手元に置く口実
「今後のことだが....セラ、やはり楽師にならないか?」
そうレオが言い出したのは王都へ向かう帰り道のことだった。
「それは.....何故ですか?」
「俺が弟を探すにしてもお前が近くにいた方がやりやすい。それにお前を村に置いていたらまた勝手に探しに行きそうだ。」
図星な上にもっともだ。村もそろそろ出た方がいいとは思っていたのだが....
「でもやはり楽師はちょっと...せめて軍はどうですか?」
「ふざけるな。見つかる前にもしものことがあったらどうする。」
「ふざけてはないんですが。そっちの方が向いているかと思ったので。」
「お前は自分で思うほど軍は向いてないから諦めろ。楽師のなにがそんなに嫌なんだ?」
あえなく軍は却下されてしまった。この人の元で死ねるなら悔いもないと思っただけなのに。
「単純に堅苦しい場と何もしない時間が嫌いなのです。勝手な理由ですが。」
「正直なのはいいことだ。だがなあ.....それなら俺の屋敷の侍女として働くか?あまり気は進まないが他に行かれるよりはマシだ。」
「侍女ですか....分かりました。お世話になります。」
もう少しセラが渋ると思っていたのだろうか。レオが驚いた顔をする。
「何だ、楽師はあんなに嫌がったのにそれはいいのか。」
「とにかく何かしていないと考え事をしてしまうのが嫌なだけなので。」
「まあ分からんでもないがな。しかし侍女か.....。どうやって呼ぶんだ.....。仕方ないな....。」
最後の方はよく聞こえなかったが自分から提案した割にはどうも気が進まないようだ。
「平民出身の侍女はやはりいないでしょうか?」
「いや、そこじゃない。俺の問題だ。気にするな。」
困った笑い顔。意外とよく出るこの顔がセラは嫌いではなかった。
「村の者たちに別れだけ言いたいのですが...。」
「ああ、そうだな。報告は適当にしておくからこのまま帰れ。迎えは数日後にやる。」
「ありがとうございます。」
こうしてあっさり決まった新しい就職先だったが、別れを告げることを考えると気は重かった。




