38話 ニャーはママと戦うにゃ!
※今回もナオ視点のお話です。
「ナオー! ナオー!」
「ママ? どうしたにゃ?」
「クンエイ様がいらっしゃってるわよ」
「にゃー! クンエイ爺ちゃんが来てるにゃ!? それを早く言ってにゃ~!」
あれは、クンエイ爺ちゃんが封印の儀式に向かう前の事にゃ。
パパがお爺ちゃんと夜ご飯のおかずを狩りに行ってる時に、ニャーの家にクンエイ爺ちゃんが訪ねてきたにゃ。
「相変わらず元気そうだな、ナオ」
「にゃー! クンエイ爺ちゃん、今日は何しに来たにゃ?」
「なに。儀式に向かう前に、ナオがちゃんと修行をしておるか見に来たまでよ」
「にゃ~。ニャーはウルウルと違って大人だから、毎日の修行は欠かさないにゃ」
「そうかそうか。ナオはもう十一にもなる。その喋りは相変わらずだが、もう立派な成人と言う事か」
「もちろんにゃ」
ニャー達獣人は、他の種族と違って十歳で成人を迎えるにゃ。
だから、十一歳のニャーは立派な大人なのにゃ。
もういつでもお嫁さんになって、幸せな家庭を築けるにゃ。
でも、ニャーは結婚する気は無いのにゃ。
だって、ニャーにはフロアタムの兵士になって、皆を護るって言う夢があるからにゃ。
「では、もう上位の魔法は使える様になったのか?」
「――っにゃ! そ、それはまだにゃ」
「やれやれ。才能はある筈なんだがなあ。本当に修行をサボってないのか?」
「サボってないにゃ!」
クンエイ爺ちゃん失礼だにゃ!
毎日クンエイ爺ちゃんに言われている修行を頑張ってこなしているにゃ!
「ふふふ。この子、修行する時以外は最近ダラダラして過ごしてるんですよ。そのせいじゃないかしら」
「ほう……」
クンエイ爺ちゃんの視線が突き刺さるにゃ。
居た堪れないにゃ。
「にゃー!? ママ酷いにゃ! それは黙っていてほしかったにゃ!」
「あら。本当の事じゃない。言ってほしく無かったら、ダラダラ日向ぼっこばかりしてないで、しっかりしなきゃ」
「にゃー」
痛い所を突かれたにゃ。
ママの言う通りにゃ。
でも、だって、ごろごろ日向ぼっこするのが気持ちが良いのがいけないのにゃ。
修行の後の日向ぼっこは格別なのにゃ。
ニャーは悪くないにゃ。
「そうだぞ、ナオ。ダラダラ過ごしていたら、お前さんもママの様に中途半端になってしまうぞ」
「にゃー? ママ?」
「ちょっとクンエイ様。やめて下さいよ。そんな昔の話」
ママが凄く嫌そうな顔になったにゃ。
でも、ニャーも昔の話って言葉で、何の話か分かったにゃ。
「思い出したにゃ。ママも昔、クンエイ爺ちゃんに修行してもらってたって言ってたにゃ」
「ナオまでその話に乗らないくていいのよ」
「懐かしいのう。お前がまだ王女だった頃、自分は王女では無く騎士になるんだと張り切っておったなあ。結局、こんな田舎村の村長の息子に嫁入りしたがな」
「もう。娘の前でやめて下さいよ」
「ニャーはその話好きにゃ。ママとパパが盗賊の討伐隊で出会って、恋に落ちた話にゃ!」
それは、パパから聞いたママとの恋のお話にゃ。
とっても大好きなお気に入りのお話だにゃ。
でも、ママが元王女様って言うのは内緒の話らしいから、誰にも言えないお話なのにゃ。
残念にゃ。
「あの時は流石にびっくりしたのう。長老様も大目玉を食らっておった。盗賊団を討伐する騎士団について行きたいと言って勝手について行った娘が、当時騎士団に所属していた男と恋に落ちて帰ってくるのだからな。おかげで婚約者とは破局。あの時の長老様の顔は今でも忘れられんよ」
「はあ。その辺にして下さい。後悔はしていませんけど、改めて言われると恥ずかしいので……」
「何を言うておる。あの頃のお前は、どんな相手にも立ち向かう勇ましさもあった。儂が今まで弟子をとった中でも、一番諦めの悪い努力家だったではないか。まあ、それも恋をした途端に、何処かへいってしまったようだがな。ほっほっほっ」
クンエイ爺ちゃんが懐かしむように楽しそうに笑って、ママがクンエイ爺ちゃんにジト目を向けたにゃ。
それを見て、ニャーもやる気が湧いてきたにゃ。
「ニャーもママみたいに悪い奴を退治するにゃ!」
ニャーは胸を張って、握り拳をグッとしたにゃ。
燃えてきたにゃ!
「うむ。では、ナオもダラダラした日々を過ごさず、精進しなさい。何ならお前のママに相手をしてもらい、踏み台にして成長すればいい。お前からは微かに光属性の才能も感じる。その歳でも、努力次第で上位【蒼炎魔法】を使う事が出来るかもしれぬ」
「蒼炎魔法……?」
「闇を払う事が出来る巫女様の光魔法に似た性質を持つ聖なる魔法。ナオからは微かにそれを感じるのだ」
「頑張るにゃ! そしてママみたいに強くて恋に生きる女になるのにゃ!」
フロアタムの兵士になって、いっぱい皆を護って、素敵な恋をするんだにゃ!
今から楽しみにゃ!
「これは分かっとらんな」
「はい。まあ、この子はいつもこの調子なので……」
意気込むニャーに、何故か二人が困った様な顔を向けたにゃ。
きっとニャーの本気が伝わってないにゃ。
こうなったらいっぱい修行して、皆を悪者からいっぱい護って、ニャーの本気を見せつけるのにゃ!
◇
「ママ……」
変な馬がトランペットを吹いて、操られたママとミナミナが現れたにゃ。
ニャーはママに蹴られて、動揺で動けなくなってしまったにゃ。
でも、その時にあの時の事を思い出したにゃ。
ニャーは……ニャーは…………。
「ママと戦うにゃ!」
「「――っナオ様!?」」
「フウフウ、ランラン、ママはニャーに任せてほしいにゃ。ニャーがママを止めて見せるにゃ!」
「「…………分かりました。無理だけはしないで下さい。ゴミクズとミーナさんは私達にお任せを! お二人の邪魔はさせません!」」
「お願いにゃ!」
ニャーがママを止めて、呪いから解放させてあげるのにゃ。
フウフウとランランにミナミナと馬を任せて、ニャーはママに向かって駆けだしたにゃ。
ママの戦い方は、森で狩りに出かけた時に何度も見ているから知ってるにゃ。
ニャーと同じで爪を伸ばして、でも、爪に纏わせるのは火では無く風にゃ。
ママは風属性の使い手で、武器にする物は同じでも、ニャーとは魔法の属性が違うから戦い方も違うのにゃ。
まずは、ママを気絶させてみるにゃ!
既に意識が無いとも言えるけど、やってみる価値はあるとニャーは考えたにゃ。
ママは目を閉じていなかったし、ママに向かって走るニャーにちゃんと視線は向けているにゃ。
だから、もしかしたら気絶させたら動かなくなるかもしれないにゃ。
「クロウズファイア!」
爪に炎を纏わせて、ニャーはママに攻撃を仕掛けたにゃ。
ママはママで爪に風を纏わせて、ニャーの攻撃を防いだけど、左手にしかないけど魔爪がある分ニャーが優勢にゃ。
ニャーはママを攻め続けて、どんどん追い込んでいくにゃ。
だけど、そう簡単にはいかないにゃ。
「駄目駄目~! オラは猫ちゃんに構ってほしいんだよー!」
フウフウとランランがミナミナと馬を相手にしていたけど、馬がそう言って、またトランペットを吹いたのにゃ。
そしたら、魔法陣が今度はいっぱい出て来て、そこから操られた死人のフロアタム兵が沢山出て来たにゃ。
「「これは――っ!」」
流石にフウフウとランランもその数を相手にしきれないし、それに、ここは牢屋の前で狭いにゃ。
そんな所に兵士がいっぱい出たから、馬を止める事が出来ず、馬がニャーの所に邪魔しに来たにゃ。
「お待たせー!」
「おまえなんか待ってないにゃ!」
馬がニャーに向かって飛び込んで来て、ニャーはそれを避けたにゃ。
そしたら、馬は勢いあまって壁に突っ込んで、壁に風穴を大きく開けたにゃ。
すると次の瞬間、フウフウとランランが風の魔法でこの部屋を破壊して、チワチワを連れて外に飛び出したにゃ。
「「ナオ様! 一旦外に出ましょう! 数が多すぎてろくに戦えません!」」
「――っ。わかったにゃ!」
ニャーは答えて、フウフウとランランの後を追って跳躍したにゃ。
フウフウとランランの言う通りで、馬のせいで凄く窮屈で、それに操られていた兵士が今にも襲いかかって来そうだったからにゃ。
あんな状態じゃ、まともにママを止められないにゃ。
外に出ると、ママと馬とミナミナと兵士達がニャー達を追って出て来たにゃ。
でも、牢屋の壁の向こう側が外だったから、もうこれで窮屈じゃないにゃ。
「建物を壊すなんていけない子達だね。オラがおしおきしてあげるからこっちへおいで~」
「「お断りだぜ! と言いたい所だけど、今直ぐぶっ殺してやるぜゴミクズ野郎!」」
フウフウとランランが左右対称に別れて飛んで、一気に馬に接近して剣を振ったにゃ。
でも、馬には効かないにゃ。
二人の攻撃を前足の蹄で受け止めて、湿った尻尾をうねらせて、二人の両足に水を絡めたにゃ。
そしたら次の瞬間に、二人は地面に落ちてしまったにゃ。
「「――っ!?」」
「その水重いだろお? これはオラの愛が重ければ重いほど重くなるグラビティならぬ【ラブビティウォーター】。オラにしか使えない愛の魔法だよ。ぐっへっへっへっへっ」
「「本当に一々気持ち悪い奴!」」
フウフウとランランが危険な状態だにゃ!
馬はフウフウとランランを目の前に舌なめずりをして、ゆっくりと前足を伸ばしたにゃ。
だから、二人を助ける為に、ニャーは直ぐに駆け出したにゃ。
でも、フウフウとランランがニャーに顔を向けて「私達には構わず、ナオ様はお母様を!」と叫んだにゃ。
「――っ! そんなの駄目にゃ!」
仲間を見捨てるような奴は、立派な兵士になれないにゃ!
そんなの、元にも戻ったママに、恥ずかしくて顔向けできないにゃ!
ニャーは馬に近づいて爪を振るったにゃ。
でも、馬はニャーの爪を避けて、フウフウとランランに使ったのと同じ魔法を使おうとしたにゃ。
「ピラーファイア!」
馬の水を火柱で蒸発させて、ニャーはフウフウとランランの足にくっついた水も炎で蒸発させたにゃ。
そしたら、そこにミナミナが槍でニャーに攻撃してきたにゃ。
「――っにゃ!」
「スラッシュ!」
「エアキャノン!」
フウフウとランランにくっついた水を蒸発させていたニャーは、ミナミナの攻撃を対処出来なかったにゃ。
でも、二人が魔法を使ってミナミナの攻撃を防ぎながら攻撃したにゃ。
ミナミナはフウフウの魔法で攻撃を止められて、ランランの魔法で吹っ飛んで兵士の群れに突っ込んでいったにゃ。
「きゃあああああああ!!」
「――っ!?」
「「チーワ様!」」
最悪にゃ。
叫び声に振り向いたら、チワチワが兵士に腕を掴まれていたにゃ。
それを見て、フウフウとランランが急いで空を飛んで助けに行こうとしたら、そこでママが二人に襲いかかったにゃ。
「させないにゃ!」
ニャーは直ぐに跳躍して、ママに向かって爪を振るったにゃ。
でも遅かったにゃ。
「ぐ……っ!」
「――ラン!」
ランランがママの爪で背中を斬られて、地面に落ちたにゃ。
でも、チワチワのピンチにフウフウも止まる事が出来ず、そのままチワチワを助けに向かったにゃ。
ママはランランに追い打ちをかけようとして、そこでニャーがママの爪を魔爪で止めたにゃ。
二三回ママと爪撃を交わして、ニャーはランランの側に行ったにゃ。
「ランラン、大丈夫にゃ!?」
「はい、なんとか……動けます」
ランランはそう言って立ち上がったけど、背中から凄いいっぱい血が流れていて、全然大丈夫に見えないにゃ。
でも、ランランの傷が気になるけど、ゆっくりもしていられないにゃ。
今度は操られている兵士が武器を手にして、一斉にニャー達に襲いかかって来たにゃ。
「ぐっへっへっへっへっ! 乱交パーティーの始まりだあ! この数を相手にどうあがくか見ものだねえ!」
「ナオ様、申し訳ないですけど、結構背中の傷が大きくて飛べそうにないです。この数を相手にあがけるのも時間の問題です。だから、私を踏み台にして、この場から一先ず脱出して下さい。ナオ様の脚力であればそれが出来る筈です」
「そんなの出来るわけない――――にゃ! そうにゃ! 踏み台にゃ! 出来る筈なんにゃ! クンエイ爺ちゃんも出来るかもって言ってたにゃ!」
「……ナオ様?」
「にゃー♪ あの変な馬を踏み台にして、ニャーは聖なる魔法【蒼炎魔法】を修得して皆まとめて浄化してやるにゃ!」




