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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第140話:最悪のタイミング

霧の中心が、静かに裂けた。


音はなかった。

闇が“開いた”だけだ。


そこに立っていたのは、

もう隠す気のない存在。


「……やっと、直接会えたね」


少年だった。


霧よりも濃い闇をまといながら、

その声は、驚くほど穏やかだった。


アランは、槍を構える。


「ここは――」


「管理外区域、だろ?」


少年は、軽く肩をすくめる。


「君たちは、ちゃんと境界を越えてきた。

だから、僕も出てきた」


リリアが、一歩前に出る。


「あなたが、これを作ったのね」


「正確には」


少年は、床に広がる歪みを見下ろす。


「集めて、重ねて、残しただけだよ。

捨てられたものを」


空気が、張りつめる。


「撤退する気は?」


アランが、静かに問う。


少年は、首を振った。


「ない」


「戦う?」


「必要なら」


一瞬、視線が交わる。


――そのときだった。


遠くから、重い魔力反応が近づいてくる。


リリアが、顔をしかめる。


「……来るわ」


アランも、理解した。


(早すぎる)


霧の向こうから、

整然とした足音。


装備音。


そして――


「前方の未確認個体に告ぐ!

帝国軍の指示に従い、武装解除せよ!」


軍服。


重装魔導兵。


帝国部隊だった。


少年は、その光景を見て――

はっきりと、笑った。


「ほら」


その声には、嘲りも怒りもない。


ただ、諦観があった。


「これが、帝国だ」


「説明できないものを前にすると、

まず――撃つ」


軍の指揮官が、叫ぶ。


「全隊! 魔法斉射!」


次の瞬間。


火、雷、圧縮魔力。


無数の魔法が、少年へ放たれた。


だが――


何も、起きない。


魔法は、届いている。

確かに当たっている。


それなのに。


「……効いてない?」


「違う」


アランは、歯を食いしばる。


「当たっていない」


闇が、魔法を“ずらしている”。


弾いても、消してもいない。

存在そのものを、別の位相へ逃がしている。


「言っただろ」


少年は、静かに告げる。


「ここは、君たちの管理の外だ」


次の瞬間。


闇が、反転した。


霧が、刃となって軍列へ走る。


「防御――!」


間に合わない。


一人、二人、三人。


重装兵が、地面に崩れ落ちる。


即死ではない。

だが、戦闘不能。


「下がれ!」


指揮官が叫ぶ。


混乱。


隊列が、崩れる。


「……だから、来るなって言ったのに」


リリアが、唇を噛む。


アランは、前に出た。


「やめろ!」


少年を見る。


「ここでこれ以上やれば、被害が広がる!」


少年は、ほんの一瞬だけ考え――

そして、首を振った。


「違う」


「被害を広げたのは、僕じゃない」


視線が、軍へ向く。


「選択したのは、帝国だ」


闇が、さらに濃くなる。


だが――

それ以上、攻撃は来なかった。


「今日は、ここまでだ」


少年は、静かに言う。


「十分、見せてもらった」


視線が、アランに戻る。


「君が、何を選ぶかも」


霧が、収束する。


少年の姿が、闇に溶ける。


残されたのは――

倒れた兵士たちと、沈黙。


「……撤退だ」


軍の指揮官が、苦渋の表情で命じた。


帝国部隊は、傷者を抱えて引いていく。


誰も、勝ったとは言えなかった。


アランは、槍を下ろす。


胸の奥に、重い感覚が残る。


(これが……現実か)


光は、まだ答えを出していない。


だが、

世界はもう待ってくれない。


闇は、敵だ。

帝国も、正義ではない。


――選ぶのは、誰か。


その問いだけが、

霧の消えた広間に残っていた。


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