこで我々凡人が考えもつかない、そんな画期的な発明や発見に、日夜、心血を注いでいるに違いない。
閉塞気味の我が国にとって、その蓄積された膨大なアイデア群は、今後、起死回生の一手になる事は明白である。まさしくそれを至宝と言わずして何と言う。
当然そんな宝を世間も当然放置しておくはずも無く、そこは再三に渡り、当人達との接触を図ろうとする訳だが、いかんせん、孤高の王たる奴等の事、そう簡単には接触などには応じない。
それでも、ごくたまに、そんな孤高の王達だけでは、どうも自らの意思で接近を図ろうとする事が、これまで何件か事例として報告をされている。
そこは互い、王として認め合っているのであろう。だからこその、そんな報告事例と推測される。
私自身、本日その接近遭遇がどうやら起こるらしいとの情報を、毎度いつものルートで入手が出来たので、当然ここは見届けるべきである。だから先に会合地点でそれを待つ。
どうやら両雄とも、どっしりとしたその重厚な腰を上げたらしいとの一報が来た。さあいざ出陣だ、こちらとしても、とても楽しみだ。
両名がどの様な会話をするかを想像するだけで楽しく、時は飛ぶように過ぎた。
だがその第一報があってから、以後何の音沙汰もなく、もうすでにそれから1地時間半を経過、さすがにこれはおかしい。
仕方が無いので、それでもプライバシーの観点からしてもマズイとも考えたが、そこは最悪ピー音を入れるとの事で納得をして、各々の今の状況を聞かせて貰った。
「あ、悪い、家から出る時さぁ、さっき吸ったタバコの火を消したかが何度も気になっちゃって、部屋に戻ってそこを確認して、それから玄関で靴履いてを100回くらい繰り返しちゃったよ、もう時間かかっちゃってさぁ」
「なるほど、そうか。実は俺もなんかそっちと似ててさぁ、居間の戸締りとガスの元栓を閉めたかが無性に気になってさぁ、それこそそっちと同じくらいの回数、玄関とキッチンと居間を往復しちゃってね」
聞けたのはそんな、電話でのやり取りでしたよ。
現在すでに午後5時30分。




