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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第127話:闇の痕跡

第三層の最奥は、

それまでとは明らかに異質だった。


通路は、無駄がない。

曲がり角の角度、段差の高さ、壁の厚み――

すべてが合理的すぎる。


「……おかしいわね」


リリアが、低く呟く。


「第三層は“反応層”のはずよ。

こんな――設計図みたいな構造じゃなかった」


アランも、同じ違和感を抱いていた。


自然に生まれたダンジョンではない。

選択を蓄積する層でもない。


(これは……)


床に刻まれた溝。

壁面に並ぶ、意味を持つ配置。


どれも、

人が“使う”ことを前提に作られている。


「人工物だ」


アランが、はっきりと言った。


「誰かが、意図して組んでる」


その瞬間。


前方の空間が、

音もなく――沈んだ。


闇が、染み出すように広がる。


《ルーメン》


即座に光を走らせる。


だが、照らされた闇は、

後退しなかった。


むしろ――

光を“測る”ように、形を変える。


「……来る!」


リリアの声と同時に、

闇が、立ち上がった。


人型。

だが、顔はない。


輪郭は人間に近いのに、

関節の動きが、明らかに戦闘用だ。


「敵性反応、明確!」


後衛が叫ぶ。


返事はない。


次の瞬間、

闇の個体が――踏み込んだ。


速い。


第一層、第二層の比ではない。


「殺しに来てる!」


アランは、反射的に前へ出た。


槍で受ける。


――重い。


衝撃が、柄を伝って腕に走る。


(力じゃない……圧だ)


《ルミナエッジ》


光の刃で切り裂く。


だが、闇は“裂けない”。


刃が、意味を失ったように、

闇の中へ吸われる。


「光を……食ってる!?」


「違う!」


アランは叫ぶ。


「消してない!

“無効化”してる!」


闇の個体が、再び踏み込む。


狙いは――

アランではない。


後衛。


「下がれ!」


間に合わない。


その瞬間、

アランの判断は、一つだった。


《ルミナ・シェル》


光の球が展開する。


直撃。


だが――

今度は、衝撃が“通る”。


光が、軋む。


「っ……!」


防御が、削られる。


これまでの敵とは、

明確に違う。


訓練でも、実習でもない。


(これは……)


闇の個体が、

わずかに首を傾げた。


観察。


評価。


そして――

次の攻撃へ移ろうとする。


その仕草を見た瞬間、

アランは、はっきり理解した。


(試されてるんじゃない)


(選別されてる)


「全員、後退!」


アランは叫ぶ。


「これはダンジョンの敵じゃない!」


闇の個体が、

一歩、踏み出す。


空間が、歪む。


殺意が、

はっきりと伝わってくる。


逃げ遅れたら、

確実に死ぬ。


――その時。


闇の個体が、動きを止めた。


まるで、

“十分だ”と判断したかのように。


次の瞬間。


闇は、霧のように崩れ、

床に溶ける。


残ったのは、

冷たい静寂だけだった。


誰も、すぐには動けなかった。


「……今の」


リリアの声が、震える。


「偶然じゃない」


「うん」


アランは、槍を下ろさなかった。


「明確な敵意だった」


訓練用でもない。

自然発生でもない。


誰かが――

明確に“殺すため”に作った存在。


アランは、確信する。


これは、

もう曖昧に扱える相手じゃない。


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