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過労死から始まるドラゴン転生  作者: questmys
二章 亜成体期
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1 王都にて

 王都への道。それはそれは過酷な旅の道程。

 山あり谷あり河もあり、幾多の試練を超えて旅を続けた俺達は今や屈強な戦士へと変貌を遂げていた。

 チーム・ザ・脳筋。筋力こそが僕らの全て!

 魔王軍もなんのその。腕力の猛りを以て、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。


 嘘や。


 村から応援を呼んで騎士が村に着くまで数日しかかかっていないのだ。片道ならもっと早い。

 この数日の距離を長いと見るか短いと見るかはその人次第。自分は正直もっと長旅になると考えていたので拍子抜けである。ファンタジー小説だと馬車移動で数ヶ月の旅とかざらにやっているイメージだったので。

 ところがどっこい、日本縦断で考えても、北海道から沖縄まで車で移動して三日程度。馬は休憩が必要だし、日が落ちてから出歩くのは危険なので一日十時間程度の移動だが、それでも数日あれば結構な距離を移動できた。

 交易路が意外にもキチンと整備されていたことも大きかった。腐っても王都への道、少し進めば街々や他国への交易路がすぐに見つかった。あとは道なりに進んで、道中の町や村で宿を取れば良い。野宿すら必要なかった。


 はっきり言って楽勝であった。


 強いて言えば、俺とトラスタが目立つので途中途中で奇異の目を向けられたり、道中一緒になった商人達と同行したり、寄り道した村で依頼を受けて魔物討伐したり、トラスタ(中の人)が村娘に好意を持たれてフルがむくれたり、とまあ、その程度だ。

 わりかし平凡な旅だったと言えよう。


 よって、割愛する。


 空から見下ろせば四方を壁に囲まれた大きな街と中央にそびえ立つ城が見える。あれが王都か。


 ◆


 外壁の門の手前まで来るとトラスタは馬を下り、粒子の放出を止めた。

 敬礼する門兵に手を挙げて挨拶し近づいていくが、こいつ、口がきけないくせにどうやって俺達のこと説明する気なんだろうか。

「お帰りなさいませ副団長殿! お連れのお二人……二人というか、女性と……? えーと……」

 そうだよね。なんて聞いていいか悩むよね。

「コートです。ドラゴンやってます。ひとつよろしく」

「は、はあ」

「フルです。えっと、トラスタ様の……えーと……」

 フルも俺から降りて自己紹介を始めるが、どうにも歯切れが悪い。


 どしたの? ああ、神託の話をしていいものか悩んでいるのかな? そりゃそうだ。どの辺まで伝わってる話なのかしらないもんな。

 よし、ここは俺に任せとけ!


「あの、タレ目いたじゃないですか。トラスタと一緒に出た、騎士団の。名前なんだっけ」

「アルフォンス殿のことだろうか」

「そう。そいつの代わりです」

「ええ~……?」

 門の左右に一人ずつ立っていた門兵が、そろって「どういうこと?」と顔に疑問を浮かべる。

「なあに、ただの女の子とドラゴンさ。身分はこの鈍重騎士殿が保証してくれるから。

 中入ってもいい?」

 門兵はチラとトラスタを見て、その首肯を確認する。

「入って良し! 街で問題など起こさぬよう心がけよ!」


 中に入ったら入ったで好奇の目を向けられる。まあ、道中でも同じ扱いだったので慣れたものだ。王都だけあって規模は段違いだけれども。

 なお、門を抜けてからは全員徒歩である。

「身分証明書とかいらないんだね。預かり金とか」

 と疑問を投げかけてみるも、トラスタからは当然のように返答無し。こいつ、なんでこんな不便な鎧着てるんだろう。

「なにそれ。街に行くと普通はそういうのが必要なの?」

「この辺だとどうなんだろ。俺の知ってる限りでは、変な奴を街に入れたりしないためだったり街の財源だったりで必要だったんだけど」

 もちろん前世のサブカルチャー知識です。地球で言うところのパスポートや出入国税みたいなやつな。

 今回は副団長殿のコネで顔パスだったのかも。さすが封建社会、特権階級の身分がものをいうぜ。

「んで、副団長殿よ、どこに行くんだ? まさかまっすぐ城に向かう気か?」

 心の準備とかまだなんで勘弁願いたい。権力に弱い小市民と田舎娘のコンビなので。

 ところがトラスタは手を振って否定。先に行く場所があるようだ。俺とフルは後ろをついていくばかりである。だって説明してくれないし。


「はー、大っきいねー」

 フルと二人、口を開けたまま建物を見上げる。

 トラスタに連れられ訪れたのは教会――いや、これだけ大きく立派なものは神殿と呼ぶのだろうか。布教用の教会ではなく、神の住まう宮、神殿。一般のお客様お断りの風格である。


 僕ら田舎者の場違い感よ。


 フルは田舎娘丸出しだし、俺にいたっては裸丸出しである。立場が逆であればやんわりお帰り願う風体であろう。

 ただ一人、トラスタだけが堂に入っている。ここまで牽いてきた馬を見習いっぽい若い神官に渡して、中へ入ろうと身振りで促す。

 すると、ほどなくして奥から老女が現れた。白を基調とした祭服を纏い、左右に御供を連れた老女。

 この厳かな出で立ち。よもや、この老女が神殿の大祭司だろうか。


「ようこそお越し下さいました。私は女神クシュレッダ様に仕える者。マイナと申します。

 若き聖女様、貴方のお名前をお聞かせ願えますか」


 老成した柔らかい物腰。穏やかな微笑。これこそ聖女と呼ぶにふさわしい。


「はっ! わ、わ、わたしは、フル、と申します。こ、こちらのドラゴンは、う、うちで飼っている、コート、です」

 一方、うちの聖女は噛み噛みであった。

書き溜めが……あんましできんかってん……。

今後は予定通り、週一更新くらいのペースで。

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