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過労死から始まるドラゴン転生  作者: questmys
三章 成体期
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8 神と神

「獣神様はお下がり下さい。ここは私が」

 エルフ美女は黒ドラゴンを庇うように前に出て手に魔力を集中し始める。そして彼女の目の前には大きな魔方陣が描かれ始めた。


 何故か勝手に出て来た『全知』がエルフ美女の情報を教えてくれる。

 彼女の名前はクアランタ。大陸最北端の国、エボカナ国の魔王である。先代邪神が倒れてからずっと、その忘れ形見である目の前の黒ドラゴンを甲斐甲斐しく世話し続けていた。そしてフルの故郷であるあの寒村まで魔物を送り込み俺を亡き者にしようとしていた相手でもある。

 渋い。口の中が渋い。勝手に出て来て勝手に代償を請求するこのクソスキルよ。


「待たれよ。獣神様、その役目、是非ともこのジルダリアスに!」

 エルフ美女の魔法はソファーベッドの後ろから聞こえた言葉により阻害された。のそりと現れたのはかつて知ったる顔と声。


 馬野郎、生きとったんかワレ!


「おいおいおい、なんだよ死んだかと思っただろうが、心配させやがってこいつめ。あいや、こやつめ、ハハハハハ!」

 フランクな態度で生存を喜んでやっているというのに、エルフ美女と馬野郎はどうにも渋い顔である。渋いのはこっちの口の中だっつーのに。


「ジルダリアス、貴方まさか……」

「邪推は止せ。このような胡散臭い輩に(くみ)するものか。俺様の忠誠は獣神様にのみ向けられている!」

 どうだか、と小さく呟きそっぽ向くエルフ美女。この二人は仲悪いのかね。

 てか、胡散臭いとか言われちゃったよ。失礼なやっちゃな。

「ははははは、お前の忠義を疑いはしないとも、ジルダリアス。クアランタもそろそろ許してやれ。

 騒がしくして悪かったな、女神さんよ。それともコート、と名前で呼んだ方がいいか?」

 二人を仲裁するさわやか黒ドラゴン。俺こいつ嫌い。なんか嫌い。女神と獣神の対立とか関係無しに気にくわない。


「おいこら馬野郎。お前そこの黒ドラゴンに殺されてただろ。何で生きてるかはこの際おいといても、熱い勧誘を送った俺よりぽっと出のは虫類になびくってどういう魂胆よ」

「生きてることを主に置けよ……。

 あの時俺は、ジルダリアスの願いを聞き届ける振りをして、その実この部屋へと転移させ逃がした。それだけのことだ」

「お前にゃ聞いてねえ」

「つれないことだな。まあ、調べれば分かる(・・・・・・・)ことだしな」

 チッ。チッ。チッ。

 なんだかなぁ。知らず知らずに舌打ちしてしまうよ。この「俺分かってますよ」感。しかもスキル『全知全能』を有するこの俺に対してだよ。見透かすような口振りで話してくれるじゃぁないか。


「さて、場所を変えようか。二人はここで待っていてくれ。ここから先は神の戦いだ」


 黒ドラゴンの言葉に馬野郎とエルフ美女が反応するが、それを待たずに俺と黒ドラゴンは別の場所へ転移していた。

 さて、ここはどこかね。見渡す限りのこの荒野。

 しっかし、ほぼ同じ時期に生まれたというのに随分と魔法がお得意なようじゃないか。こちとら『全知全能』を手に入れるまで自分の魔力すら満足に把握出来ていなかったというのに。


「ここなら邪魔は入らない。俺が魔法で作り出した異界だからな。見た目ほど広くもないし殺風景なのが難だが、突貫工事で作った割には上出来だろう?」


 ああ、そういえばこいつは先代の邪神から力の引継ぎをしてもらったんだったっけ。いいねえ、羨ましいねえ、生まれながらにチートってのは。こちとら言葉を覚えるだけでも苦労したっていうのに。


「分かるぜ、あんたの考え。それは正解だとも言えるし、不正解だとも言える」

 チッ。チッ。持って回った言い方をしやがって。

「悪いな。性分なんだ」

 そういやこいつも転生者なんだっけか。てことは前世からの性格ってことか。

「そういうことだな」

 おっぺけぺー。

「…………おっぺけ?」


 おお? おっぺけぺー節を口にするとは。半信半疑だったが、もしやこいつ、本当に俺の心を読んでいる?

 こりゃいかん。

「神の力、スキル『全知全能』発動!」

 おげぇ、苦い! ぐぎぎぎぎ、ど、読心を拒否、心の防壁を作るのだ!


「おや、読めなくなった。それが神の力、『全知全能』。竜王さんから譲り受けたっていうチートスキルかよ」

 む、そこまで知っているとは……心を読むだけでは無しに記憶も読まれていたのか?

「そう不思議そうな顔をするなよ。不思議そうっていうか、不思議な顔っていうか……大丈夫かその(つら)。尋常じゃねえな。

 そうか、『全知全能』は心を壊す諸刃の剣だったっけな。ふん、なかなか大変そうじゃあないか」

「うるせえ。便利で羨ましいだろう。やらんぞ」

「いるかそんなもん。第一、俺には『全知全能』なんて過ぎたスキルは必要ないのさ。

 生まれ落ちた時から持つ俺だけのスキル、『博識万能』がある限りな!」

「な、なぁにぃぃぃぃっ!!」


 は、『博識万能』だとぉっ! 『全知』に対する『博識』、『全能』に対する『万能』。それは――それはつまり――――


 劣化スキル!


 胸張って言うほどのことかね。滑稽。正に滑稽。格上にドヤ顔キメて無様を晒す哀れな畜生よ。あひゃーっひゃっひゃっひゃっ!


「因みにペナルティーは無い」

「何それ(ずっこ)い!」


 俺がカツオ節よろしく身を削って使うスキルに対して、憎いあん畜生はノーリスク! 無利子・無担保・安心・安全・無制限保証!

 正にチート! これぞチートだよ! クリア後のおまけモードだよ! それか難易度ベリーイージー。


「こ……このゆとり世代がぁ! 世の中舐め腐ってんじゃねぇぞ!」

「ふっ。憤る気持ちも分かるが、まあ、落ち着けよ。心を削られるとは言っても『全知全能』は神の力なんだろう?

 ここからが勝負さ。

 あんたの強大な力は制限付き。心が壊れるまであと何回使える? それまでに俺を倒せたならあんたの勝ち。壊れるまで堪え切れれば俺の勝ち。そういう勝負だ」


 黒ドラゴンがにやりと笑う。

 なるほどね。この俺ドラゴンとチキンレースをしようってことか。俺の心か、奴の身体が壊れるまで。

 くっくっくっ、上等じゃねーか! 相手になってやるぜ!

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