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紗奈と安心の物語  作者: たい


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安心って何?


第二十三話では、莉奈が「安心」について改めて三人に尋ねます。


旅行の時には分からなかったこと。


その意味を少しずつ理解していく物語です。



第二十二話のお出かけから数日後。


四人はいつもの駅前のカフェに集まっていた。


休日の午後。


店内には穏やかな時間が流れている。


美咲は新作のケーキを食べている。


悠斗はコーヒーを飲みながら景色を眺めていた。


紗奈もゆっくりとくつろいでいる。


そんな中。


莉奈は少し考え込んでいた。


⸻


「どうしたの?」


紗奈が声を掛ける。


莉奈は少し迷った後、口を開いた。


「あの……」


三人が顔を向ける。


「旅行の時から、ずっと気になっていたことがあるんです」


美咲が笑う。


「なになに?」


莉奈は少し照れながら言った。


「安心って、おむつのことなんですよね?」


⸻


一瞬だけ静かになる。


そして美咲が笑った。


「うん、そうだよ」


莉奈は少し驚いた顔になる。


「やっぱりそうなんですね」


悠斗も頷いた。


「僕たちの中では、そういう意味で使うことが多いですね」


紗奈も微笑む。


「もちろん、それだけじゃないけどね」


「でも私たちにとっては大事な安心なんだ」


⸻


莉奈は真剣に話を聞いていた。


「どうしてですか?」


素直な疑問だった。


美咲が答える。


「もしもの時のためだよ」


「もしもの時?」


莉奈が聞き返す。


「うん」


美咲は頷く。


「何も起きないのが一番だけど」


「絶対に何も起きないとは言えないでしょ?」


莉奈は静かに頷いた。


⸻


悠斗も話し始める。


「僕は昔、予定変更が苦手でした」


「少し予定が狂うだけで不安になっていたんです」


莉奈は意外そうな顔をした。


「悠斗さんでもですか?」


「はい」


悠斗は苦笑する。


「でも準備をするようになってから、少し気持ちが変わりました」


⸻


紗奈も続ける。


「前の私はね」


「何も起きないことばかり願ってた」


莉奈は静かに聞く。


「でも今は違うんだ」


「何かあっても大丈夫なように準備しておく」


「それだけで気持ちが全然違うの」


⸻


莉奈は少し考え込んだ。


旅行の待合室を思い出す。


あの日の自分は不安でいっぱいだった。


一人だった。


何も起きないでほしいと願うことしかできなかった。


でも紗奈たちは違った。


落ち着いていた。


余裕があった。


その理由が少しずつ分かる気がした。


⸻


「だから安心なんですね」


莉奈が小さく言う。


美咲は笑顔で頷いた。


「うん」


「私たちにとっては、お守りみたいなものかな」


悠斗も頷く。


「そうですね」


紗奈も優しく笑った。


「人によって安心の形は違うけどね」


「私たちはそうやって安心を持っているんだ」


⸻


莉奈は窓の外を見る。


少しだけ気持ちが軽くなっていた。


まだ全部は分からない。


けれど興味は湧いている。


知りたいとも思う。


「なんだか分かってきた気がします」


その言葉に三人は笑顔になった。


⸻


カフェを出る頃には夕方になっていた。


駅前には柔らかな夕陽が差し込んでいる。


四人は並んで歩く。


莉奈はふと思う。


安心とは特別なものではないのかもしれない。


不安をなくすためではなく、


前を向くためのものなのかもしれない。


そんなことを考えながら、


莉奈は静かに夕空を見上げた。



第二十三話のテーマは「知ること」です。


理解は一度ではできません。


けれど知ろうとすることが、最初の一歩になります。


莉奈の新しい一歩は、ここから始まろうとしていました。

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