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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第152話:落下する光

帝都南東区画の崩落域。


砕けた石畳の中央に、黒い円が広がっていく。


最初は影のようだったそれは、やがて確かな輪郭を持ち、

地面そのものを侵食するように縦へと裂けた。


地下へと続く穴。


その奥は、光を拒む。


軍の包囲陣が後退する。


「包囲を維持しろ! 反逆指定対象を逃がすな!」


将官の怒号が響く。


反逆指定。


その言葉は、さきほど正式に通達されたばかりだった。


アラン・ルクレディアは、帝国命令違反の疑いにより、

戦術的拘束対象。


だが今、彼を囲んでいるのは闇ではない。


帝国軍だ。


前方――縦穴の奥からは濃密な魔力の脈動が上がってくる。


後方――照準を定めた魔導砲が、冷たい光を宿している。


挟まれている。


逃げ道は一つしかない。


アランは短く息を吐いた。


「……行く」


リリアと目が合う。


彼女の瞳は迷っていなかった。


「生きて戻りなさい」


その一言。


次の瞬間、風が吹いた。


リリアの魔法が、背を押す。


アランは躊躇なく縦穴へと身を投じた。


落下。


風が頬を裂く。


闇の回廊は、ただの穴ではなかった。


壁面には、帝都建築と同じ石材が混ざっている。

だがその隙間を縫うように、黒い結晶構造が走っている。


人工。


だが帝国の設計ではない。


(深い)


上空で、閃光が瞬く。


軍が撃った。


光弾が追ってくる。


アランは空中で槍を回転させる。


《ルミナ・シェル》。


半透明の防御膜が展開し、衝撃を斜めへと逸らす。


だが完全には防げない。


砲撃の魔力波が壁面へ触れた瞬間、地下構造が震えた。


波形が乱れる。


闇が反応する。


増幅。


(やっぱり……)


闇は、軍の攻撃を“材料”にしている。


落下は終わる。


重力が強くなる。


着地。


衝撃を殺しながら転がり、立ち上がる。


そこは地下第一層。


広い空間だった。


天井は高く、石畳のような床が広がっている。

だがその下では、確実に何かが脈打っている。


生きている空間。


次の瞬間。


霧。


黒い霧が横から吹き付ける。


同時に、殺気。


三体。


左右と正面。


「来る」


《ルーメン》。


光が拡散し、輪郭を浮かび上がらせる。


闇属性戦闘個体。


だが以前より洗練されている。


無駄がない。


完全に殺しに来ている動き。


《ライトヴェイル》。


瘴気の侵食を遮断。


一体が跳躍。


上から落ちる刃。


アランは半歩ずらし、《ルミナエッジ》で迎え撃つ。


閃光。


斬撃。


一体が崩れる。


だが霧が再び流れ込む。


倒れた個体の残滓が、床へ吸い込まれる。


再構築。


(速い……)


《ミラージュ》。


残像を展開。


敵の認識をずらしながら接近。


《バッシュ》。


衝撃波で隊列を崩す。


二体目が砕ける。


だが、また。


上から、砲撃。


軍の追撃部隊が降下し始めている。


光弾が空間を切り裂く。


それが天井へ触れた瞬間、地下構造がさらに脈動した。


敵個体の出力が上がる。


霧が濃くなる。


軍の魔力が、闇を育てている。


「……止めないと」


個体を倒しても終わらない。


根は、空間そのものだ。


アランは槍を床へ突き立てた。


深く。


魔力を流す。


整理ではなく、攻撃でもない。


“固定”。


脳裏に、あの波形が浮かぶ。


演算室で見た、闇の振幅。


中心はない。


だが、軸はある。


光は、整える力。


ならば――


乱れた体系に、軸を通す。


「……止まれ」


魔力が地面へ流れ込む。


縦穴を貫いて地上へ伸びる、一本の光。


乱流が、触れる。


弾かない。


吸収しない。


ただ、揃える。


地下第一層の魔力振幅が、一瞬だけ同期する。


霧の動きが鈍る。


再構築が遅延する。


空間が、確定する。


その瞬間。


理解した。


「……《ルミナ・アクシス》」


光の柱が、構造の“基準”になる。


闇が震える。


奥から声。


低く、静かに。


「……そこまで届くのか」


少年の気配。


姿は見えない。


だが確実にいる。


「光が、体系に触れた」


地下第一層は、完全ではないが安定した。


暴走も、加速も止まる。


アランの膝が揺れる。


消耗が大きい。


だが立つ。


上空から、軍部隊が降下してくる。


将官の声が響く。


「地下層で異常停止反応! 追撃を継続せよ!」


闇も、軍も、同時に迫る。


第一層は確定した。


だが地下はまだ深い。


戦場は、今ここから本格化する。



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