第二章 庇委籠 ⑤
祝音さんはテントの中にいた。ずっとテントの中で待っていたのだろうか。もう、日も落ちている夜ごはんを食べようか。
「もう、日も落ちているので夜ご飯を食べましょう」
「はい」
「今回はどれにしますか」
一つ一つどれが良いか尋ねていた。カレーが良いようだ。晩御飯を食べ終えると本部で聞いた内容を話した。
「ご両親を一旦本部で預かってもいいですか?祝音さんが、ご両親が遠くに行くときは絶対に参加できるようにしますので」
「……。はい」
少し、考えはしたが了承してくれた。明日、やることが一つ決まった。そのあとに明日の予定を話し終えると寝る支度を整えた。祝音さんが寝るのを確認してから私は明日の打ち合わせをした。今日は寝るか寝ないか。寝ずに貯まっている仕事を済ませるか。彼の通常業務である担当している相談者や入居者のレポートを作ったり、まとめる仕事がある。二日間分の仕事が貯まっている。昨日はできなかったし、一昨日は急に入ったからな。できるだけためないようにしないと。というより、貯めたら手が追い付かなくなる。外で仕事を黙々と進めているとテントから祝音さんが出てきた。
「何をしているのですか?」
祝音さんの方から尋ねてくるとは思わなかった。
「仕事をしています。起こしてしまいましたか?」
「ううん」
と首を横に振った。
「昨日も夜中起きていましたよね。」
気付いていたのか。まぁバレても問題はないけど。
「私は寝なくても平気な体なんで大丈夫です」
「そうなんですか」
「そういえば、最初に私が来た時に私が平気なことに驚いてなかったですよね」
「だって、私の元に来るのだったら、大丈夫な人が来ると思ったから」
それはそうかもしれないが……。
「どうして、平気なんですか。」
「私の能力は『健康』です。病気にならないのです。」
「ずるい。」
私に聞こえるか聞こえないくらいの小声で彼女は言った。祝音さんからすればなぜご両親に私の能力がないのか不満なのだろうか。私の能力は多分傍からみれば便利な能力に見えるのだろう。
「祝音さんの能力を調べているのでどういう能力が分かれば、対応することが可能かもしれません」
「いい。私もお母さんとお父さんと一緒の」
「それはやめた方がいいと思うよ。」
「どうして、私なんていなくなれば、私もお母さんとお父さんのとこに行きたい」
彼女は、怒号の入った声で言った。これは、本音だろうと思う。
「だって、祝音さんのお母さんとお父さんは祝音さんに生きてほしいと思っていると思うよ」
「どうしてわかるの」
と彼女は私に困惑と怒りのこもった声で返答した。
「絶対とはいえないが、憶測だけどこの場所に祝音さんを連れてきたこと、それが、私は祝音さんに生きてほしいだろうなと思った」
祝音さんは困惑している様子だった。ここに来るまでに来た情報と祝音さんがここに運ばれてきたことを考えると推測だが……。
「祝音さんの将来や祝音さんのことを考えている祝音さんのご両親が祝音さんのことを死んでほしいって思わないと思うよ」
私は淡々と説明口調で話した。祝音さんは困惑した様子だ。
「それに子供に死んでほしいと思う親はいないと思うよ。」
「そう……。」
私は事実を言った。この言葉は真実ではない。ただの推測だ。嘘かもしれない。でも、そうではないと思いたい。そうであってほしい願望だ。けど、それが生きることに繋がるなら喜んで嘘をつこう。嘘を嘘で終わらせないために真実に変えるために動こう。私にできるのはそれだけだ。祝音さんはどうだろうか。こんな夜中だ。眠いだろう。それに加えてこんなことを考えるのは疲れるだろう。
「もう、寝ます」
一言だけ言うとテントに戻った。さすがに疲れたのだろう。私は仕事を終わらせよう。月明かりに照らせながら、仕事を続け、終えた。どうするか、テントの中に戻っても良いがこういうときは、一人の方がいいだろう。多分。日が昇ってきた。
「う~ん。やっぱり、気持ちが分からないな。」




