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私の執事は美男子


屋敷に連れ戻された私は、支度部屋で侍女らにさながらお人形状態で着飾らされていた。


ピンクのシルクオーガンジーのドレスに、ホワイトのシルクのオペラグローブ、大きなダイヤモンドのイヤリングと、大きなピンクサファイアのネックレス。

夜の星空のように、青みがかった銀色の私自慢の長い髪は、ピシッと丁寧に結い上げられ、くちびるには、ほんのりピンクのルージュが……

フィニッシュには、最上の薔薇のフレグランスをむせ返るほどに吹きかけられ、ようやく支度を終えることができた。


ーー壮絶な時間だったわ。


『ステラお嬢様〜〜お綺麗ですわぁ!! 先程のお姿からは見違えましたよ!! なんと気品のあるエレガントなお姿なのでしょう!!』


メアリーは衣装の管理を任されてるから、木登りで汚れたドレス姿の私を見るなり腰を抜かしていたものねっ、、


『エレガントに見えているなら何よりよ。皆ありがとう』



ふぅ、それにしても私……華美に着飾りすぎなんじゃ……?

身に付けられたジュエリーだって、大きくて主張しすぎているような……

あぁーーもう気が重くなってきた!!

宝石も重いけど気も重いっ!!!!


ーーコンコン、、


『私よ、準備は整ったかしら?』


お義母様だわっ!!


『はい、どうぞお入りになってください』


ーーガチャッ、、


ロミオとジュリエッタを連れたお義母様が支度部屋に入る。


『ステラ、なんて美しいことっ!! ドレスの色味もいいわねーー!! やはりペールピンク色のドレスにして正解よ!! とっても可愛いわぁ!! 私が次に絶対流行色になると確信して見立てたお色だもの〜〜品のある甘さが王城での舞踏会にピッタリ!!』


ドレスアップした私を見たお義母様が目の色を変えた。


『え、えぇ……』


ピンクのドレスに興味津々で釘付けになっていらっしゃるわね……こうなっては誰もお義母様を止められない。

今日のドレスのデザインを、デザイナーのハリスさんと一緒になって熱心に考えていたもの……。


『ウエストにあるアクセントのリボンも可愛らしいわぁ!! フロントにリボンがあるから目を引くインパクトさもあるし、私はこういったデザインも映えると思ったの!! まあ、、このダイヤモンドのイヤリングと、ピンクサファイアのネックレスも素敵ねーー!! 結われた髪も、両サイドの編み込み方が綺麗だわ!! もう全部がパーフェクトよっ!!』


お義母様……一人で興奮してらっしゃる……


お義母様は非常におしゃれ通だ。

ドレスのデザインや色にもこだわりが強く、おしゃれするのがとにかく大好き!!

昔はデザイナーになるのが夢だったらしい。

そしてトレンドヘアもいち早く取り入れるチャレンジャーで、おしゃれに貪欲なお方。

時々風変わりな髪型になっているけれど……そんなところもチャーミングなお義母様。


『ネイサンにも、ステラの美しいこの姿を見て欲しかったわねぇ……』


目を伏せ気味にお義母様が残念そうにしている。


領主としても、アステア国の外務大臣としても、常日頃からお忙しくされているお父様だもの……

あちこち行き来されていて、滅多に屋敷で過ごされることはないしね……っ。


『お父様はお仕事で屋敷へお帰りになれませんから…… 仕方ありませんわ。それにあまり見られたくはないです。なんだか私には似合っていないような気がして……』


お父様が見たらビックリしてしまうんじゃないかしら?

いつものおてんばな私の姿からはかけ離れてて、、


『そんなことないよ、姉上っ!! お姫様みたいに綺麗だよ!! ジュリエッタもそう思うよね!?』


『うんっ!! ステラお姉様、本物のお姫様みたいだわ〜〜!!』


ジュリエッタのつぶらな瞳から羨望の眼差しが……


『嬉しいわ、ありがとう。ロミオ、ジュリエッタ』


『いいなぁ〜〜私もお姉様と舞踏会に行きたいな〜〜』


私も連れてって〜〜な上目遣いがなんとも可愛いわね……ジュリエッタ。


舞踏会なんてたいして良い場じゃないけど、ジュリエッタにはこうやって綺麗に着飾り、お城へ行くことが羨ましく思うのでしょうね。


つぶらな瞳に目線を合わすよう屈んでみせる。


『ジュリエッタもいつかお城で開催される舞踏会に出席する日がくるわよ。その日を楽しみにしていればいいわ。ねっ!!』


『は〜〜ぃ、お姉様』


そう言ってる当の私は全然楽しみではないわ……憂鬱でしかないもの。


『さぁ、皆でステラをお見送りしましょう。セオドアもエントランスで待っているわよ』


セオドアに苦笑いされそう……さっきまで木登りしてドレスを汚していた私が、こんなにもお上品に着飾ったりしちゃって……。


ーーもしくはある意味呆然とするかも、、







王都へ向かう私を見送りに皆がエントランスに集まった。


馬車の扉の前に立つセオドアが私を見ている。


いつもより高めのヒールにおろおろし、ドレスの裾を踏まないよう慎重に馬車まで歩いて行く。

そのぎこちなさを見兼ねたセオドアが、素早く私のもとへ走り寄った。


『ステラお嬢様、お手を……』


『は、はい』


差し出された手をとると、セオドアは私に微笑みかけた。


『大変お綺麗でございますよ』


『…… セオドアは嘘つきねっ。そんなこと思ってないでしょう?』


しとやかな淑女になれない私には似合ってないって思ってるはず!!


『本当にお綺麗だと思っていますよ。ドレスもとてもよくお似合いです。今宵の淡いピンク色のドレスですと、お嬢様の深い青色の瞳がいっそう際立って見えます。まだ見ぬ青い星は…… ステラお嬢様の瞳のような星なのかも知れませんね』


セオドア……視線も逸らさぬまま何を言うの……っ。


『そんなに褒められたら恥ずかしいわよ……』


『くわえて、お嬢様は普段は髪を結い上げられることがございませんので、いつにも増して華麗で…… 尚且つ落ちついたご印象にお見受けいたします』


ついさっきまで木登りしていた私が!?


『そ、そうかしら? だけど…… セオドアがそこまで言うなら少しは自信が持てるかも……』


『はい!! ステラお嬢様は世界中の誰よりもお美しいですよ』


せっ、、せ、世界中の誰よりもお美しいって……真顔で言ってる……


『あ、ありがとう……』


『ふふふ。それでは参りましょう』


『え、えぇ……』


セオドアは人を褒めるのが上手なのよねぇ。

侍女らのハートもしっかり射止めてるし。

私にはくすぐったいけど……。


セオドアと共に馬車に乗り込み、見送りの皆に手を振って、私はいざ舞踏会へと出発した。






私の手前に座るセオドアが、お仕事モードで眼鏡をかけ、招待客のリストを確認する。


『お嬢様、すでにご承知のことと存じますが、今宵の舞踏会のエスコート役は、マクシマム公爵家のジャスティン様がお務めなされます』


マクシマム公爵家……お父様とマクシマム公爵は仲が宜しいのよね。

はぁ……あの女たらしジャスティン様が、よりにもよって私のエスコート役だなんて最悪だわ!!


『えぇ……』


『ステラお嬢様、いかがなされましたか?』


セオドアには隠そうとしても、いつも私の感情の波を読みとられてしまう。


『う、うん…… 素直に白状すればエスコート相手が嫌なの……っ』


もうテンション下げ下げだわーー!!!!

今日という日が気ノリしないのは、エスコート相手が難有りなせいもあるのよ!!


『名門マクシマム公爵家のご嫡男ジャスティン様は…… お嬢様のエスコートのお相手として申し分なく、ふさわしいお方だと思われますが?』


何がご不満かと言いたげに、眼鏡をクイッと上げ私を見るセオドア。


『家名だけを見ればそうなのでしょうね。けれど…… 上辺だけを見て、私のエスコート相手にふさわしいだなんて言っているようでは、セオドアには女心がわからないってことねッ』


ぷっくり頬を膨らませ私が愛想なく言い放つと、急に真剣な表情をしたセオドアが眼鏡を外し、私を見つめなおした。


『…… 仰るとおり…… 私には女心はわかりかねます。ですが…… ステラお嬢様のお気持ちにだけは、どのような時でも寄り添っていたいと思っておりますよ』


ま、また真顔でそんなことを言って……

まじまじとして見られたら、最近は私でも恥ずかしくなる……

なんというか……温和な顔つきをした美形だから……?


レッスンの時は悪魔執事になるけど、、


まぁセオドアは頑張ったあとにはいっぱい褒めてくれるものね……私に美味しいお菓子をたくさん用意してくれたり。


それに誰に対してでも細やかな心配りができるし、女性を褒めるのもお手のものっ、てくらい褒め上手。

う〜〜ん、こういうところが女性にモテるんだろうなぁ。

ジュリエッタもセオドアにぞっこんだもの。


ーー今更だけどセオドアって……モテモテの美男子なのよね。












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