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鐘がために英雄はなる  作者: こんぐま
第2章 魂の帰路
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37話 魔従変な馬の変な魔法にゃ

※今回は少しだけ時間を遡ってナオ視点のお話です。



 王宮に辿り着いたニャーはヒイロと別れて、フウフウとランランと一緒に宮殿に向かったにゃ。

 フロアタムは王宮だけでなく、宮殿にも操られている兵士がいっぱいいたにゃ。

 でも、ニャーの華麗な身のこなしで、何事も無く宮殿の牢屋の側までやって来たにゃ。

 だけど、牢屋の目の前に移動してるわけじゃないにゃ。

 ニャー達は曲がり角から牢屋を覗いているのにゃ。


「なんかいるにゃ」


 牢屋の目の前に馬がいたのにゃ。

 でも、普通の馬じゃないにゃ。


 額に一本の角が生えていて、色は青白で、何故か尻尾だけ湿ってるにゃ。

 それから、トランペットを背中からぶら下げてるにゃ。

 その馬が牢屋の前であくびしながらボーっとしてるにゃ。


 牢屋の中はここからじゃ上手く見えないにゃ。


「「魔従まじゅうアムドゥスキアスですね。どうします? お嬢、思い切って行っちゃいますかい?」」


「にゃー。それもそうにゃ。あのマヌケ面にニャーの爪をお見舞いしてやるにゃ」


「「では行っちゃいますか~」」


「にゃー」


 ライオンのせいで片方しかなくなった魔爪まそうを装備して、突撃にゃ!

 ニャーはクロウズファイアで爪に炎を纏わせて、一気に駆け抜けたにゃ。


「先手必勝! クロウズファイア!」

「「スラッシュ!」」


「――っ!」


 牢屋の前であくびをしていた馬が、突然現れたニャー達に驚いて、ニャーの爪の餌食になっ――――らなかったにゃ!

 ニャーの攻撃も、フウフウとランランの攻撃も、全部避けられてしまったにゃ。


「っあぶねえなあ! 誰だ誰だ!? オラに物騒なもん向ける奴は――っ!?」


 馬がニャー達の攻撃を避けて直ぐに距離をとって、話しながらニャー達を睨みつけてきたにゃ。

 と思ったけど、何か様子が変にゃ。

 ニャーと目が合った瞬間に鼻の下を伸ばして、鼻が大きく開いたにゃ。

 でも、それはニャーだけじゃないにゃ。

 馬はフウフウとランランにも、同じようにしたにゃ。


「うっひょおおおお! 何だよ何だよ! かわい子ちゃんのお出ましじゃないか!」


「……っにゃ?」


「どうもはじめまして! オラ、魔従のアムドゥスキアスって馬でっす! かわいい猫のお嬢さん、お名前をお聞かせいただいても?」


「嫌にゃ! おまえに名乗る名前なんて無いにゃ! どうせおまえもムキムキみたいに、ニャーを騙す気だにゃ!」


「へ? ムキムキ……? あ! カラビアか! あの野郎、オラのかわい子ちゃんを騙したのか!? 許せん!」


「……にゃー?」


 変な馬にゃ。

 でも、ニャーは戦意を無くさないにゃ。

 どんなに変な馬でも魔従にゃ。

 油断なんてしないのにゃ。


 そうしてニャーが馬と睨み合っていると、ニャーの後ろでフウフウとランランが牢屋のおりを魔法で斬って、中に入れられていた人と話をしていたにゃ。


「「チーワ様! ご無事ですか!?」」


「うん。フウ、ラン、助けに来てくれたのね」


「「はい。ダムル様とブルド様は何処に?」」


 牢屋に入っていたのは、ウルウルの妹のチワチワだけだったみたいにゃ。

 操られていないのは、ウルウルを含めて四人。

 ウルウルとチワチワと長老様ともう一人で、ブルドって言う王子にゃ。

 でも、フウフウとランランがチーワに聞いたら、チワチワが顔を俯かせたにゃ。


「お父様は王宮に、お兄様は…………殺されてしまったわ」


「「――っ!?」」


「私は……怖くて…………見てる事しか出来なくて……」


 チワチワはそう言って泣き出したにゃ。

 でも、無理もないにゃ。

 チワチワはまだ幼い七歳の子供にゃ。


 でも、今ニャーは三人の様子を気にしてばかりもいられないにゃ。

 チワチワが泣き出すと、丁度その時に馬が動きを見せたにゃ。


「オラの能力スキル【乙女探知】でここにいる全員が純粋な体ってのは分かってるんだ! 全員オラの嫁にしてやるぞー!」


「意味分かんない奴だにゃ!」


 馬がニャーに向かって駆けだして、同時に魔法陣を周囲に散りばめたにゃ。

 ニャーも直ぐに魔爪に魔力を溜めて、馬に向かって駆けだすにゃ。


「ファングフレイム!」

「ドリームポイズンだ!」


 ニャーと馬が同時に魔法を放ったにゃ。

 そして、二つの攻撃はお互いに命中したにゃ。


 馬は炎の虎に噛みつかれて全身を燃やして、ニャーも馬の魔法を浴びてしまったにゃ。

 でも、おかしいにゃ。

 全く痛くないのにゃ。


「「ああああああ! ナオ様! サラシがー!」」


「サラシにゃ?」


 フウフウとランランが大きな声を出してニャーを指さしたにゃ。

 ニャーは首を傾げて、胸のとこに巻いてるサラシに視線を落としたにゃ。

 そしたら、何故かサラシが溶けていってたにゃ。


「なんで溶けてるにゃ?」


「ぐっへっへっへっへっ! オラの放つドリームポイズンは男のロマン! うら若き可憐な少女が身に着けた衣服だけを溶かす最強の魔法なのだー!」


「「とんだド変態野郎じゃねえかあああ! 女の敵だあああ!」」


「何とでも言うがいい! 女の子の罵声は全てオラの喜びなのだああああ!」


「「ナオ様やべえですぜコイツ! 話にならねえ! こんな奴を相手に話してたら赤ちゃん出来ちゃいますよ!」」


「にゃー? 赤ちゃんはお話じゃ出来ないにゃ。それより、こんなの大した事ないにゃ! こいつはここでやっつけるにゃ!」


「「えええええええ!! 上半身すっぽんぽんなのにですかああ!?」」


「ぐっへっへっへっへっ! 良い度胸だオラの猫ちゃん! 優しくしてあげるね!」


「ニャーは優しくするつもりないにゃ!」


 再びニャーとウマが駆けだすにゃ。


 フウフウとランランはあんな事言ってたけど、この馬はここで倒さないと後で厄介にゃ。

 さっきニャーが当てたファングフレイムは、出し惜しみ無しで全力で出した魔法だったにゃ。

 それなのに、この馬は全然効いていないのにゃ。

 この馬は変な馬だけど、間違いなく強い魔族にゃ。


「クロウズファイア! 斬り裂くにゃ!」


「少しの間、苦しいけど我慢してね、猫ちゃん。ブラックポイズン」


 ニャーの炎の爪が避けられて、その直後に馬が魔法を放ったにゃ。

 今度は黒い液体にゃ。

 ニャーの頭の上に魔法陣が出てきて、そこからドロッとした黒い液体が流れたのにゃ。


「――っにゃぐ!」


 ニャーは黒い液体を避けようとしたけど、右の肩にそれを受けてしまったにゃ。

 そしたら、ジュッと音が鳴って、焼ける様な暑さが肩に纏わりついたにゃ。

 でも、ニャーは直ぐに炎の爪の炎でそれに触れて、その黒い液体を焼いたにゃ。


「あー残念。ドロッドロの液体まみれの猫ちゃんを見たかったのになあ」


「「この糞ド変態野郎! 私達が引導を渡してやるぜ! チーワ様は安全な所に隠れていて下さい!」」


 フウフウとランランがチワチワの側から離れて、剣を抜いて宙を舞ったにゃ。

 そして、二人は一瞬で馬に近づいて、剣に風を纏わせて「スラッシュ」と斬りかかったにゃ。

 でも、馬はそれを避けて、またあの服が溶ける魔法を使うにゃ。


「ドリームポイズン!」


「「――っ!?」」


 馬の魔法の発動速度がとんでもないにゃ。

 フウフウとランランは魔法を避けようとして、少しだけ浴びてしまったにゃ。

 そして、魔法を少し浴びた直後に、二人が着ている鎧が少しだけ溶けて穴が開いてしまったにゃ。


「うっひょおおお! 一部だけ溶けて逆にエロくなってるううう!」


「――っよくもお姉さまの鎧を! 殺す!」


「ラン! 落ち着いて!?」


 ランランが馬を鋭く睨んで、フウフウの制止を聞かずに、馬に向かって飛翔したにゃ。

 でも、ニャーもランランに賛成にゃ。

 変な馬はさっさと殺してやるにゃ。

 だから、ニャーも魔爪に炎を纏わせて、ランランと同時に駆けだしたにゃ。


「ピラーファイア! 燃え上がれにゃ!」

「エアキャノン!」


 ニャーとランランの魔法が、馬に零距離で炸裂にゃ!

 だけど、この馬は本当に変だけど強いにゃ。

 湿った尻尾を振るわせて水の盾を出して、ニャーとランランの魔法を同時に受けきったにゃ。


「追加のドリームポイズンだあ!」


「んにゃ? そんなの効かないにゃ! ファングフレ――――」


「――駄目ですナオ様!」

「――イにゃああ!?」


 服を溶かす魔法なんて全然怖くないのに、ランランがニャーの背後からお腹に手を回して抱き付いて、服を溶かす魔法から後ろに飛んで逃げてしまったにゃ。


「何するにゃ!? 今チャンスだったにゃ!」


「気持ちは分かりますけど、そんな事したらスパッツまで溶けちゃいますよー!」


「そんなのどうでも良いにゃ!」


「絵面的に良くないんですー!」


 意味が分からないにゃ!

 絵面ってなんにゃ!?


 ランランはニャーに抱き付いたままフウフウの所に戻ると、ニャーをようやく離したにゃ。


「ラン、冷静になってくれて良かったわ」


「うん、姉さん。流石にナオ様の大事な所の危機に冷静になったよ」


「大事な所ってなんにゃ? あんな魔法じゃ、ニャーは痛くもかゆくも無いにゃ」


「「そう言う問題じゃないんですよね~」」


「にゃー?」


 本当に意味が分からないにゃ。

 フウフウもランランも何を気にしてるのかサッパリだにゃ。


「「とにかく、ナオ様はまず上着を見つけて来て下さい」」


「そんなの必要無いにゃ」


「あの、良かったらこれを……」


 背後からチワチワが話しかけてきて、ニャーは振り向いたにゃ。

 そしたら、チワチワがボロボロの少し大きな布を目の前に出したにゃ。


「にゃ?」


「牢に入れられていた時に、私が布団に使っていた布……です」


「にゃー……にゃ! ありがたく貰うにゃ!」


「は、はい。どうぞ」


 ニャーはチワチワからボロボロの布を受け取って、首から巻いたにゃ。

 そして、バサッとマントみたいに布をなびかせたにゃ。


「ちょっとかっこいいにゃ」


「「……ナオ様。まあ良いでしょう。一応隠れてますし、オッケーですね」」


 フウフウとランランも納得したみたいにゃ。

 でも、この布のせいでちょっと動き辛いにゃ。

 邪魔だったら後で脱ぎ捨てるにゃ。


「ぐっへっへっへっへっ! 女の子同士のイチャイチャとは。なかなかオラを楽しませてくれるじゃないか」


「うげえ。本当にこいつ糞ド変態野郎じゃねえか。ナオ様、やっぱりここは逃げましょうよ。あんな気持ちの悪い奴斬りたくないです」


「何言ってるにゃ? この馬をここで倒しておくにゃ」


「そうだよ、姉さん。今回ばかりはナオ様に賛成です。姉さんの肌を露出させたあの変態は許さない」


 珍しくフウフウとランランの意見が分かれたにゃ。

 こうやって見ると、双子と言っても考え方が少しは違うみたいにゃ。


 意見が分かれた二人を見て、ニャーが珍しいにゃ~。と思っていると、馬が尻尾から水の塊を出して宙に浮かせたにゃ。

 そして、それを背中からぶら下げているトランペットにくっつけて、トランペットが宙に浮いて馬の口元まで運ばれたにゃ。


「もう少しオラの花嫁候補たちと楽しんでいたいけど、邪神様が動いたみたいだから、オラも最低限の仕事はさせてもらうよ」


「にゃ……? 邪神……?」


 変な馬はやっぱり変にゃ。

 周囲を見ても、邪神なんていないにゃ。


「感動の再会を猫ちゃん達に捧げるねー」


 そう言って、馬がトランペットを吹きだしたにゃ。

 そしてそれは、ニャーにとって目を疑う様な意味があったにゃ。


「――っ!? ママ……?」


 馬がトランペットを吹いて直ぐに、トランペットから馬の隣に魔力が流れて魔法陣が出て来たにゃ。

 そして、そこからニャーのママが現れたにゃ。

 殺されたはずのニャーのママが、現れたんだにゃ!


「「ルシャ様……。それにミーナさんも……。これは困った展開ですねえ。本当にくそったれですなあ」」


 出て来たのは、ニャーのママだけじゃ無かったにゃ。

 ママと一緒に地下で別れたミナミナも出て来たのにゃ。


 だから、ニャーだけじゃ無く、フウフウとランランも動揺したにゃ。


「ママ!」


 ニャーは走ったにゃ。

 ママが、死んだと思ってたママが生きてたんだにゃ!

 でも――


「――っにゃあ!」


 ママに近づいたニャーは、ママに蹴り飛ばされたにゃ。

 ママは何も言わず、顔色も変えず、ニャーを蹴り飛ばしたのにゃ。


「ママ…………?」


「ぐっへっへっへっへっ! 残念だったなあ、オラの猫ちゃん。猫ちゃんのだ~い好きなママは、今やオラの奴隷なんだよお!」


「――っ! そんな……ママ! ママ!」


「ぐっへっへっへっへっ! 無駄無駄! このババアはネビロスの力で魂を操られてるんだ! しかも永続の呪い! 奴を殺したって解けやしないんだ! 残念だったねえ? 猫ちゅわああん!」


「「糞ド変態野郎かと思ったら、ただのゴミクズとは恐れ入ったぜ! 逃げるのは本気でやめだ! ここをてめえの墓場にしてやるよ!」」

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