19話 またつまらぬものを打ってしまったんだぜー
※今回は主人公の妹のみゆ視点のギャグ回です。
わたしの名前は聖美優。
小学五年生になったばかりのJSなのだー!
でも、今はお兄ちゃんを追って異世界にやって来て、怖い海賊に捕まっちゃった。
でもでも大丈夫!
わたしはあの不良少年なお兄ちゃんの妹だもん。
誘拐されるなんて慣れっこだから、今回も華麗なテクニックで返り討ちにしてやります!
「み、みゆちゃん? 何してるの?」
「音の魔法で船の中の構造を見てるの」
「……え?」
「えとね。わたしが使える音の魔法って、人の耳では聞こえない音波を飛ばして、周囲の凸凹とかが分かるの。ほら、コウモリとかもそうでしょ? だから、それだよ」
「うそ? みゆちゃん凄い」
「凄くないよ。じょーしきだもん」
ふむふむ。
だいたい船の構造が分かってきたよ。
それに、脱出用のボートも発見♪
誘拐されて直ぐに海に潜っちゃったから今は海の中だし、ちゃんと潜水が出来るボートかどうかも確認したいけど、それは後でいっか~。
それより、どんなお姉ちゃんとでりばーおじさんとあみーお姉ちゃんを助けないと! と、思ったけど、ムムムな声を聞いちゃった。
『船長、この女は? あの黒髪の女から乗り換えたんですか?』
『馬鹿言ってんじゃねえ。あの女はメインディッシュだ。城に帰ってから、後でじっくりいただくさ。それにこの女は客人だ』
『ふん。何が客人でしゅか。お前達が下手して見つかったせいで、あたちが時間稼ぎしなければ、逃げられていたでしゅよ? おかげでわざとやられたフリをさせられて、こっちは大変だったでしゅ』
『そう怒るなよ、アミー。俺はてめえに感謝してるんだぜ? しかも、例のブツの取引にまで応じてくれたんだ。魔族様様ってな』
『そう思うなら、ドンナしゃんだけは無事に家に帰してあげてほしいでしゅね。あの子には恩があるでしゅ』
『ほお。魔人アミーともあろう者が、人間の女に情でも移ったのか?』
『さあ、どうでしゅかね。それと、あのみゆって子は貰って行くでしゅよ』
『何? それは俺達の契約には無い話だな。あのガキは俺の舎弟どもにくれてやる予定だ。理由を聞かせてもらえるか?』
『あの子は英雄の妹でしゅ。邪神様へ献上するには持ってこいでしゅからね』
『その英雄さんなら俺が殺したって説明したろ? 必要ねえ貢物だ』
『おめでたい頭でしゅね。まあ、良いでしゅよ。その代わり、第一王女をオフィクレイドでリヴァイアサンに捧げる生贄の儀式の日に、邪魔する者が現れたら――』
『いちいち言わなくても分かってる。俺達シャーン海賊団がそいつを殺す。それで俺達も国から追われなくなる。だろ?』
『そう言う事でしゅ。それじゃあ、あたちはドンナしゃんを連れて行くでしゅ』
『ドンナが目を覚ましたら、デリバーは死んだとでも伝えといてくれ』
うっそー!?
あみーお姉ちゃんって魔族で裏切り者だったのー!?
それにでりばーおじさんが死んじゃったの!?
って、感じで驚いちゃった。
「べるお姉ちゃん」
「うん?」
「あみーお姉ちゃんは魔族だったみたい」
「――――っえ!? ど、どう言う事なの!? みゆちゃん!」
「説明は後でするから、とりあえず脱出しようよ」
「わ、分かったよ。えと、じゃあ、まずはドンナとデリバーを助けないとだね」
「どんなお姉ちゃんはあみーお姉ちゃんに連れてかれちゃうみたいだから、多分もう遅いよ。それにでりばーおじさんは死んじゃったみたい」
「そんな……」
「もう、べるお姉ちゃんしっかりして。くよくよするのは後でも出来るでしょ」
「みゆちゃん…………うん。そうだよね」
べるお姉ちゃんが涙を吹いて笑ったから、わたしも安心して笑い返した。
でも、こうしてる場合じゃないもんね。
わたしは大まかな脱出方法を説明して、べるお姉ちゃんと一緒にここを出る。
「ね、ねえ? みゆちゃん。今、何したの?」
「カスタネットの音撃で扉の鍵を壊しただけだよ?」
「そ、そっか……」
扉を開けると、見張りのおじさんが二人立っていたから、一発KOで先に進む。
「ね、ねえ? みゆちゃん。今、何したの?」
「男の人の急所にカスタネットの音撃を当てただけだよ」
「そ、そっか……」
べるお姉ちゃんが心配そうな顔で、股間を押さえて悶絶するおじさん達に視線を送るから、わたしはべるお姉ちゃんの手を掴んで走る事にした。
こんな人達の心配なんてしてられないもんね!
と、曲がり角におじさん発見!
ていや! って、カスタネットの音撃を飛ばして股間にヒット。
おじさんは涙を流して股間を押さえて倒れました。
「またつまらぬものを打ってしまった」
「み、みゆちゃん凄い」
「凄くないよ。弱点をぶらさげてるのが悪いんだもん」
「あはは……」
べるお姉ちゃんが冷や汗を流して苦笑いしてるけど、わたしは構わず先に進む。
すると、ちょっと先の方に集団の声が聞こえてきた。
流石にあの数の股間を攻撃するのは一苦労するから、今度はトライアングルの出番。
目標を補足して~……発射!
トライアングルの音が集団の耳元に届いて、それを聞いた皆が次々に股間を押さえていく。
「み、みゆちゃん、今度は何をしたの?」
「トライアングルの音を聞いた人に、急所を殴られた錯覚を与えたんだよ。ほら、トライアングルの音って“ちーん”って音でそれっぽいでしょ? それよりべるお姉ちゃん、あの人達が混乱してる間にあそこを曲がろう!」
「う、うん。って、また股間関係なんだね」
「当然だよ。男の人の弱点だからね」
えっへん。と、顔を向けると、べるお姉ちゃんは「あはは」と苦笑した。
何度かおじさん達の股間にクリティカルヒットを与えて進んで行くと、脱出用のボートのある所にやって来た。
でも、そこにはすっごく大きな体の人がいてびっくりしちゃった。
音波で船の構造を調べた時、あまりにも大きいから何かの荷物だと思っちゃったもん。
でも大丈夫!
わたしには秘策があるのだ!
「べるお姉ちゃんはここで待っててね」
「え? みゆちゃん?」
わたしはべるお姉ちゃんに待っててって言ってから、大きな体の人の前に飛び出した。
そしたらその人と目が合って、満面の笑顔を見せてあげた。
「キャプテンの命令でボートに乗りに来たよ! 乗って良いって言われたボートが、どれか分からないから教えて?」
「ん~? そんな命令は聞いでねーど? ほんど――」
「うそー!? おかしいなあ? おじさん、わたしを騙そうとしてるんでしょー? もー! キャプテンに言いつけちゃうよ!」
「ま、待で。そんなごどねーど。騙そうなんでしでねえ。おがしいなあ?」
「じゃあ、ちゃんと聞いて来てよ。待ってるから」
「しがだねーな。聞いでぐっがら、ここで待っでろよ?」
「うん。いってらっしゃーい!」
大きな体の人はのそのそと歩いてこの場からいなくなったから、向こうで隠れてるべるお姉ちゃんに手を上げて来てもらう。
そしたら、ベルお姉ちゃんが目をおっきく開けて驚いた顔で、わたしの所に走って来た。
「みゆちゃん本当に凄いね。すっごく自然に言うから、私までそうなの? って、一瞬思っちゃった」
「ふっふっふ~。将来は女優も夢じゃないでしょー?」
「じょゆう……?」
べるお姉ちゃんが可愛らしく首を傾げるから、思わずクスクス笑っちゃった。
でも、それより早く逃げ出さなきゃだよね!
念の為に船の中の声を聞きとると、わたし達にとって嬉しい情報が聞こえたよ。
『ヤバいぞ! こんなの船長に知られたら殺されちまう!』
『いいから捜せ! まだ船の中にいるはずだ!』
『おい。船長にはアジトについてからエロい衣装に着替えさせてから連れて行くって言っておいたぞ。そしたら今夜に備えて、今から寝るそうだ』
『よくやった! これで暫らくは時間が稼げる!』
『ん~? お前等、そんな慌ででどうしだんだ?』
海賊のおじさん達は怒られるのが怖くて、わたし達の事は黙っててくれるみたい。
やったね!
でも、さっきの大きな体の人が合流しちゃったみたい。
急がなきゃ!
べるお姉ちゃんと一緒に一番かっこいいボートに乗って、いざ出港~!
海賊船に穴を開けたら脱走だって気付かれちゃうから、ちゃんと装置を動かして海に出たよ。
ボートには潜水機能がちゃんとあって、どんなお姉ちゃんの船にあった救命ボートと似てたから、適当にさわって万事解決。
それから、最後の仕上げの秘策を開始するのだ!
「タンバリンプロペラセットの~、カスタネット噴射ー!」
「――きゃあ!」
タンバリンのシンバルをプロペラにして、カスタネットの音撃で加速したから、とっても速くボートが動いたよ。
もしかしたら音速も夢じゃないかも!?
もしそうなったら、なんだかかっこいい!
いきなりでべるお姉ちゃんがびっくりして悲鳴を上げたけど、びっくりしただけだから大丈夫。
でも、早速海賊のおじさんが何人か追いかけて来ちゃった。
その中にはさっきのおっきな人もいて、それでわたしは気づいたの。
「さっきのおじさん、クジラみたい。魚人だったんだね~」
「大変! こんな所じゃ私も魔法が使えな――って、みゆちゃん!?」
追いかけて来てるおじさん達に狙いを定めて、今日一番の特大カスタネットの音撃を発射だよ!
もちろん狙いは男の弱点!
「またつまらぬものを打ってしまったんだぜー」
追いかけて来たおじさん達は股間に音撃を受けて、白目になって海の中を漂いました。
ふうお姉ちゃんとらんお姉ちゃんの真似っこで決めポーズも完璧なのだ!
「……みゆちゃん凄い」
「凄くないよ。それに、これやり過ぎるとお兄ちゃん怒るから内緒にしてね?」
「え? そうなの?」
「うん。同じ男として見過ごせないんだって。なんか見ただけでゾッとするって言ってた」
「そ、そっか。あはは…………」
追手がいなくなったからボートを調べていたら、ボートの目的地設定を見つけて、べるお姉ちゃんに聞きながら設定を水の都フルートにする。
めれかお姉ちゃんのいるフルートが目的地だから、これで問題無いよね?
「なんか、全部みゆちゃんに任せちゃって申し訳ないから、私に出来る事ない?」
「出来る事か~……うーん…………ギュッとして?」
落ち着いたら、お兄ちゃんが恋しくなったから頼んだら、べるお姉ちゃんがギュッと抱きしめてくれた。
とってもあったかくて気持ちいい。
それに、おっぱいもふかふかだし、すっごくいい匂い。
「えへへ。ありがとう、べるお姉ちゃん」
「ううん。本当にこんな事で良いの?」
「うん。すごく落ち着くよ~」
「それなら良かった」
べるお姉ちゃんと笑い合って、またギュッと抱きしめ合う。
べるお姉ちゃんはお兄ちゃんの大好きな人。
とっても優しくて、わたしも大好き。
お兄ちゃんがいない今、わたしがお兄ちゃんの代わりにべるお姉ちゃんを護るからね。
だから、べるお姉ちゃんとわたしを早く迎えに来てね、お兄ちゃん。




