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新たな家

更新途絶えてしまっててごめんなさい、、これからはコンスタントに更新するつもりです。

2050年。

突如、宇宙から地球に謎の巨大生物が来襲した。形は何とも言いがたく、一言で表すなら〈翼の生えた巨大なクモ〉だろう。

莫大な被害が出たし、人も数え切れないほど死んだ。

その巨大生物には、爆弾が大量に投下され、この最悪の事件は無理矢理に幕を閉じた。

そしてこれを期に、宇宙から地球へ様々な怪物達が来襲して来るようになってしまった。その形は多種多様で、言葉では形容しがたい物から、地球で言う虫や動物の様な形のものまでいた。

地球はこの怪物達に対抗する為の「ALIOS」という組織を結成。国という概念を超え、「地球を守る」という共通の目的を掲げた。

そしてこの生物達を、ALIOSは『ディアト』と名付け、その名前は人々を恐怖へと叩き落とした。

2057年。

「ALIOS」が中心となり、ヒト型兵器を開発。それとほぼ同時に宇宙での行動が可能な戦艦が誕生。

「ALIOS」の拠点は地球にあるものの、行動は宇宙上で行われる様になった。

その活躍は目覚ましく、怪物達が地球へと進入する前に、宇宙上での撃破に成功した。

その後、ヒト型兵器と宇宙戦艦は大量生産され、宇宙でディアトを蹂躙し続けた。

いつしか人々はディアトを恐れる事は無くなっていったのだ。

そして2070年、現在。

様々なタイプのヒト型兵器や戦艦が誕生し、宇宙での活躍を続けている。

「ALIOS」の戦闘訓練などを地球で終えた者達が戦艦に配属となり、宇宙へと上がるのだ。

訓練生達は、新しい自分の「家」や「家族」に期待を膨らませていることだろう。






「教官。髪切ったんですね」

「邪魔だったからな」

教官の髪が今までと違ってショートカットになっていた。似合っているし、特に口を出すことではないが‥‥ちょっと勿体無い気もする。

あれから3日後、すぐに通知が来て、

『すぐに艦へ来い。地球にはあと2日しか滞在しないから、急げよ。』

という内容の一文も添えられていた。まるでブラック企業みたい。

僕は急いで必要最低限の物をまとめた訳だ。

「それにもう教官では無い。艦長だ。気を付けろ」

教官、改め艦長は着なれていなさそうな制服を正しながらそう言った。

「そうでした。すいません‥‥‥って、いつまでかかるんでしょうか、これ」

今は、ミゾレが待機している港まで、車で向かっている最中だ。

思ったよりも時間がかかっており、疑問に思う。

「あと5分程だが、ウィークレット、お前は文句を言える立場じゃないだろう?」

ふ、と軽いため息を吐き、ジトッと横目で艦長は僕を見てきた。

「返す言葉もありません」

「たまたま私が通りかかったから良いものを‥‥全く‥‥」

「申し訳ありません」

僕がの言葉に、艦長は「まあいい」と、少し優しくなった声音で続けた。

「で?その頬の真っ赤な紅葉について聞きたいのだが」

艦長は僕の右頬にある真っ赤な手のひら紅葉を痛々しそうに見た。

「‥‥大したことでは無いのですが、港へ向かう途中、電車の中で」


『ありゃ、座れないか』

電車の中は、そこまで混んではいなかったが、座席は埋まっており、何人かは立っていた。

『‥‥だから!どうしてですか!あんな所へ、なぜ私が!』

隣に立っている金髪の女子が、声を荒げて携帯に向かって講義をしている。とても煩い。僕はバッグを持ち直すフリをして若干距離を取った。

『待って下さい教官!私は、』

勢いの良い、ガチャリという電話を切られた音が聞こえる。この時には既に関わるまいと心に決めていた。

が。

突如、電車では殆ど起こらないであろう急ブレーキ。

『きゃっ!』

『うおっと!』

僕は踏ん張り、ほっとした瞬間。

横からの追撃。

隣にいた女子は踏ん張りきれなかったのだ。

その勢いには耐えられず、女子を受け止める形で強く倒れ、背中を打った。

『いっ‥‥た』

手のひらには若干の柔らかい感触。

御察しの通り、僕の手は金髪女子の胸に。

『どこ触ってんのよ!この変態!』

有無を言わせず、バチン!という強烈なビンタが頬に飛んできた。


「‥‥わざとか?」

「艦長、怒りますよ」

いやいや、というかどうせ触るのならもう少し大きい胸の方がね。

「冗談だ。ほら、ウィークレット、見えてきたぞ」

少し先に、太陽の光に反射してキラキラした塊が見えてきた。

それはどんどんと近づいていき、ついにその姿を露わにした。

「これが、これから私達の家となり、宇宙へと上がる、ミゾレだ」

「これが‥‥」

全長はおよそ250メートル程だろうか。高さはおよそ35メートル程。戦艦としてはそこまでの大きさは無い。くすんだ赤いボディは、所々別の色の違う板が打ち付けられていた。砲塔は使い込まれており、とてもボロボロだ。

一言でいうと、外見は聞いていた通りのオンボロ艦だった。

「降りろ、ウィークレット。もう乗り込むぞ。それと、随分と洒落たものを着けてるじゃないか。彼女からのプレゼントか?」

教官改め艦長が僕の胸元に下がる赤い石を見てそう言うが‥‥皮肉ですか?

「プライバシーに関わる事なので、ノーコメントです」

まあ、いねぇんだけども。

とは言え、僕からすると外見なんてどうでも良いことだ。大事なのは家族となる乗組員や内装だ。僕はバックをひっつかみ、艦長の車から降りた。

そして少し歩き、ミゾレにつながる長い階段を艦長と登る。

そして、ついにミゾレの内部へと繋がるその扉が。

「な、なんか緊張してきました」

「私は外装を見て少し不安になってきた」

隣にいる艦長は少しだけ肩を落とし、ため息を吐いた。ため息多いですよ。

「まあいい、入るぞ。ウィークレット」

「はい」

扉のタッチパネルに艦長な手をかざすと、それに反応して扉がスッと開いた。

僕もそれに習い、手をかざして中へ入った。

中に入ったのは良いが、特に案内らしき人もおらず、どこへ向かえば良いのかも分からない。本来なら、艦長なり、ミゾレで一番偉い人にあいさつに行くべきなのだろうが‥‥。その艦長は今、僕のとなりにいるわけで。

あと、何故か知らないが中はとても暑かった。空調が効いていないのだろうか。外よりも暑いとはいかに。

「‥‥ブリッジへ行くぞ」

「あ、はい」

カツカツと足音を立て、館内を進んでいく。内装は所々傷んでいる部分もあるが、そこまで酷いわけでもなかった。

少し歩き、他とは雰囲気の違う、大きな扉が目に入った。

扉の上には剥がれかかっているが、微かに、「ブリッジ」の文字があった。

ああ、緊張してきたな‥‥。という僕の気持ちなんて御構い無しに、艦長が迷いなく扉の前に立つと、ガシュと音を立て、扉が開いた。

そこには。

「ちょっと、制服着なさい!」

「リンカ〜。べっつにいーじゃん。女しかいないんだし」

「というより裸でも良い気がしてきた」

「‥‥‥床、冷たくて気持ちいい」

「この艦、馬鹿みたいに熱がこもりやすいのよ〜。って、もう、知ってるでしょ」

目の前に広がったのは、下着姿でブリッジで寝転がりながら棒アイスを加えている女性4人の姿とそれを注意する制服をきちんと着た女性が1人。

チラリと隣を見ると、艦長が見るからに困惑していた。最早、怒りだとかは通り越して、複雑な表情になっている。

艦長はぶんぶんと顔を降り、真面目な顔を作り、コホン!と大きめの咳払いをした。

「‥‥‥ヒルンデ シューグランドだ!本日からこのミゾレの艦長を任された。よろしく頼む」

その声に反応し、寝転がっていた女性達は、みるからに「やっべぇ!」という顔をしてバタバタと着替え始めた。

「あ、ああ、大丈夫だ。確かにここは暑すぎる。仕方のない事?だな。うむ」

か、艦長‥‥。口ではそう言ってますけど、目が笑ってないんですけど。

「ウィークレット、お前も」

「はい。ハルカ ウィークレットと申します。本日より、オリオンのパイロットとしてこちらに配属となりました。よろしくお願いします」

そう言って頭を下げた。自分で言うのもなんだが、面白味のかけらもない自己紹介だと思う。

顔を上げると、制服を着ていた女性が微笑みながら言った。

「リンカ ケーティです。この艦のオペレーターをしています。ウィークレット君、貴方の戦闘のサポートも担当します。未熟者ですが、よろしくお願いします」

「あ、いえいえこちらこそ‥‥」

綺麗な黒髪だな‥‥と、若干見とれていると、着替え終えた女性達がわらわらと前に集まってきた。

「ウィナ ヒテリアです。リンカと同じく、オペレーターを担当しています。」

なるほど、ギャル金髪レッドさんもオペレーターと。何が赤色だとは言わないけども。

「ユーヒ ラチュールです。艦の整備担当です。ハルカ君も、よろしく」

スレンダー日焼けオレンジの人は整備担当なのか。

「‥‥‥アオイ ヘースン。オリオン機の整備担当。オリオンの事なら、任せて」

無表情なロリピンクさんはオリオンの整備さんと。見かけによらないのだな‥‥。

「シイナ フルースです。オリオン03.コード〈緑偽〉のパイロットです。ハルカ君も、同じオリオンのパイロットとして、よろしくねー」

「はい、よろしくお願いします」

おっとりとした巨乳イエローさんは、同じオリオンのパイロットか‥‥。

最低な覚え方だが、簡単に覚えられた。

「今、この船に乗っているのは君達だけか?」

艦長がブリッジを見渡しながら言った。確かに、人が少ない。

「あ、整備班は何人か、機体のメンテナンスで残ってますけど‥‥殆どは街に買い物へ行きました」

リンカさんがふぅ、と溜息をついてそう報告する。

「私達は居残り組です」

シイナさんがそれに続き、困ったような笑みを浮かべた。

「そうか‥‥。新しい艦長が今日、配属されるにも関わらず、街へ買い物‥‥か」

艦長が青筋立てすぎて破裂しないか心配になって来ました。

「と‥‥取り敢えず艦長室へ案内してもらえるか?あと、ウィークレットにも部屋への案内を」

艦長も、ふぅ、とため息をついた。

「分かりました。ウィナ、ハルカ君を案内してあげて」

「りょーかい。ほれ、行くぞ少年〜」

ウィナさんは僕の背中をバシッと強く叩き、僕の前を歩き始めた。僕は慌てて彼女の背中を追った。

「艦長、あの‥‥」

と、後ろの方でリンカさんが艦長に何かを報告していたが、ウィナさんの背中を追うようにしてブリッジから出てしまい、その声は聞こえなくなった。


ブリッジを出て左に曲がり、ウィナさんは通路をずんずんと奥へ進んでいく。やがてホテルの様な、右側にも左側にも部屋のある区画へと到着した。

最も、ホテルみたいに綺麗なドアでは無いのだが‥‥。

「さて、ここがプライベート区画。まあみんなの部屋があるとこね。で、少年。君の使う部屋は4番だよ。これが鍵」

そう言ってウィナさんはシンプルなカードキーを僕に手渡した。

艦の出入り口は手をかざし、生体情報を読み取ってロックが外れるものだったが、どうやら部屋への出入りはアナログな物らしい。

「まあ、一応、オートロックだから。閉じ込めにならない様に気を付けてー?」

僕は、その言葉に若干の違和感を感じた。

「‥‥あの、一応とは?」

僕の問いに、ウィナさんはニヤッと笑った。嫌な予感がした。

「やろうと思えばキー無しでも開けられるんよ」

「それダメでしょ?!」

僕のツッコミをあっはっはっ、と笑い飛ばす。最早それ、鍵の意味無いじゃん。

「ほら、入った入ったー」

僕は艦長の様に軽いため息を吐きながら、カードキーを部屋の扉ドアの差し込み口へも差した。

ガチ、というロックの外れる音がして、僕はドアを引いた。

ここが‥‥これからの僕の部屋。僕はここで、暮らしていくんだーー。

ドアを開けると、中は随分と殺風景だった。広さは12畳程だろうか。入って直ぐ右側にはトイレとバスルームがある。

家具は二段ベッドに古くて小さい冷蔵庫。それと小さなデスク。ぱっと目に入るものはその位しかなかった。

「ん、二段ベッド?」

男は、前艦長が辞めてからは僕一人のはずなのに‥‥?

ウィナさんは、うんうんと頷きながら答えた。

「ああ、基本的には2人部屋だからさ。全部の部屋が二段ベッドになってるんよ。この艦、そんなに大きく無いっしょ?部屋もさ、ベッドを2つ置くと、それだけで一杯一杯だから」

成る程‥‥。まあ確かに、二段ベッドのお陰で随分とスッキリした部屋になっている気がする。

「まあ安心しろよ青少年。この部屋は君の1人部屋だって。夜、若い衝動を爆発させようが自由だぞー?」

「いや、鍵無しでも開けられる時点で不安要素しか無いんですけど」

「だーいじょうぶだって。開け方知ってるのはほんの何人かしかいないから!」

‥‥そういう問題じゃないのだが‥‥。

心の中でまたもため息を吐きそうになっていると、ポケットに入れていた端末がピピッ、と電子音を鳴らした。着信音だ。

「あ、すみません。出てもいいですか?」

「どうぞどうぞー」

ウィナさんはニコニコとしながらそう言い、ベッドに座った。

僕は外に出て端末を出し、応答のボタンを押した。すると画面には、何日ぶりかに見る、友人の姿があった。

『お、ハルー。お疲れ様』

「お疲れ、ユキミツ。どうした?」

『確か今日、配属日だったよな。どうだ?ミゾレは』

「ああ‥‥まだ乗り込んだばかりだから、よく分からないけど‥‥」

そこまで言って、ブリッジへ入った時の映像が頭をよぎる。

「まあ‥‥‥頑張るよ」

『そ、そっか。まあ、ハルならきっと大丈夫さ。俺が保証するよ』

「ユキミツに保証されてもな‥‥」

『あ、ひっでー。っと、悪い、着信入った。またな、ハル。頑張れよ!』

ユキミツはきっと、僕を気遣ってくれたのだろう。ありがたやありがたや。

「ああ、わざわざサンキュ。ユキミツも頑張れよ」

『おう!』

会話は終了し、画面のユキミツは消えた。画面が真っ暗になった端末を、ポケットに入れ、部屋へと戻った。

「終わったかな?」

「はい」

「うんうん。じゃあ荷物置いて、食堂行こっかー」

ウィナさんの言葉を聞き、時間を見るともうお昼時だった。

部屋から出て、またまた少し歩く。食堂まではそこまでの時間はかからなかった。すぐに剥がれかかった「食堂」の文字のある扉の前まで来れた。

扉が開き、またまたウィナさんの背中を追って食堂の中へと入った。

「今日は人がほとんど出払っちゃってるから、そんなにいいもんは無いけど、勘弁してね」

「ああ、いえ、そんな‥‥」

ウィナさんが厨房の中へと入っていき、いくつかある鍋を物色して、そのうち1つを開けた。

「‥‥ねえ、少年?」

「はい?」


「君はさ、なんで戦おうと思ったの?」


僕は唐突なその問いの意味を、直ぐに気づくことは出来なかった。

なんで‥‥‥だって、そんな当たり前のことを、と。

「なんで‥‥って、そんなの」

続く言葉は決まっていた。

しかし。


「〈そう結果が出たから〉って答えは、ナシよん?」


「‥‥‥」

「君の言葉で、聞かせてほしいな」

「‥‥‥すいません」

そういうしかない僕に、ウィナさんはシチューの入った器を僕に差し出しながらばつが悪そうに笑った。

「ごめんごめん。深く考えないで」

「‥‥あの‥‥ウィナさん」

「ほおお、ファーストネーム呼びとは。やるねえ、少年」

ニヤッと笑うウィナさんを正面から見ることができず、目を逸らしてしまう。

「僕は、やっていけるでしょうか‥‥オリオンのパイロットとして、この艦を守る役目を‥‥‥」

「‥‥‥少年‥‥?」

僕の質問に対する返事は、ウィナさんの訝しげな言葉。



『ヴヴヴヴーーーン!ヴヴヴヴーーーン!』



それと、艦全体に鳴り響く、警報音だった。

「これ、緊急警報‥‥?!そんな、なんで地球で‥‥?」

ウィナさんの少し驚くような、うろたえるような言葉に続くように、艦長の声が食堂のスピーカー越しに流れる。

『地球内にディアト発生!各自、持ち場に付け。地球内の艦はミゾレとアラシキだけだ。絶対食い止めろ!それと、ウィークレットは艦長室へ来い』

明らかにおかしい。ディアトが地球内に「発生」‥‥?宇宙生物じゃないのかよ‥‥?

「ウィナさん。艦長室ってどこですか?」

「あ、さっき行った‥‥プライベート区画の突き当たり」

「ありがとうございます」

僕は5分前に歩いた通路をダッシュで駆け戻る。


頭が、真っ白だ。

僕は、何をすればいい?戦うのだろうか。つい最近まで訓練を終えたばかりの僕が‥‥。

地球内にはミゾレとアラシキしかいないのなら‥‥この星の命運は、僕達の手に‥‥?

心が、焼けるようだ‥‥‥。


「失礼します」

「早いな、ウィークレット。いい心がけだ」

艦長室へ入ると、目の前に艦長が立っていた。が、頭は真っ白のままだ。

まるで、自分が自分じゃないみたいだ。

「取り敢えず、お前は待機だ。自室でジッとしておけ。なにかあったら直接連絡する」

体が熱い。いや、実際に熱は無いのだが、体の内側、心が、燃えるようだ。

「すまない。こんな事になるなんてな‥‥‥」

こんな状況なのに、こんな事態になっているのに‥‥‥なんで、こんなに。

「なんて、顔をしてるんだ‥‥ウィークレット」

僕は、高揚しているんだ‥‥。

胸にあるペンダントが、ほんの少し暑くなっているのに気づいたが、そんな事高揚感の前では何の意味もなさなかった。


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